セルカンビ4


附録『イル ノヴェッリエーレ』の要約(101~155)


米山  喜晟




第百一話 パルマの郊外に Boera という村あり、未亡人 Cardonna の16才の息子 Passarino は牛飼いに精を出す。同じ村にやはり未亡人の Narda がいてその娘 Bel1occora は15才。少年と少女は何ヶ月も一緒に牝牛を見張る。ある日母親の Narda は娘に、「 Passarino がお前に乗り( montare a dosso )たいと言っても許してはだめだよ、その代り2~3個チーズをおくれと言いな」と教えた。「乗る」って何のことかと問うと、母親は地面にあお向けに寝て、スカートをめくり、足をひろげて、こうすると相手はこうすると説明した。娘は「よく分った」と言い、次に牛飼に行った時、 Passarino に「私に乗りたかったらチーズを3個おくれ」という歌を何度も歌う。少年歌で「乗るってどういうこと」と問う。少女地面に寝て「こうするの」と仕方を教える。下ばきをはいていない少年はその上に乗ろうとするが、少女に「チーズをおくれ」と言われて、家ヘチーズを取りに戻り、娘に与えてその日は別れる。母親は娘にしたかと問うと、娘はしていないがチーズをもらったという。 Narda「よろしい、いつもそうしなさい」と教える。翌日は雨で、2人は袋をかぷる。少年は乗りたがるが、少女は尻をなめろといい、少年尻をなめる。何度も尻をなめたがやらしてもらえず。翌朝、少女は「尻をなめて、頭を袋に入れて、牛を外へ出してやる」と歌いながら少年を迎えにくる。少年の母  Cadonna 少年がからかわれているので気を悪くし、息子から事情を聞き、息子にバッグを与え、それを餌にして少女に言うことを聞かせ、済ましたあとでバッグをやるなと入れ知恵する。少年言われた通りバッグで騙して思いをとげ、バッグを与えない。翌日少女が「尻をなめて......」と歌うと「Pinca-in-conno(ピンカをコンノに入れて)、頭を袋に入れて、牛を外へ出してやる」と言い返し、2人は森へ行って楽しむ。 Narda は娘から事の次第を聞いて、教えた以上のことを学んだと知り、2人を結婚させる。


第百二話 フィレンツェとピサが戦争していたころ(1362~1364)、ピサに maestro Pace という医師がいたが、貪欲でしばしば食事さえ倹約し、妻や家族にも質素な生活をさせていた。下男も雇わず、市外へ行く時は馬と人をやとい、市内は薬屋の小憎を連れて行く。何千フィオリーノもためたが、けちだという評判が拡まる。レカナーティ出身の兵隊がフィレンツェ市に雇われていたが、 maestro Pace の金を奪おうと計画、彼ら商人に化けてピサに来て宿屋に泊る。1人が病気になったふりをして、宿の主人に医者を頼む。主人が maestro Pace を連れて来るが、「大したことなし」と診断される。支払いが非常に良い。8日たち、彼らは maestro Pace に病人をかごで運んでも良いかと問い、可能だと聞くと、翌日の出発の前に診察に来てくれと頼む。兵隊たちは、翌朝やって来た maestro Pace をマントと毛布でくるみ、かごにしばりつけて連れ去る。医師の家には患者と同行したと伝えさせ、途中まで宿の主人に同行させる。市の城門では病人がいると偽わってかごごとうまく通過する。宿の主人とそこで別れるがその時2フィオリーノ与えて1フィオリーノは maestro Pace に渡してほしいと依頼。ピサをすぎ Castel del Bosco につくと、 maestro Pace を馬に乗せて、 Valdarnoへ連れて行く。夜、医師が戻らぬためさわぎ起こる。やがて身代金の要求あり、6人の仲間のため、6000フィオリーノをフィレンツェに送らせた。 maestro Pace 釈放された後は2人の従者を雇うが、すでに後の祭りだった。


第百三話  messere Grimaldo が Arborea の判事(統治者)だったころ、かって Castri の領主の妻だった madonna Mante という未亡人にあい、 messere Grimaldo はこれに恋して結婚。 messere Grimaldo の馬丁の1人が彼女に恋して階段にひそみ、 messere Grimaldo が自分の寝室を出ると、燭台を持ち夫人のドアを杖で2度ノックして、マントの下は裸で入って行き、彼女と寝ることを観察、その翌晩主人と同じ姿で夫人の部屋を2度ノックして入り込み、黙ったまま素早く交わる。夫人は夫と信じて疑わない。若者素早く去って仲間にまじって眠る。その後から messere Grimaldo が来る。夫人おどろき「今夜はもう6回もしたでしょう」という。夫は妻に恥をかかさぬため黙って立去る。そして「まだ犯人の不安は去っていまい」と考え、若者たちが一緒に寝ている部屋に入り、1人ずつ胸に手をあてる。1人の鼓動はげいので、「これだ」と思い、彼の首にインクで印をつけておく。若者、判事の意図を悟り、皆の首にインクをつける。翌朝 messere Grimaldo が全員を集めると、皆印あり。 messere Grimaldo「うまくやられたわい」と感心して、恥を拡めぬため我慢、また「犯人を捕えると、妻が浮気できることを知るだろう」と考え、「今後はするな」とのみ言う。他の者はことばの意味が判らぬが、犯人は秘密を守った。


第百四話  messere Marco Visconti がドイツ兵を引き連れてルッカを占領した時(1329年)、多くの市民がルッカを去ったが、その1人に messer Biccolo di Boccadivaccaという人あり、ヴェローナの messer Mastin della Sca1a に仕えて、知人の口利きで、 Marciano という城砦のポデスタとなった。ルッカでは賭博が禁じられていたので、ルッカのように dadi (さいころ賭博)を禁じる。人々 a taule に興じる。それも禁じると scacchi a dadi と smiglieri が流行。messer Biccolo は賭け事の楽しみを知らぬので、あくまで禁止。人々ぼやいて messer Biccolo と交渉するが、あくまで禁止だと頑張る。次に mocciore 、 piastrella 、 pallagiochi d' ossa などが流行し、ついには子供のように trottole (ベーごま)に興じるが、 messer Biccolo 次々と禁止。人々「女みたいに機織りをせねばなるまい」とぼやく。ある人、わらのかたまりから2本の指で誰が最も多くのわらを引き抜けるかを競う賭博を発明。 messer Biccolo 手と足を用いる賭博を禁止する。すると1人が道で出会う人について1フィオリーノ賭ける口だけのばくちを発明。messer Biccolo これをも禁止。そこで市民は主君マスティーノに訴えた。 messer Mastin は messer Biccolo を「つまらぬ奴( essere da poco )」と判断して免職にし、他人に迷惑をかけない限り娯楽を許す。messer Biccolo 羨望の余り悲嘆に暮れながら悲しく死んだ。


第百五話  messer Johanni dell' Agnello がピサの領主だったころ(1364~8)、2人のアンコーナ人がトスカーナに来る。名前は様々に名乗る。70才の老人と若者で、先ずフィレンツェで美しい革財布とベルトを買いピストイアに来る。ピサの薬屋 Simone Benedetti の手代 Lemmo というピストイア人の若者、主人の集金のためピストィアに来て、2人組の詐欺師のいる薬屋で金を数えた。2人組の内の老人が、 Lemmo を道中で待ち伏せ、ルッカヘ同行しようと提案、 Serravalle の丘で若い方が現われる。若者財布とベルトの値段で怒っている。老人彼に話しかけ、ルッカの孫のためそれらの品物を買おうと提案。売り値と買い値が合わず。若者売る前に賭博をしようと言い出す。その条件は不公平で、6の目が出たら若者の勝、1、2、3の目が出たら老人の勝。老人財布とベルトを取る。若者さらに金を賭け続け、さらに負ける。老人は Lemmo に2人で組もうという。 Lemmo 20フィオリーノ出して1度目は勝つが、若者がさらに45フィオリーノ賭け、6の目が出て Lemmo ら負ける。結局 Lemmo は80フィオリーノまき上げられる。若者馬で去る。老人は Pieve a Nievole の宿に引っ込む。 Lemmo しばらくして2人はぐるだと気付く。引返す途中、遠くで2人を目撃しある薬屋で槍をかりて2人を追うが逃がす。 Borgo で1泊したあと、 Pescia に向う一行を見て、「助けて」と叫び、強盗に襲われたふりをする。一行の中に偶然 Pescia の代官がおり、狂言と見破られて厳しく取調べを受け、白状して手を切られそうになるが、主人の薬屋のコネで50フィオリーノの罰金を払って釈放された。


第百六話 ヴェネツィアに m. Santina という美しい婦人あり。貴族の生れだが貧しいので父はフィレンツェの織物商人 Ranaldo に嫁がせた。 m. Santina は自分が卑しい男と結婚したことを知り、無理に迫る時しか夫を近づけず。代りに恋人を見つける。 m. Santina は男に自分の好意を知らせるため、男と親しい聖カシアーノ教会の prete Montone を利用。先ず神父にその男に言い寄られて困っているが自分は誰にも口外しないと告白し、男に忠告するように依頼。神父がそう伝えると、男は女の意図を悟り、神父から聞いた女のいる通りへ出かけると、女はじっと彼を見つめる。次に夫人は神父に「あの男は侍女を使ってバッグと帯を贈り物にして来ましたよ。誰にも言いませんから、彼に返して下さい」とバッグと帯をことづけ、ついでになき母のためという理由でお布施をはずむ。男、神父からバッグと帯を受け取り「見覚えがある」という。間もなく女の夫がボローニャヘ商用で旅立つ。 m. Santina、涙を流しつつ神父に向って、男がしのびこんで彼女を犯したとその経路を細かく説明。神父は男を呼び、叱りながらこまごました径路を説明。男その指示通りにしのび込んで女と楽しんだ。


第百七話 ピストイアがコムーネ制だったころ、長老( anziani )という制度があり。何人かのピストイア人はこの地位につくと、思い上って他人の意見に耳をかさない。彼らは高慢で、長老をやめてからも新しい長老にいろいろと指図する。若くて、賢明で、大胆な Cesari delli Ottaviani はこのままでは駄目だと思っていた時、正義の旗手( il gonfaloniere di giustizia )に選ばれ、5月1日の就任演説で「彼らは勝手なことばかりしている。今後一切勝手な真似はさせぬ」と述べる。そこへ彼らが来て一々指図する。 Cesari delli Ottaviani 「あなた方のおっしゃる通りにしましょう」と答える。他の長老ら彼らが去ったあと約束が違うと Cesari delli Ottaviani を非難。 Cesari delli Ottaviani すぐ書記を呼び、先程注文があったのと反対の処置を命じ、また食糧係の役人を追い出す。役人はうるさい連中に訴えに行く。食後に連中来る。 Cesari delli Ottaviani 「君らは自分が長老の時は人の意見を聞かず、自分がそうでない時は人に指図する。我々は長老だから、我々の思い通りにする。用もないのに入って来たら高い窓から投げ出すぞ」と宣言。こういうとうるさい連中は、呼ばれないかぎり来なくなった。こうしてうるさい連中の鼻柱はへし折られた。


第百八話 教皇ウルバヌス五世の宮廷がアヴィニヨンにあったころ(1362~70)、そこにキリスト教世界中の人々が集まって来て、最も繁昌したのは料理屋で、肉パイが最も売れた。それを聞いたフェルモ生れの Troiante という泥棒上りの男、人肉をたびたび煮たり焼いたりして食べたので、料理屋を開き、評判を高めるためと、仕入れが安上りのため、毎日処刑場へ行き、処刑したての死体の股や肉付きの良い所を取り、それで肉パイを作る。香りが良くてうまい。アヴィニヨン中の人々が食べに来る。アヴィニヨンのポデスタは大の美食家で、うまいものが食べたくてその職についた。就任するやいなや最もうまい肉パイ屋はどこかと聞き、Troiante の店を教えられた。ポデスタは Troiante を呼びつけ、「お前の店が最高だと聞いたぞ。だから毎日わしのために料理を作れ」と命じた。Troiante はその夜使いに料理を運ばせ「これは試食用でただですが、今後は払って下さい」と伝えさせる。ポデスタその味に満足し、その後毎日1~2回料理を運ばせて、十分支払うと約束する。ある夜料理が届いて食べようとしだ矢先に、アヴィニヨンにさわぎ生じ、武装して外出、一晩中警備についており、朝騒ぎが終って城に戻る。前夜の肉パイをあたためて持って来させると中に虫が一杯湧いている。不審を抱き Troiante を呼ぷ。 Troiante が青くなったので脅かすと、肉の出所を白状。家来に調べさせると処刑された死体の肉が削られていた。 Troiante は絞首刑となるが、その後ポデスタは美食を求めず、人々もそれに倣った。


第百九話 ルッカが解放された年(1369年)に、市の城壁の門(Porte)を守るための城代( castellano )が派遣されたが、その内の1人に Nicolao Corbi がいたが、牛のような大男で仲間10人と Porta del Borgo に赴任。 Nicolao Corbi の大食ぶりと来たらすざましく、朝食、昼食、おやつ、夕食、夜食、第2の夜食を腹一杯詰め込み、給料では足らず、自分の資金で埋める有様で、部下( sergenti )を食卓に陪食させず、城壁に生えた草まで食べた。ルッカの長老が2人見回りにやって来て、 Nicolao Corbi が食事をしている席に行き合わす。「これが昼食か」とたずねると、「おやつだ」との返事。長老ら直ちに見回りを始める。 Nicolao Corbi の家来たち食卓についた Nicolao Corbi に向い、陰茎を出しで小便を耳にも目にもかける。それでも Nicolao Corbi 「捕虜として食卓へつかせてくれ」といい、食卓について汚れた手のままで、まるで食事をしたことのない者のように貪り食べる。長老ら彼を城代の地位から追うが、親戚の取りなしで厳罰は受けなかった。


第百十話 ペルージアの郊外に Passignano という村があり、そこに Canaro という人の良い老人がいて、25才の Menica と結婚。夫は信心に狂い、毎日聖人の日だという理由で妻をかまわず。その教区の司祭 don Mugino は Canaro と知り合い、妻の不満を見抜く。 don Mugino と老人の妻は相談したが、 Menica の兄弟の Paulo がきびしく見張っているために Menica は外出できず、チャンスがない。 don Mugino は名案を考えてやろうと約束、老人に天の秘密を教えてやるともちかけ、天国へ行くための秘法なるものを教えるが、それは40日間断食して、毎日天井裏の部屋でキリストのように両手を拡げたまま空をあおぎ、300回のパーテルノストリの祈りと300回のアヴェマリアの祈りを唱え、それが済むと服を着たまま床につくというもの。Canaro 老人はこれをやろうと妻に告げると、妻も断食に脇力すると同意した。夫は天窓の下で空を仰ぎ、修業を始めた。妻は don Mugino にこれを報告。夫が天を仰いで祈っている間に、妻は don Mugino と快楽にふける。妻は夫に自分も断食をしているという。翌晩も同じことをするが don Mugino と妻が余り快楽に熱中しすぎて家が振動し、屋根裏の夫は「どうした」とたずねる。妻は、断食したためのたうちまわっているのだと説明する。夫、断食はやめておくれという。30日以上そういう状態がつづくが。Menica  の兄弟の Paulo が、 Menica と don Mugino 神父の関係をさとり、2人を襲い、ナイフで don Mugino の男根を切り、妹の鼻も切る。神父は気を失う。Paulo が神父を家に運ぶが、やがて神父は死ぬ。Menica 夫人の浮気は終る。


第百十一話 ルッカがピサに支配されていたころ(1346~64年)、ルッカ市民の Johanni Tedaldini 、請負業を営む。Corsena の温泉を請負う。90フィオリーノ稼いだので、カバンに入れて馬の尻に乗せてルッカに向う途中、 Borgo a Mozzano 近くへ来た時カバンが落ちる。Cerreto の女が畑で働く夫におやつを届ける途中、カバンを拾い、夫の Landra に渡す。夫はあとで靴を作ろうとそのカバンを取っておく。 Johanni は Borgo についてカバンがないのに気がつく。道を引返してたずねると Landra が、「カバンは知らないが、妻がこの皮を見つけた」という。 Johanni はカバンを見ると、言いがかりを思いつき、100フィオリーノ入れておいたと主張し代官の家来の前でカバンを開く。金は勿論90フィオリーノしかない。Borgo でその報告を受けた代官は、 Johanni に家来をつけてやり、ルッカまで Landra を連行させる。Rivangardo につくと、 Mortaio という男の小馬が泥田に落ちている。Landra が小馬を助けるため尾を引いてやると尾が抜ける。Martaio 怒って Landra を捧で打とうとした。 Johanni は自分とルッカへ同行することをすすめる。Grotte di Aguleia につくと、考えこんでいた Landra は馬にぶつかる。馬があばれて、乗っていた婦人が落馬する。彼女は妊娠6ケ月の身だったために、ショックで流産してまう。夫の messere Bartolo Manlini は腹を立てて剣で Landra を切ろうとする。Johanni は彼をとめ一緒にルッカヘ行き、Landra を裁判にかけようと仲間に入れる。Landra はいよいよ悲観して、 Ponte a Moriano で川に飛びこむと、橋の下で船に乗って魚を取っていた Polverella da Moriano の弟に衝突し Polverella の弟は即死。 Polverella da Moriano 怒って Landra を槍で刺そうとするが、 Johhanni はそれをとめてやはり仲間に入れる。一同ルッカにつき、ピサから来た判事らの裁きを受けるよう、 Landra を告発する。 Landra は申し開きのため「 Johhanni のカバンには全く手を触れていません。 Mortaio の小馬は泥にはまっていましたし、おまけに rogna (疥癬)にかかっておりました。また妊婦は当然もっとおとなしい馬に乗せるべきでした。 Polverella の弟のことは、私も友人で、彼が家から追い出されていた時には私の家に来ていたこともある程の親友ですので、 Polverella さんに劣らず私も悲しんでおります。もし私の生命が無事でしたら、是非ヤコポ教会に巡礼して菩提を弔いたいものです」と述べた。それを聞いて納得したピサの判事の下した判決とは、「100フィオリーノ入っていなかった以上、カバンが Johhanni のものではないから Landra が手に入れるべきだ。馬は尾が生え揃うまで Landra が飼って使えば良い。いやなら Mortaio  は我慢すべきだ。 messere Bartolo Manlini の夫人も、もう一度妊娠して胎児が6ケ月になるまで Landra にあずけておくこと。いやならあきらめよ。 Polverella には弟の復讐のため、橋の下の船の上で魚を取っている Landra をめがけて、橋から飛び降りることを許可しよう」というもので Landra は90フィオリーノ入りのカバンを手にして帰宅。一方 Johhanni はこの時この金を失った打撃から立ち直ることができなかった。


第百十二話 ジェノヴァの郊外ぶどう酒の産地 Corniglia に Bruglioro という裕福なぶどう園主(兼醸造家)がいたが、彼は吝嗇漢としても名高かった。11月のある日、同じ土地の Biordo の所へ、 Beviamo (「飲もうぜ」の意)と Daccibere (「飲ましてくれ、」の意)という奇妙な名前の2人の友人が遊びに来たので、 Biordo は2人をたっぷりもてなした。ある祭日、3人は Bruglioro の所へ行き、「栗を土産に持って来た。今夜は楽しくやろうぜ」とあいさつし、 Biordo は Bruglioro に「誰か使いをやって、わしの家へぶどう酒を取りに行かせてくれ」という。 Bruglioro は見栄を張って「うちだって酒位はある」と上等の酒を出す。すると Biordo 「君の評判が一ぺんに良くなるから、よそ者に気前良くしてやってくれ」と忠告、 Bruglioro も汚名挽回のチャンスと張り切る。やがて気持良くなった Daccibere が友に「Beviamo(名前「飲もうぜ」とも取れる)、 andianci (「さあ行こう」の意味だが、「もっとやろう」とも取れる)」といったので、 Bruglioro はあわてて Daccibere に酒をすすめる。今度は Beviamo の方が、友人に「 Daccibere (名前だが、「飲ましてくれ」とも取れる)、 or ci andiamo (「さあ出発しょう」とも「さあ、どんどんやるのだ」とも取れる)」といい出し、また Bruglioro はあわてて追加。両者は代りばんこに同じことを100遍以上繰り返す。結局その夜皆は泊ってしまい、上等のぶどう酒は4分の1樽も飲まれてしまう。Biordo「何遍も、さあ行こう、と言ったんだけどなあ」と弁解すると、 Bruglioro 「飲ましてくれ」と「飲もうぜ」を連発したではないかと怒る。そこで Biordo は、それが2人の名前だと打明けた。 Bruglioro は「もしうちでそんな名前をつけるのなら、 Se vuoi bere、 avessine regato! (飲みたかったら持って来てくれ)という名にするのだがなあ」という。翌朝3人にたっぷり飲ませて、「二度と来てくれるな」といって送り出す。こうして Bruglioro は多くの損失にもかかわらず、汚名を挽回できなかった。


第百十三話 ピストイアに Sardo という銀行家がいたが、他人を馬鹿にしている。ある年の1~2月の長老( anziano )に選ばれて役所入りしたが、自分を Arach (傲慢なペルシア王)のように見なして、同僚を怒らす。食事の時刻にいつもトイレに1時間以上いて、同僚を待たす。同僚の1人 Salamone は彼を罰するため鳥もちをトイレの便坐につけておき、トイレから立てなくする。下男を呼んで湯をぶっかけさせるとますますくっつく。服を上げているので寒い。結局はさみで切るが、4時間以上かかる。その間に同僚たちはのんびりと食事。一同、彼の様子を見て笑い、散々冷やかした挙句、そのままでは逆に人から馬鹿にされると忠告し、 Sardo も心を入れ替えた。


第百十四話 ピサ郊外の Calci に4人の殺人者がいたが、追放されてルッカ郊外の Pescia に逃れた。彼らの1人 Gallisone を敵とする者ら、彼が時々 Borgo へ行くのを知り、その1人が彼を持ちぶせる。 Gallisone の仲間、 Gallisone に Borgo へ行く時は同行しようというが、  Gallisone かまわず先に行って、待ち伏せしていた男に殺された。残った3人は行動を共にしようと約束。その1人 Morovello を敵とする者、 Pescia に侵入して3人の行動が見える場所で粘り、 Morovello が1人で用便に出かけた時彼を殺す。さらに4人組の1人 Biancaccio に父を殺された者も Pescia に潜入、2人の姿を見て「裏切り者め、殺してくれるぞ」と叫んで逃げ、先に追って来た Biancaccio を振り向きざま刺し殺し、それを見て逃げようとするもう1人も殺す。


第百十五話 その1)ルッカが m. Piero Rossi に支配されていたころ、Vitaliという指物師の親方は妻子があり、家具、箱などを作るが、夜働いている時、火がかんなくずの上に落ちると、「どうなるか」と見ている内に火が拡がり、妻子は助けたものの、本人はその時のやけどで死んだ。

 その2) Bartolo はルッカで会社を作るが、夜中にねずみがろうそくをくわえて書類の上を走ったため、火事にはならなかったが、帳簿が半分以上焼け、仲間たちに財産を取り上げられて生活に困る。

 その3) Johanni dell' Agnello が Lunigiana の Sarzana を領有していたころ、 ser Sardo da Vico が行政官として派遣されたが、その許に Vecciale の人々が来て、猪狩で不和が生じたので調停してほしいと依頼。 ser Sardo 自分の仕事ではないとことわる。流血沙汰となり、また人々陳情するが、取り合わず、公証人や家来の忠告でも動かず、そのため大乱闘が生じ2人の死者と多数の怪我人出る。そこで ser Sardo ははり切って出動するが、公証人らはもう動かず、両派の人々「 ser Sardo が来た。彼は我々の財産を取るつもりだ」と疑い、団結して ser Sardo を捕え八つ裂きにした。そしてピサに使いを送り説明、領主も了解して許した。

 その4) Niccolo da Piuole の領地で、傭兵 Fallera と Tomaza が結婚。若い聖職者 prete Martino 、 Tomaza にほれる。 prete Martino 夫に対して「お前の女房が気に入った」と言い、次々に物を贈り、女と関係する。その関係はエスカレートして、夫が留守の間に2人は Parma に駆落ちする。親族2人を追う。 prete Martino だけは逃走し、夫は妻を実家へ戻しに行くが、その領内で妻を殺す。

 (以上が怠慢が大きな災をもたらした4つの実例である。)


第百十六話 (結末以外は第百十話と酷似)。ボローニャの郊外に La Valle という村があり、 Papino という金持の小男がいたが、その妻 Elcopatrassa は美人だった。夫は信心家で教会参りを欠かさない。妻は24才で若く、夫を誘う毎に説教を聞かされる。前任の修道院長が死に、新任の院長来る。 don Muggino といい、若くて元気である。don Muggino は Elcopatrassa をものにしようと決心、 Elcopatrassa もその気になる。don Muggino は Papino に Ia gloria di Paradiso (天国の栄光)を得る方法を教えようという。ただし誰にもいうなと口止めする。40日間断食して、自分の妻にもふれてはならず、毎夜十字に手を拡げて天を仰ぎつつ眠れ、そして200回のパーテルノストリとアヴェマリアをとなえとの規制を課す。夫がその修業につとめている間に、don Muggino は Elcopatrassa と楽しむ。夫、屋根裏で家が震えるのを感じ何故かと聞く。妻「断食したのでもだえている」という。夫「やめろといっただろう」という。妻は断食の終った後も、手を見つけて don Muggino と楽しんだ。


第百十七話 Bergolini 派が処罰され、 Raspanti 派がピサとルッカを領有したころ(1364)、ルッカの郊外の Camaiore という村に Gualfreduccio di Maletaccole という者がいたが、多数の人を殺した罪で追放された。彼の殺した相手の1人に Ciuglio という者がいたが、彼は友人の調停でその弟の Sessanta と和解し、たまたま Sessanta も追放されたので、2人は傭兵などに揃って加わり、行動を共にし、その仲は兄弟以上と噂された。ところが、たまたま故郷の近くの Camaiore の代官領を放浪中、 Gualfreduccio が通りかかった巡礼女を襲い、下ばきをおろした時、 Carnicella と呼ばれる若い馬丁が「敵が来たら物騒だな( Chi ha〈a〉fare non stia.)」と眩く。それを聞いた Sessanta は突如大鎌で Gualfreduccio を切りつけ、 Gualfreduccio は起き上ろうとするが下ばきが下っていて簡単に討ち取られた。


第百十八話 ナポリでマンフレーディが王だったころ、その家来に騎士 messer Astulfo という者がいたが、美しい妻 madonna Lagrinta は楯持ちの Nieri に恋をした。 messer Astulfo はある日宮廷から不意に帰宅して、妻と Nieri がベッドで楽しんでいる所を目撃、 Nieri はすぐ逃走したが、夫は妻を罰するために家出して宮廷へ行く。しかし憂欝に何ヶ月かをすごす。ある日王の寝室のある柱廊で、1人の乞食が王妃 donna Fiammetta の部屋を杖で叩くのを見る。それは尻の下に物をあててひきずって歩く男だが、王妃が戸を開けると、遅いと王妃の胸を叩く。王妃この男を丁重にもてなして楽しむ。messer Astulfo これを見て気が晴れ陽気になる。マンフレーディ王この変化を不思議がりわけを聞く。messer Astulfo 仲々答えぬが、王から無理に間いつめられて、決して罰せぬと約束させ王妃の秘密をもらす。王は信じないが、 messer Astulfo が現場を見せる。王は世をはかなみ、 messer Astulfo を連れて放浪に出、トスカーナに向う。サンミニアートから、乞食を大事にすると聞いたルッカに向う途中、木の下で休んでいると、反対方向から大きな箱をかついだ男が現われる。2人物かげに隠れていると、男は休み、皮袋から鍵を出して箱を開けると、20才ほどの女が出て来る。女は食事を取り、男は女を膝枕にして眠る。王と messer Astulfo が現われて女に近づくと、女は酒びんを夫の枕の下に置き、2人相手に2度ずつ交わり満足して神を称えた。女は身の上を語り、自分は Savia di Siena 、夫の名はシエナ人 Amolfo だといい、夫は嫉妬深いためこうして自分をかついで商用の旅にも連れていく、シエナでは鉄格子付きの地下室にとじこめられているが、地下道を通って外出して毎日1~2人は間男を楽しんでいるのだという。女は2人ともう1度ずつ楽しみ、王は彼女に指輪を与える。その後彼女は夫を起こして、膝が重かったという。王は女たちを正しく罰するべきだし、そんなことではくよくよすべきでないという結論に達して帰国した。


第百十九話 ピサが共和制だったころ、長老( anziano )もしくはプリオーレに靴屋の Vannuccio da alci が選ばれたが、彼は非常に腕が良く、金も財産もある男で。長老になると庁舎に部屋を与えられた。その世話をする下僕に Frasca da Ripadarno があたるが、 Vannuccio は Frasca に様々の用事を命じ、毎晩布で足をこすらせ、 Frasca が命じられた用事をさぼると、「お前は覚えが悪い」と叱ってこき使った。 Frasca は腹の底で復讐を誓う。 Vannuccio が店に戻り、エプロンをつけて仕事につくと、 Frasca が来て靴を一足くれという Frasca は何度も文句をつけた挙句、一足だけ買って市庁舎に戻り、「20回以上も靴を脱いだりはいたりする手伝いをさせてやった」と同僚に自慢した。下僕たちは笑うが、 Frasca の敵たちが Vannuccio に密告 Vannuccio は酒手を与えて彼らをねぎらい、すぐマントを着て市庁舎に赴き、新しい長老と話し合いたいといい、 Frasca のことを訴えた。長老ら Frasca を捕えて拷問にかけ、25回以上もたっぷりといじめ、ピサ市外に追放した。


第百二十話 ルッカの美しい貴夫人 madonna Colomba da Busdraghi は他の若い男女と Massa Pisana の別荘へ行き、ある日 Vorno へ散歩。 Matteo Boccadivacca という若者が面白い話をして途中を楽にしようと申し出。夫人は喜ぶが、青年が話下手で、3~4度最初から話をくり返す。夫人いらいらし、青年が先に進めないので「あなたの馬は、だく足は苦しそうだから私を降ろして下さいね」という。 Matteo その意味を悟り、話を打ち切った。


第百二十一話 エルサレムに Taddeo という金持のキリスト教徒がいたが、 Paulo という子供を持っていた。 Paulo が生れた時、洗礼のために連れて行くと、この子は18才で急死するが、もし死なずにすめば大物になるだろうという予言を受ける(だれからか不明)。 Taddeo は息子が17才の時病気になり、息子を見て泣く。息子不思議がるので、父は予言を語り、常に信仰を守れと言いのこして死ぬ。息子は母の madonna Crestina に「運だめしに行きたい」といって馬と金を用意してもらい旅立ち、1人でバビロニアに向う。18才の最後のころ森の中を通ると、誰かが火をつけており、竜が飛び出して来る。竜が馬の後部にとびのり、 Paulo の頭の上に首をのせた。 Paulo はもう死ぬものと諦めて火の中を抜け出す。その時天から矢が飛んで来たが、竜が口を開いてこれを受け止めた。 Paulo は火と竜と矢の3つの恐怖のため気を失う。正気を取り戻すと竜がいて、「もう死ぬ心配はない。火から救ってくれたお礼に矢を受けてやったのだ」といい、互いに口の中へ舌を入れ合って Paulo に動物のことばが分るようにしてやる。 Paulo はバビロニアを経て、すぐキリスト教世界に向う。ダマスクスからベイルートの港に着き、船出して Scio (= Egeo )島まで来た時、キプロス王 Carlo の娘 Izotta 姫の腹中に蛙が住みついて困っているという噂を聞き、王の許へ行く。すでに多くの人々が助ける試みに失敗して殺され、蛙は大量の水を飲んで姫の身体はふくれ上っている。 Paulo は王女を市外に連れ出す。腹中の蛙と水中の蛙が問答し、腹中の蛙は蛇も来ないしごちそうが食えると自慢する。水中の蛙が、腹から蛙を追い出す方法を語る(その部分が欠落)。 Paulo その方法を用いて蛙を腹中から追放し、王女の婿となり、母親を招いて伯爵夫人にしてもらい、王の死後はキプロス王となる。


第百二十二話 ルッカの聖アウグスティヌス派の修道士 fra' Tomazino da Controne は大学者だが党派心強く、熱心なギベリーニ派でグェルフィ派のものは1人も天国へ行けぬと公言。すでに70才を越えていたが、ある日 Controne の親族に会うため Giorgio da Ghivizano を伴って出発。一文なしの旅で、 Decimo について飲み物をもらうが、食事は土曜日なので取らず、 Borgo a Mozano でも同じ。非常にゆっくり歩き、 Chifenti 橋でサラダ用の野草を摘んだりしていて遅れ、途中で日が暮れてグェルフィ派の Baschiera の家へ泊まりに行く。 Baschiera の妻 Ciaia は fra' Tomazino を見ておどろく。 fra' Tomazino 桶と酢を借りて野草を洗う。 Baschiera も fra' Tomazino を見ておどろく。 fra' Tomazino は Baschiera に対して自分は贖罪を行っていて、毎土曜日に25個の石を食べるので、きれいな川の石を取って来てくれと頼み、 Baschiera の妻にはチーズでラザーニャを作らせる。自分は卵を20以上借りてチーズとまぜて鍋の中で掻きまわす。 Baschiera が小石を持って来ると卵の中に石を入れる。それでソフリット(いため料理)が用意できる。 fra' Tomazino 食卓を祝福、サラダ、ラザーニャを食べ、さっきのソフリットを持って来て、石を横へ出し「先ず良い下地を作る」といってソフリットを食べ、さらに Baschiera と Ciaia の夫婦に説教し、修道士の言うことは信用するなと教え、それから Baschiera に、自分の代わりにこの石を食ってくれと頼む。 Baschiera ことわる。女房の Ciaia にも頼む。Ciaia も断わる。では明朝まで取っておいてくれ、といって寝る。翌朝 fra' Tomazino は飲物をもらう。 Baschiera が石のことをいうと、「君は私が君にその石を与えるよう、私に忠告してくれ」という。 Baschiera は「そんなものいらない」という。 fra' Tomazino 「わしに忠告してくれる気がないのなら、わしも忠告などいらぬわい」といって、石をつかみ投げすてて、再び出発する。石を食べると信じてまんまとだまされてごちそうを提供した Baschiera は、面目をつぶしてそのことを人に語らず。


第百二十三話 ブルゴーニユのある地方に2人の伯爵あり( Danese da Dierta 伯と Bioccolo da Lanson 伯)、城はとなりで、親戚でもあったが、仲悪く争い合う。 Danese da Dierta 伯の方が Bioccolo da Lanson 伯より領地は小さく兵力も少なかったが、意気盛んで強かったために形勢逆転し、 Bioccolo da Lanson 伯の砦と土地を大部分取り上げた。そこで Bioccolo da Lanson 伯は神ではなく悪魔に祈り、魂と肉体を捧げると誓う。悪魔登場し、「明日のこの時間まで考えておけ」という。Bioccolo da Lanson 伯、翌日の同じ時間に悪魔に会い、肉体も魂も捧げると約束して書類を作成し、印章を押す。悪魔直ちに大金を用意し、 Bioccolo da Lanson 伯はその金で兵を集めて Danese da Dierta を打ちやぶり、城と土地を奪う。遂に Danese da Dierta は死ぬ。 Bioccolo da Lanson 伯は喜び、家来を集めて宴会を開くが、その最中に悪魔が飛脚の姿をしてやってくる。門番は通さず、飛脚は入口で待つ。家来が主人に飛脚の到来を告げると、主人「楽しんでいる間待ってもらえ」という。飛脚「重大すぎる用事だ」という。主人が「会いたくないと伝えろ」と命じると、飛脚「それではこちらから行こう」と上って来る。伯は悪魔との約束を思い出して家来に話す。家来一同「神に祈れ」とすすめる。だが悪魔が現われて書類を示し、彼をつかんで空中を飛び、地獄へ連れて行ったという。この事件を目撃した家来たちのある者は隠者となり、他の者は快楽にふけったと伝えられる。


第百二十四話 ヴェネツィアに messer Marcovaldo da Ca' Dandolo という紳士がいたが、その妻 Anna は Ca' Baldu 家出身で歌と踊りの名手であり、あらゆる集りに出席し、その周囲に若い男たちが群がった。夫と同じ Ca' Dandolo 家の出身で、夫とほぼ同年令の messer Lancilotto がとくにしばしば Anna とつき合い、関係を持つ。 messer Lancilotto はやがてヴェネツィアのドージェに選ばれる。 messer Lancilotto は議員に messer Marcovaldo を抜擢。 messer Marcovaldo は妻の不義に気付かぬふりをして messer Lancilotto と大いに仲良くし messer Lancilotto も彼を信用して大いに名誉や富を与えた。しかし一方 messer Marcovaldo の耳には、市民の messer Lancilotto に対する不満が入ってくる。 messer Marcovaldo は messer Lancilotto を倒せばドージェになれると考え、7月の暑い日、耳に入れたいことがあるといってただ一人で messer Lancilotto に近づき、ナイフで胸を一刺ししてこれを殺した。「おれは messer Lancilotto を殺した。ヴェネツィア第一のものとなるのだ」と叫ぶ、と、 messer Lancilotto の友人たちがすぐ彼を殺す。彼らは messer Lancilotto 殺しの原因が夫人の怨みであることを知っていた。 messer Lancilotto は信用すべきではない人を信用しすぎたためにこんな目に遭った。


第百二十五話 ヴェローナの郊外に Orsagliora という村があり、そこの修道院長 abate Marsilio は名声が高く、誰でも信用している。 Gallisone という馬鹿者がこの院長と親しくなるが、 Gallisone には Camilla という美しい妻がいた。 Gallisone は妻をきびしく監視する。2人は修道院をたずねるが、Camilla は abate Marsilio のところへ来て、夫がひどいやきもち焼きだと訴える。 abate Marsilio それを聞いて、名案があるといい、 Camilla は夫のやきもちを治してもらえば精一杯お礼をすると約束する。 abate Marsilio は何日か後に Gallisone を呼びにやらせ、聖人になる方法を伝授してやろうといって眠り薬を飲ませる。 Gallisone の親戚とその妻 Camilla を呼ぶと-彼らは Gallisone が死んだものと信じる。Camilla は abate Marsilio の勧告通り、埋葬を彼にまかせて帰宅する。 abate Marsilio は腹心のパドヴァ出身の修道士と共に墓を堀り、 Gallisone に修道士の服を着せて、わらの上に寝かしておく。それから腹心の修道士になすべきことを指示した後、自分は Gallisone の服を着て彼の家を訪れ、女房の Camilla をくどいて毎晩彼女と寝る。他方 Gallisone が意識を回復すると、パドヴァの修道士は彼に煉獄へ来ているものと信じこませて食事を与え、嫉妬の罪で Gallisone を鞭で打つ。やがて Camilla は修道院長の種子を宿したために、夫の Gallisone が帰ってくる必要が生じる。そこで修道士は Gallisone に薬を飲ませ、眠っている内に元の服を着せて家へ連れ戻す。 Gallisone は気がつくと家に戻っていたので、全てを大いに語る。そして今後は決してやきもちをやかないと誓う。 abate Marsilio の名声は益々高まるが、同時に Camilla と毎夜楽しんだ。


第百二十六話 ヴェネツィアに Briscida de' Magnanimi という婦人がいたが、美人で男好きで、Ca' Cornero 家の Scipione の妻だった。夫はガレー船でベイルートヘ向う時、あらゆる物を準備した上、さらに50ドゥカート残してくれた。 Briscida は早速、 Bazino という若者を相手にヴェネツィア流に楽しむ。(男女の問答略) 逢う瀬を楽しむ内に、9ケ月すると子供ができる。色が白いので Albano と名付けた。夫 Scipione は旅の途中でサラセン人に捕えられ、14年間その地に止められるが、やっと解放されて帰国。彼は Albano を見て「誰の子か」と問うと、その子は「ブリシダの子だ」と答えた。そこで夫は妻にどうしてその子を得たかとたずねると、妻は雪を沢山食べたら子供ができたという。夫、ダマスクスヘ行くのに Albano を連れて行くという。 Briscida は一所懸命とめたが、夫はきかず。夫は Pagania につくと、 Albano を回教徒に売る。高く売れる。夫の留守に Briscida 夫人はまた Bazinoと楽しむ。夫戻るが Albano を連れていない。妻が「 Albano は」と聞くと夫は「溶けた」と答えた。「雪の子だからバビロニアの熱で溶けても悲しむことはあるまい。我々がまた楽しんだら代りができるだろう」という。妻は事情をさとり「私もなくしたものを取り戻すためにできるだけ努力しましよう」と答えた。


第百二十七話 第百四十五話とほぽ同じ) messer Mafeo Orso がドージェだったころ、ある12月に、ボヘミアの貴族で皇帝の maliscalco を勤める messer Bosco de Viliartiz がヴェネッィァに来た。彼は美男子で好色、ドージェの若く美しい姪の Perinetta が気に入り、彼女が何者かを知らずに使いを出すが、 Perinetta はことわる。その理由として、「夫 Taddeo が大変けちだから私もけちだ」という。これを聞いた仲介の女、 Perinetta の夫の所へ行き、500ドゥカートで了解してくれないかと持ちかける。夫は了解する。妻の所へ行くと、 Perinetta も承諾する。使いは messer Bosco にこのことを報告する。 messer Bosco 内心で高すぎると考え、銀貨に金めっきして渡し、 Perinetta と楽しむ。妻は夫に金をわたし、はじめてにせの金貨と判明。聖 Maria Formosa の日にドージェは、姪を欺した messer Bosco を祭礼に招く。 messer Bosco は大勢の婦人と船に乗る。その女たちの中に Parella という婦人がいた。その若い夫 Ulivieri のすぐ前をいく。ドージェは彼女の肩に手をかけ、女がふりむくと、「この messer Bosco さんに勝ち目があると思うかね」と問う。婦人は、「とても駄目でしょうね。でも私なら本物の金貨がほしいわね」といって、 messer Bosco と、なれなれしく話しかけたドージェ(その姪が恥をかいた)の2人をからかったという。


第百二十八話 悪政のため大勢のルッカ市民がヴェネツィアに逃れたころ、その1人に Bartolo di maestro Alessandro da Coreglia という金持がいたが、人の言いなりになりやすい間抜け男。この男 monna Bonuccia という卑しい女にほれる。 monna Bonuccia 男の意を悟り、仲介女に頼み、その女の姪だということで縁談を進めさせる。Bartolo は相手が monna Bonuccia と聞いて喜ぶ。仲介女は「彼女は両親をなくして喪に服している所で、祝宴は開けないが、私は彼女のおばで親代りの者だ。San Bazilio が夢枕に立ち、彼女と Bartolo を結婚させるよう命じた」とでたらめを並べる。Bartolo 有頂天になり、公証人を雇い、一同集まる。張本人の Bonuccia は「これは何の集まりですの」などととぼけて、まんまと結婚してしまう。ルッカの友人ら事情を知り、「君は娼婦と結婚したそうだな」と忠告、 Bartolo は「おれの女房は善良な堅気の娘だ」とがんばる。しかし妻にはこっそりとたずねてみる。すると Bonuccia は、「ヴエネツィアに12才以上の処女がいると思っているの。私は18才こしているのよ」ど丸めこむ。やがて Bartolo が用事でルッカに戻ることになり、妻が浮気せぬよう下腹に羊の絵を描いておく。浮気をすると汗をかくので浮気ができない。やがてある絵描ぎが、後で描いてやるからといって誘う。夫がフェルラーラまで戻り、2日後に帰国するという日、その絵描きに描いてもらうが、夫がそれを見て、「角があるから、おれの描いた絵と違う。お前は誤ちを犯した」とさわぐ。女「角は生えたのよ」と答えて夫を丸めこむ。


第百二十九話 ヴェネツィアに Marco da Castello という若者がいたが、多くの女たちと関係する。結婚すると、自分の経験に基づいて非常なやきもちやきとなる。結婚する前から貞操帯( una seratura di ferro e chiusa a chiave = 鍵で締まる鉄の錠前)を作らせて用意しておき、 Rovensa という花嫁に、結婚早々これを着用させた。妻が「どんな罪でこんなものをつけなくてはならないの」と問うと「罪のせいではなく、嫉妬のせいだ」と説明。夫と寝る時以外は外させないため、Rovensa は病気になる。召使これを見ておどろく。 Rovensa は死ぬ間際に夫を呼んでいう、「あんたの嫉妬のおかげで私は病気で死ぬけれど、私の死後他の女があんたを苦しめるでしょう」。埋葬の時、彼女の親族は貞操帯を見、また召使も事情を語ったので、噂はヴェネツィア中に拡まる。 Marco は仲人話で再婚、相手は Fiandina というしたたか女。女たちが Rovensa の不幸を告げると、 Fiandina は「馬鹿を罰せられない女はアホよ」と答える。結婚式の後朝まで楽しんだ時、 Marco がそれをつけようとすると、「今日はダンスをしたいから明日」といい、夫は用心して妻を外へ出さず。妻は家中を調べ、運河に出入りできる未完成の回廊を発見し、若いパドヴァ人の仕立屋 Votabotte に使いを出して運河の下へ船で迎えに来いと指定する。翌朝 Fiandina は回廊へ行く。夫は金具を持ってその跡を追う。 Fiandina は夫を運河に突き落す。夫は溺れ死ぬ。 Fiandina は夫の財産をありったけかき集め、船でヴェネッィアから逃走する。親戚の人々、マルコが貞操帯を手に持ったまま溺れているのを発見。 Fiandina は恋人と市外に逃れて幸福に暮した。


第百三十話 キリスト誕生以前のバビロニアに、 Iozafach という者あり、その娘は Tisbe という。となりに Zaidag という者あり、 Piramo という息子がいた。幼いころから2人は仲が良く、7才で同じ学校に通い、12才まで通学。ある人が Tisbe の両親に2人は仲が良すぎると忠告。Piramo の親にも同様の忠告あり、2人はとじこめられた。壁のすき間から日光が入り、2人は隣り合った部屋にいることに気付き、逃走を計画、 Campi di Soria で会おうと約束。2人は見張りを殺して出かける。 Tisbe 月の下でライオンを見、逃げる時マントが茨にひっかかる。ライオンがマントを見つけ、それを八つ裂きにする。その後剣を持って Piramo が現われる。 Tisbe が待っている筈の白い桑の所で、ライオンが Tisbe のマントをくわえているのを見て、 Tisbe が死んだと信じて自殺。ライオンが去ったので Tisbe がそこへ来ると、 Piramo が死にかけていた。 Piramo は Tisbe に自殺したわけを話す。 Tisbe も Piramo の剣を取って自殺。2人の両親は彼らの遺体を発見し、桑が血に染まっているのを見て、桑も彼らの死を憐れに思っていることを悟り、2人いっしょに埋葬した。


第百三十一話 Aluiz 王治下のパリ(ルイ王という意味らしいが、1387年ごろの出来事らしいので、むしろシャルル六世の治世らしい)で、 messer Alberigo という騎士あり、パリから80マイルの所に領地を持つ城主だったが、王命でサラセンと戦いに出発。美人の妻 monna Marsia の相談相手を、友人 Jach lo Brich に頼んで行く。Jach は美しい夫人に欲望を抱き、家来と共に夜中に王の宮廷を出発、 messer Alberigo の城を深夜訪問し、夫人の寝室に入り monna Marsia を誘惑しようとする。夫人「友情はどうしたのか」 Jach「私の美貌を見よ、私はフランスのどんな女をも楽しませた」夫人「そんなことする位なら死にたい」という押し問答の末、 Jach は家来に手伝わせて思いをとげた。 Jach と家来たちは直ちに馬で城を去りパリの宮廷にもどる。 monna Marsia 人前で喪服を着て夫の帰りを待つ。 messer Alberigo 勝利を得るが、病気になりようやく死を免れて帰国、しかし4日熱は残る。先ずパリヘ行き王や Jach に会い、勝利を報告する。 Jach は何くわぬ顔で会話を交す。 messer Alberigo 領地に戻り、喪服の妻を見る。夫人は夫に Jach のしたことを話し、復讐が済むまで自分に近づくなという。 messer Alberigo 信じられず、しかしパリに戻り Jach に会うと、 Jach は否定。王や宮廷人らも Jach が翌朝王の宮廷に出頭したという。 messer Alberigo 妻にそういうが、妻は信じられねば死にたいという。夫再び Jach に問うが、 Jach は否定。夫やむなく帰宅。妻は「2人で決闘して黒白をつけてほしい」と要求。 messer Alberigo は夫人を連れてパリの宮廷へ行く。妻は王妃に会う。王妃は夫を危険にあわせるなととめる。妻「私は密通したのではない。私は誰も戦ってくれなければ自分で戦う」と言い張る。王妃、その由を王に伝える。王は余り乗気ではなかったが結局決闘を承諾。 monna Marsia は「もし夫が決闘に敗れたら、自分は娼婦として焼いてもらう」と断言。いよいよ決闘となるが当初 messer Alberigo 旗色悪い。王妃ら「だから止めたのに」という。そのことばの終らぬ内に messer Alberigo は Jach を振り落とし、倒れた敵の上によじ昇るが、その時熱に襲われ意識を失う。だが半時間後には意識を取り戻し(その間相手も気を失っていたらしい)、敵の短剣でやわらかい所を刺し、さらにかぶとを脱がせて首をはねた。こうして夫婦は名誉を回復し、王は Jach の遺体を絞首刑とした。


第百三十二話 messer Mastino が治めていたころ(1329~1351)のヴェローナに Namo という、貴族がいたが、彼には40才程度の妻 monna Gostanza と2人の子供、息子 Lantilotto 13才と娘 Uliva 15才とがいた。Namo は裕福なので、20才余りの下男 Malvagio と24才の下女 Jacomina を雇っていた。2人は情を交して夢中になる。下女は主人に「旦那様、 Malvagio のためにお肉を少し残してやって下さい」といつも頼む。主婦の monna Gostanza この願いを聞いて、下女に何故そんなに Malvagio に尽すのかと問うと、下女「満足させてくれますから」と返答した。これを聞いて monna Gostanza は下女を使いに出した留守に下男と試みると満足する。そこで下女と共に、「 Malvagio のためにお肉を残してやって下さい」と頼み始めた。娘の Uliva が、その内に母と下男の情事を目撃。父に言いつけると脅かす。 Malvagio は、口止めのため Uliva と関係。その現場を弟の Lantilotto が見る。 Lantilotto 、父母に言いつけると脅したので、 Malvagio は男の子 Lantilotto とも関係を結ぶ。 Namo は全員が「マルヴァジオのためにお肉を残して」と言い始めたことに不審を抱き、調べると4人共関係あり。そこで「わしも満足させてもらわねば」と Malvagio を呼ぷ。 Malvagio は全てを語る。 Namo は悲しみ、「給金を払うから出て行ってくれ」と頼む。 Malvagio は無事に済んで、その家を出られる機会が来たことに満足して出て行く。 Namo は親戚の人に頼み、ヴェローナの城壁の外でその下男を殺してもらう。続いて妻も人に頼んで殺してもらう。さらに子供たちと女中をもこれ以上できないほど罰した。こうして Namo は自分の体面を保った。


第百三十三話 シャルルマーニュがイタリアヘ来たころ(その治世の最晩年)、ルッカに2人の商人 Giabbino と Cionello あり、2人は金持で、共同で会社を持ち、絹織物の取引に投資したり従事していた。 Cionello の意向で Giabbino がスペインヘ絹を買いに行く。そのガレー船がモーロ人に襲われ、商品を奪われ、本人も奴隷として連れ去られた。一方 Cionello は大いにもうける。いつも Giabbino のことを考えて、服その他何でも2つずつ用意、利益は二等分し、家も同じものを2軒建て、調度品も等しくした。30年以上 Giabbino の消息なし。ある日キリスト教徒の船が Giabbino のいる所に到着、 Giabbino は乗せて行ってくれと頼み、異教世界から逃亡、船は Ragona (アラゴン)につき、 Giabbino は上陸、その後帰国の途中病気にかかり、ジェノヴァの病院に入院して回復、小船でピサに着き、乞食となってルッカに入る。ある日 loggia delli Scalocchiati (= loggia di S. Michele )に Giabbino が現われたが、たまたまそこには Cionello も来ていた。 Giabbino は人々に「 Cionello は生きていますか」とたずねた。 Cionello は自分の名前が出たので「もし生きていたら」と問い返す。 Giabbino 「自分は彼に迷惑をかけたので、月に1度位彼のために食物を供したい」という。 Cionello が「どこの出身か」と間うと、「ルッカの者で、不幸のため40年以上外地にいた」と答える。 Cionello は Giabbino を自宅に招き事情を聞く。 Giabbino は500リラ持って商用の旅に出たこと等々を語る。「君は Cionello が分るか」「分らないが、彼の字( lettora )なら分る」という問答の後、 Cionello は Giabbino に昔の帖簿を見せると、「これは私の字で、こっちのが Cionello の字だ」と指摘する。 Cionello は相手が Giabbino だと確信して「私が Cionello だ」と打明け、今まで用意していた2人分の半分を持って来させた。 Giabbino は Cionello が用意してくれた家で死ぬまで楽しく、 Cionello とは兄弟同様に暮し、死後の遺産を Cionello の子らに返した。


第百三十四話 ピサの管轄下に、2人の城主がいた。両者は歩いて3日の距離に住み、強い血縁で結ばれていた。1人は conte Guamieri もう1人は cattano MarsiIio という。2人はしばしば往来したが、 cattano MarsiIio の妻は madonna Caterina という刺しゅうよりも悪徳を好む性質で、 conte Guamieri に恋した。 cattano MarsiIio は、夫人が同衾中に、 conte Guamieri の名を呼んだことから2人の仲を悟る。夫は妻に伯を招いて食事を供させるが、その時も妻は伯を夢中で眺め続けた上、2人はすきを見て逢引きの約束をする。夫はその有様を見て、妻に「満足させてやろう」と約束。 cattano MarsiIio は次の日曜に再び伯を迎えに行き、武装せずにやって来た伯を、物も言わずに刺殺。伯の家来、下手人も分らぬまま逃げ去る。 cattano MarsiIio は伯の両眼と顔を切り取って帰宅し、料理人に命じて料理させ、夫人に食べさせる。食べ終るの見て「うまかったか」と問う。夫人「今だかってない位」と答える。夫は「生きていた時あんなに好きだったのだから、煮てもおいしい筈だ」という。「何故」「あれは伯爵の顔だから」。それを聞いた夫人は「それじゃ他の料理が一緒にまじらないようにしたい」とナイフを取って心臓を一突きして死ぬ。夫は夫人を粗末に埋葬した。


第百三十五話 ピサがフィレンツェと戦っていた1364年ごろ、ピサ市民たちの何人かは統領( dogio )制を布こうと考え、その1人 Bindaccio di Benedetto は、 Johanni dell' Agnello を統領に推薦。 Johanni の所に赴いて、「自分たち Raspanti 党の者は君の統領就任を望んでいるが、ただし我々の忠告を聞いてくれることと、私をルッカの長官( rettore )にしてほしい」と注文する。 Bindaccio が最も有力な市民だったので、その推薦は効を奏し、 Johanni は統領となるが、 Bindaccio との約束に反して甥をルッカの長官に任命、 Bindaccio をピサの副統領にする。またミラノ領主 messer Bernabo からの使いが来た時、 Bindaccio を呼び出してからかう。 Bindaccio は Johanni の背信を怒り、聖 Jacopo di Galizia に巡礼に行くと言って市を出発、巡礼の後ドイツの皇帝カール(四世)の許へ行く。やがて皇帝イタリアに来る。 Johanni は会議を召集、 Bindaccio らにも意見を求める。 Bindaccio ら Johanni の甥を使者にやれとすすめる。 Johanni その通りにする。皇帝は Bindaccio らからすでに事情を知っていて、 Johanni の甥 Ghirardo を迎え、 Johanni の領土権を認め、 Ghirardo を騎士にする。その代り皇帝の代官がルッカの砦を得る。 Johanni はこれで一安心し、 Bindaccio らの不穏な空気を悟り、保安宮の ser Bartolo を逮捕させにやるが、 ser Bartolo はあらかじめ Bindaccio らにメモを送り、 Johanni の意図を知らす。 Bindaccio らの仲間が武装、ser Bartolo は家来に使いさせて Johanni に「騒動が起こるが構わないか」と問う。 Johanni 「延期せよ」と命令。 Bindaccio ら安全な所に立て寵る。皇帝が来ると、 Johanni は Bindaccio らにあいさつに来させて、この時に殺そうと計画。ところが皇帝が来て、 Johanni らを騎士に任命していた最中に、ピサとルッカで反乱が起った。こうしてピサは、 Johanni と Bindaccio 両派の手から、 messer Piero Gambacorta の手に移り、ルッカは自治を回復した。


第百三十六話 サンミニアートを Ciccioni 派が支配していた所へ、皇帝カール四世が来て条約を破ったため Ciccioni 派は処刑または追放され、代りに Mangiadori 派が帰国したが、今度は Mangiadori 派内に内紛あり、再度 Ciccioni 派が帰国して統治した。そこで messer Saulo Ciccioni が領主となり、協力者 ser Antonio da Montaione が騎士の位を得る。何年かが過ぎると messer Saulo Ciccioni は仲間への感謝を忘れ、敵方の messer Sinibaldo Pinaruoli を帰国させた。この messer Sinibaldo は ser Antonio da Montaione の近縁の友を殺した敵。 ser Antonio は messer Saulo Ciccioni に不平をいうが、 messer Saulo  Ciccioni 「まかせておけ」というだけでなく、「仲直りせよ」という。帰国した messer Sinibaldo は一族と武装して市内を歩き、 ser Antonio の悪口をいう。外人の傭兵隊長 ser Nicoluccio da Spoleti (スポレート)も messer Sinibaldo の態度は目に余るので、領主 messer Saulo Ciccioni に忠告するが効果なし。 ser Antonio 十分話し合った後、もはや仕方がないと郊外やヴォルテッラの友人と相談し、ある朝身内の者に messer Sinibaldo を殺させる。 messer Saulo Ciccioni これを聞いて ser Antonio を裁判にかけようとするが、 ser Antonio のために仲間が協力。まさか自分には及ぶまいと多寡をくっていた messer Saulo  Ciccioni は殺され、 ser Antonio が領主となり、以後友人のために尽す。 ser Antonio が死ぬと領地はピサに引き渡された。


第百三十七話 Maffeo (= Matteo ) Visconti が治めていた時代のミラノに、貧しい指物師の親方の Castagna という者がいたが、彼は Druziana という若くて美しい妻を娶った。若者 Giannusso が Druziana に恋し、 Druziana も使いを通して Giannusso に会いたいと伝える。 Druziana の家の裏手に Giannusso の家あり、 Giannusso は人気のない頃あいを見て Druziana の家にしのび込んで関係する。その後 Castagna が朝仕事に出た後、しのび込むことにした。ある朝夫が1度出たあと、例に反して帰宅する。入口に錠がかかっているので、 Castagna は妻の貞節さを喜ぶ。 Druziana はおどろき Giannusso を櫃(ひつ)の中に隠す。そして夫に、「自分はぬい物で忙しく働いているのに、何故戻ってくるの」と叱る。夫「今日は聖ベルナルディーノの祭日だ。それに良い取引ができて、この櫃が3フィオリーノ.12am.(アンブロジァーノ、ミラノの小銭)で売れた」という。妻それを聞き、「あんたは外へ出て世間を知っている筈なのに駄目ね。私はその櫃を5フィオリーノ.10amb.で売ったわよ。丁度今中に入って丈夫かどうか見てもらっている所よ」という。夫は「でかした」という。妻が夫を上へ連れて行くすきに、 Giannusso は櫃から出て「奥さんどこ」と呼び、 Castagna に「櫃は丈夫だが、中が汚い。手では取れない。ちょうな( l'ascia )を使ってもらおう」と頼む。夫はちょうなを持って櫃に入る。すると女房と Giannusso は外でさっきの続きを始め、妻は「そっちをこすって、あっちをみがいて、もっと上を突いて」と2人に同時に指示し、2度も楽しむ。その後、また Castagna は道具を取りに戻り、 Giannusso がしのび込む現場を見る。夫が戸を叩くと、妻は Giannusso をあわててベッドの下に隠す。夫はベッドの下の飾り台を売るのだといって、 Giannusso を引っぱり出し、 Giannusso にその台を立てるのを手伝わせる。 Castagna は木を削るふりをして、妻の鼻を削り「二度と馬鹿にするな」という。 Giannusso は怖れて二度とそこへ行かない。


第百三十八話 フェデリーゴ・バルバロッサがパルマにいたころ、パルマで Rossi と Palavigini の二派が争う。 messer Ulivieri Rossi が強力となり、味方を多数集める。そこで messer Etor Palavigini は味方を求め、 messer Pipino da Palu にパルマに来るようにたのみ、 messer Pipino らの助力で Rossi 派を追放したが、領主となると messer Etor は増長して、仲間と相談せずに敵を呼びもどす。 messer Pipino ら抗議をしても「おれにまかせよ」というのみでどんどん帰国させる。大部分の敵は帰国後 officio (役職)にもつけてもらう。 messer Pipino らが抗議したが、やはり messer Etor は取り合わず、良かれと思ってやっているのだと主張する。やがて両派の者が裁判で争うと、友人の方は最大限の罰を受け、敵方は法定の4分の1に負けてもらう。 messer Pipino 抗議して「せめ同じ扱いはできないか」というと、 messer Etor 「味方は増長させぬため、敵は貧しくならぬようこうした」という。 messer Pipino 「では中間派は我々を思いのままにできるのか」と怒り、仲間と語り合い「このままでは我々が危険だ、よそへ行って、 messer Etor を独りにしよう」と相談。結局一同武装して messer Etor の前に行き、「汝が我々や友人の死の原因となりたいのなら先ず汝が死ね」と彼を殺す。また帰国した敵を全部殺し、また中間派に対して「汝らの忠告が我々を危険に陥し入れた」と叱って何人かを殺し、 messer Pipino が市の支配権を手中に収めた。


第百三十九話 イギリスの Riccardo 王は死ぬ時、息子 Orlandino をいとこのフランス王 Filippo にあずける。当時 Orlandino は4才だがすばらしく利発、学校で1年間の内に10年分以上学び、2年すぎると、王国のために役立つことを学校で学ぶ。 Filippo 王は Orlandino が8才の時、この進境を聞き、家来たちに「こいつは最初は立派だがすぐやる気をなくすので、 Nibbio (とんび)と呼べ」と命令。家来ら不満だが服従。王は次に Orlandino に剣術を習わせる。2年で師匠は歯が立たず。王は「またやる気をなくしたから料理を習わせよ」と命じ Orlandino は料理番たちが無理にやらなくても良いというのに自ら熱心に学び、料理の名人となる。家来せめて少しでも王子にふさわしい仕事をと考え、王子が14才の時に馬丁に変えてもらう。王子は14才で馬の世話を始め、馬術の名人となる。フランス王は18才未満で彼を殺そうと考えるが、 Orlandino はすごく女性にもて、女性は彼と喜んで交際し、金を与える。やがてスペインのアルフォンソ王が布告を出し、14才の Biancamontagna (白い山)姫の婿をきめるトーナメントを開催する。フランス王は100騎を従え出発、 Nibbio をもつれていく。スペイン王はフランス王が参加したことを喜ぶ。試合は Pasqua de' Cavalieri (騎士の復活祭=5月26日)に開かれることになる。スペイン王の家来たち、王女や貴婦人のためのパビリオンを作り、見物用のさじきを組立て、フランス王は夜歩きするものを縛り首にすると布告、フランス王、 Nibbio を殺すために、夜中に「明日はどの武器で戦うか」と問いに行かせる。 Nibbio 灯りを持って出かけつかまりそうになると、自分は仏王のおいでイギリス王の息子だと述べる。番人ら後難を恐れて手を出さず。 Orlandino 、王女のパビリオンに入り、王女の前で素裸になる。王女「誰」と問う。「馬丁だ」「何しに来たの」「他の用事で来たが、君が寝ていたので楽しませてやろうと思った」と説明。2人は2度楽しむ。 Nibbio は王女から明日の道具は槍だと聞き、仏王のもとにもどる。王女は翌朝 Nibbio とのことを母に語る。王妃は姫に、今晩は相手の正体を聞くまで何もさせるなという。翌日トーナメントが始まると、2人の騎士の娘 Giulia と Cornilia (伝説上の勇士 Dragonetta della Stella の妹たち)が、思いに沈んでいる Nibbio を見つけ、自分達に恋したせいだろうと信じて話しかけ、彼の望み通り黒の甲冑と黒馬を貸してやる。そして Agolante の槍を与える。 Nibbio その槍で主君の仏王を倒す。その後すぐ逃げ戻り、王の命令に従って風呂をたてた。その夜も王は Nibbio を使いに出す。 Nibbio は姫と会い2度楽しみ、翌日は剣で戦うことを知る。翌日も2人の娘の助けで、 Dragonetto の名剣を用いてフランス王を倒す。また逃げ戻って風呂をたてる。その夜も仏王は Nibbio を使いに出す。 Nibbio は王女と寝る。王女が母 Elcopatras の忠告通り何者かとたずねても馬丁としか言わぬ。王女は彼に5万フィオリーノの宝石のついた飾りを与えた。翌日は剣と槍のトーナメントで、 Nibbio はやはり2人の娘の助力で武具を得て、主君の仏王を倒す。スペイン王は勝利者の正体を知るため柵を用意し、逃げだそうとする Nibbio を捕える。フィリッポ王は風呂に入れず、 Nibbio を殺す口実ができたと喜ぶ。そこへ新しくきまったスペイン王女の花婿が Nibbio らしいという噂が伝わる。王が秘書官にたしかめさせると、 Nibbio だと判明。 Nibbio のもとに主君の仏王が現われると、 Nibbio はすっかり赤くなり、身体中真赤になる。(何故か理由は記されないがこのあたりからフランス王の態度は突然変化して)フィリッポ王は出発前にルッカの商人らに用意させた豪華な衣裳や王冠を Nibbio と王女に贈って祝福、 Nibbio をイギリス王に叙任してやる。 Nibbio はフランスを去る時、2人の家来に世話になった2人の娘と結婚させた。スペイン王とフランス王が死ぬと、 Nibbio は2人の領地を相続して3つの王国の王となった。


第百四十話 ユダヤの Bellem (ベツレヘム)に Esaia という金持あり、その美しい娘 Elizabetta は父からキリストが神に仕えたやり方を聞き、自分も現世を去ろうと決心。15才で単純な娘は Imbron (ヘブル)の谷に向かい、隠者に会い、さらに奥地に聖者がいると聞き、やがて Urbano という若い隠者に会う。 Urbano は娘と同じ庵で寝て、悪魔を地獄へ送ることが大切だと教え、2人は裸でひざまずき向い会う。娘「目の前のそれなあに」隠者「これが悪魔だが、汝もその代りのものを持っている。つまり地獄だ。どうか私の悩みをはらすため私の悪魔を汝の地獄へ入れさせよ」と説得して事にとりかかる。最初娘は痛がり「悪魔は私の地獄を痛めた」というが、「今後はそういうことはない」と慰められ、6度も繰り返す。ついに娘は快感を覚えて「神に仕えるのは楽しい。悪魔を地獄へ入れるほど楽しいことはない」と述べる。若い隠者次第に弱り果て、「お前の地獄はすで悪魔を十分罰した」というが、娘は「まだまだ私の地獄は我慢できない」と責めたてる。隠者「地獄を養うには、大勢の悪魔がいるなあ」と努力しつづける。その後娘は隠者の忠告で家に戻り、結婚し、機会あるごとに1匹またはそれ以上の悪魔を地獄へ入れた。


第百四十一話 ミラノ郊外の Panigale という村に裕福な Risibaldi という農夫がいたが3人の息子あり、末っ子は Malgigi といった。父は死ぬ時遺言して、3人に均等の遺産を残す。その遺産とは、1つの農園と狩の時多くの動物を集める角笛だが、ただし3人の同意なしでは決して売らぬこと、また処女でない娘とは決して結婚するな、といい残す。長兄が桜んぼを集めている所へ巡礼が来てほしがる。長兄一枝与えようと手をのばした時木から転落、怒って巡礼の杖をひったくり、殴って追い払った。もどってその話をすると次兄がよくやったという。次兄にも同じことが起り、長兄誉める。末っ子も何度も落ちたが、4度目に桜んぼの枝を与えた。すると巡礼は、自分は聖マルティーノだと名乗り、何でも望みをかなえてやろうという。 Malgigi は 1)いつも好きな時ほしい色の馬を得る力、 2)望みの色の服と武具を得る力、 3)角笛1つで6マイル以内の獣、蛇、鳥などを集める力、 4)質問した時 conno と culo (前の穴と後の穴)に返答させる力を求める。聖マルティーノ望みをかなえる。 Malgigi は父の角笛と10フィオリーノで遺産の権利を放棄して家を出る。兄たちは満足した。 Malgigi がアラゴンに来ると Penopeo 王が王女 Dea の婿を探している所で、 Malgigi は黄衣に身をかため、動物を一杯つれて町を囲む。王はかなわぬと見て使者をおくる。野獣と共に入城した Malgigi は王宮からえさをもらい、動物を解散させ、もし処女であれば Dea 姫を娶りたいと申し出る。王も王妃も太鼓判を押す。 Malgigi が寝ている所へ Dea 姫来るが、何もせず眠る。Dea 姫が寝た時、 Malgigi は conno にたずねる。「O conno、 fu nimo la dentro? (コンノちゃん、あんたの中には誰も入らなかったかい)」するとコンノは、「O messer、 e ci e stato il cuoco e lo sotto cuoco、 e' I confessatore di madonna e quello di messere e altri、 (おお旦那様、料理番と料理見習、王妃様の告解師と王様の告解師、その他の人々もここへ入って来ましたよ)」と返答する。 culo (尻の穴)に聞くと、 culo もその通りだと証言した。「そんなコンノはわしの手におえぬ」と Malgigi は何も言わずに王宮を逃げ出した。次にシチリア王(名前は記されず)の Diana 姫の婿にどうかと緑の衣裳で押しかけた。しかし、姫が寝た後、彼女の conno には、多数の修道士と何人かの楯持が侵入したと聞いてやはり立去る。最後にナポリの Ercole 王の美しい王女 Ginevra の許へ赤い衣裳で押しかけると、彼女は処女だと分る。そこで盛大な結婚式を行うと、アラゴン王とシチリア王が攻めて来て10マイルの所から使者を送る。ナポリ王は Malgigi のすすめで2人の王と話し合い、正当な裁きをうけることになる。ナポリ第一の教会に王らが集まり論議、先ず Dea が抗議。 Malgigi 人々の前で彼女の conno に話しかけ、 conno も culo も証言、アラゴン王は恥をかいて退場。次に Diana 姫は culo と conno に綿くずをきっちり詰めて出廷、 Malgigi がいくらたずねても返事なし。 Malgigi は神通力を失ったかと心配した。だがその時、 Diana の体内にガスがたまり、かすかにもれて culo に細いすき間ができ、 Diana の cuIo がかすかに「綿が詰まっていて話せません。でも大勢の修道士と何人かの楯持ちが姫の conno に入りました」と証言。姫の両親恥をかき娘を叱ると、姫気を失って倒れ、綿が飛び出した。最後に Ginevra 姫の conno と culo が彼女の純潔を証明する。 Malgigi は2人の王に、王女達を寛大に扱って下さい、彼女らをそういう行為に導いたのは悪意ではなく自然だからととりなす。王ら祭の後で帰国し、 Malgigi 王国を継ぎ妃と楽しく暮しつつ、魔法で領地を拡大した。


第百四十二話 ジェノヴァに Ghirardo Spinola という金持がいたが、 Colonna という妻と結婚し、理由もないのにやきもちを焼く。妻は腹を立て、そんなら理由を作ってやれと考えて、 Piero Saulli という若者が自分を慕っていると知り、彼と仲良くなる。夫がパスタ好きなのでパスタに阿片を入れて夫を眠らせて恋人と会う。夫パスタを食うとすぐ眠ることをあやしみ、食ったふりをして他人に食わせるとその人もすぐ眠る。そこで夫は目を覚まして見張っていると、妻がいつものように夜中に恋人の所へ行く。夫は戸を締め、窓の所で妻の帰りを待つ。妻は戸が開かないので、必死に中へ入ろうとしていると、上から夫が「さっきいた所へ戻れ。お前の親戚に言ってやらあ」とののり、妻が身投げするといっても許さない。そこで妻は貯水槽に大石を投げこみ、「神よ救いたまえ」と叫ぶ。 Ghirardo はてっきり妻が身投げしたと信じて外へとび出し、鉄の爪のついた道具を持って助けに走る。妻そのすきに家に入り込み戸をしめて、「水は昼間飲むものじゃないわよ」とあざけり、戻って来た夫を入れてやらず、「いつも酔っぱらって戻るから、今晩は入れてやらない」という。 Ghirardo が怒ってどなると近所の人々起きだす。妻は皆に「この人は今ごろまで帰って来ないから締め出してやった」と説明する。結局親戚等も間に入り、 Ghirardo は中へ入れてもらう。妻はまた恋人に会いにいく。夫は妻が留守なのに気付き、戸口をしめて窓から見張っており、戻って来た妻に、「良く精が出るなあ」と皮肉り、屈辱の余り我慢しきれず妻をまさかりで殴り殺すが、うまく殺人は知られずに済んだ。


第百四十三話 バビロニアのスルタン Ipocras は若いころ Gran Cane の娘 Lavina と結婚、嫉妬のあまり Lavina を宮殿の前の塔にとじこめた。塔は頑丈、すべての鍵は二重の錠つきでその鍵をスルタンが所有。宝石一杯の美室あり、 Lavina 夫人は刺しゅうを好む。 Lavina の噂世界中に拡まり、ジェノヴァの若者 Antoniotto da Montalto が彼女に恋し、全財産を準備に用いて、思いを遂げるまでは戻らぬと決心して、船に宝石類をつめて出発する。バビロニアにつくとスルタンに宝石を献上して商売に来たといって定住。スルタンは彼を歓迎。 Antoniotto は姫の住家の塔を知る。 Antoniotto はスルタンに気に入られ、何度も食事に招待される。数ケ月後に自国の石工と知り合い、その助力で姫の塔に穴を開けて、簡単に出入りできる窓を作ってもらう。 Antoniotto はその窓からしのび込んで Lavina 姫に会い、何故来たかを語り、姫のような美人がとじこめられているのは不当だといい、姫も Antoniotto の好意を受け入れる。そして2度交わり、毎日会おうと約束。 Antoniotto はスルタンにナポリ出身の Villanuccio de' Frangiapani だと自称。 Antoniotto は姫と毎日会うが、スルタンが来ると重い門が音を立てるので、窓から逃げ出す。 Antoniotto は姫を自国に連れ戻そうと決心し、自国に4隻の武装ガレー船を注文、スルタンに両親がガレー船で花嫁の候補者を送って来るが、気に入らなければ送り返すので、自分といっしよに見てほしいといい、しかるべき書類を見せて信用させ。やって来たガレー船に姫を載せてスルタンに見せる。姫は夫にラテン語であいさつ。スルタン、自分の妻に酷似しているのに驚くが、妻はイタリアのことばを知らぬ筈だと思い名を聞くと" Pulizena della stirpe dell' Aquila "と答える。スルタン王、 Antoniotto に結婚をすすめる。 Antoniotto 結婚式の介添役をスルタンに依頼し、その介添で Antoniotto は姫と結婚。スルタンは Antoniotto の花嫁が夫人に似ているのが気になり塔に入る。姫はあわてて普段着姿に着替え夫を迎える。宝石を見せよというので宝石箱を見せる。姫「楽器の音は何」と問う。「外国人の結婚式」という返事を聞き、パーティに加われないわが身をなげく。スルタンが退出して Antoniotto の所にもどると、姫も Antoniotto の所に現われてイタリア語でしゃべる。姫は上手に踊る。スルタン塔に入る。姫あわてて食物を持って戻る。スルタン「お前に似ているので、余はあの花嫁が気に入った」というと、姫「自分は他人を見ることも許されない」と嘆く。スルタンが Antoniotto の部屋に戻ると姫も服を着かえて戻り、スルタンとダンスをする。スルタンは朝まで花嫁のことを思っている。姫は塔に戻らず、 Antoniotto の部屋で朝まで楽しむ。スルタンが朝塔に入ると、姫はあわてて裸のままでベッドに横になっている。スルタン「余は花嫁が汝ではないかと思って一晩眠れなかった」と告げ、姫は「あなたは口だけ、他の人は実行するのに」という。スルタンは姫の横で眠る。姫ベッドを出て、普段の上着を着て、刺しゅうをする。スルタン目をさまし、妻が刺しゅうをしているのを見る。こうして何ケ月かすぎ、 Antoniotto が「その内にばれたら罰せられる、出発しよう」と提案、姫も同意。 Antoniotto は塔の宝石を船に移し、しかるべき書類をスルタンに見せ、「事情ができたので故国に戻らねばなりませんが、妻を港まで送って下さい」と頼む。スルタンが塔に行くと、姫は刺しゅうをしていた。「今日あの花嫁が国に帰るよ」と告げ、姫を塔にとじこめ、家来と共に、馬で船出を見送り戻って塔に入ると中は空っぽ。スルタンは海軍を繰出すが、すでに手遅れで、2人はジェノヴァについて幸福に暮らす。スルタンはナポリヘ追手をさし向けるが無駄、悲しみで死ぬ。


第百四十四話 フィリッポ王(著者はフランス王を一般的にこう呼んだ)時代の Nissa (ニース)で党争が起る。 Mida Boverelli、 Troilo Sodorini、 Ambrotto Ramaglianti ら大市民が協力して conte Lamondo Certani、 conte Bertoldo Tagliamocchi らの貴族、小領主と争い前者が後者を追放、近くの領主 messer Fasino della Stella とも戦う。数ケ月後 Mida は友人らと相談せずに  conte Lamondo の友人らを市に帰らせ、友人の苦情に対して「良かれと思ってやっている」と説明、また友人の反対を無視して敵を役職につける。 Troilo と Ambrotto は味方の marchese Ercule da Basco と協力して、 Mida を打倒しようと計画、 Mida はそれを知り敵方と協力して Troilo と Ambrotto を追放、また一味の marchese Ercule を捕えて打首にする。 Mida によって帰国できた敵方は、 Mida を毒殺。 marchese Ercule のいとこに当る marchese Achille は、messer Ramondo del Balso の友人で messer Fasin della StelIa の敵。いとこの復讐のため marchese Achille は大軍をひきいて来襲。市民は marchese Achille を宥めるため帰国した conte の友人らに反乱を起し、殺害または追放にする。入城した marchese Achille は conte らを処刑する。 marchese Achille は亡命した Troilo と Ambrotto の帰国を許す。市と marchese Achille は、 messer Fasin と戦う。Troilo が市の主導権をにぎるが、そうなると気が変り、 marchese Achille やその友 messer Ramondo に無断で、 cardinale di Pamplona のすすめに従い、 messer Fasin と和解。 Ambrotto が抗議。 Troilo 「臆病者は去れ」と怒った。 Ambrotto はすぐ資金を用意して marchese Achille や messer Ramondo と相談、仲間も同意、 Troilo はそれに対抗して Ambrotto の財産を没収し、その一族の者を投獄する。 Troilo は cardinale di Pamplona と組んで市防衛の準備をし、 cardinale di Pamplona も全面的に支援。5~6月に両軍衝突。市民は、 Troilo の失政と見て反乱を起し、 Troilo を殺す。 messer Ramondo 、 marchese Achille 、Ambrotto らは入城、市は結局 messer Ramondo の領地となる。


第百四十五話百二十七話と似た話)  messer Luchino Visconti がミラノを治めていた時代(1339~49)に、皇帝の使節 messer Asso が来るが、美男で好色、 messer Luchino の姪 Cassandra との関係を望み、貧欲な夫と交渉して800フィオリーノで夫の許しを得た。 messer Asso 高すぎると思い、銀貨を金めっきして渡す。この詐欺がミラノ中知れわたり、 messer Luchino の耳に入る。聖アンブロージオの日に、 messer Luchino は messer Asso と一緒に馬で進み、一団の若い婦人の群に近より、美しい Filippa de' Porri に近づき messer Asso について「この人が勝てそうかね」と問う。Filippa このことばに侮辱を感じ、「だめでしょうけど、カッサンドラより良いお金がほしいわ」と言って2人をからかう。


第百四十六話 ヴェネツィアに Basino da Tristi という男が現われて、商人のようなふりをする。彼は各々が50、25、15、10フィオリーノにもあたる立派な真珠を数多く用意し、袋に入れる。またそれと同じ大きさのエジプト豆をも入手する。ある商人の所で、大もうけさせてやるといい、真珠を見せてそれを担保にして1千ドゥート借り、書類を作成し、金を借りる時真珠の袋を豆の袋とすり換えた。多くの商人やユダヤ人を相手に同じことを繰返す。4ケ月ごとに借金と利子を払い、また新しく借金し、領主のように豪勢に暮らす。名声高まり、人々安心してどんどん貸す。 Basino 逃亡を決意し4万ドゥカート以上借り集めてヴェネツィアを去る。あるユダヤ人が、期限が来たので担保の真珠を売ろうとして豆を発見。その噂が伝わっても皆自分は担保を取っていると安心していた。次々と期限が来て袋を開くと、全てはエジプト豆だった。 Basino の消息は分らない。


第百四十七話 ピサに messer Gallo da San Casciano という騎士がいたがすでに高令で年の離れた妻 madonna Piera との間に Giovanna という娘がいた。 Giovanna は

美しく成長、両親は良縁を求めていた。 messer Gallo の家に Giasone という若者が出入りしていたが、 messer Gallo はこの若者を子供のように可愛がる。Giovanna と Giasone は互いに好きになり、娘に回廊の上で寝させて、 Giasone がしのびこむという約束をきめ、翌6月1日に娘は母に「暑くて眠れぬ」とぐちを言い、ベッドを回廊の上に移したいとせがむ。母は父と相談。両親は当初許さないが、夜うるさくせがむので、結局許してやる。 Giovanna は Giasone に合図。青年はしごで回廊の上によじのぼり、2人は終夜楽しみ、そのまま眠りこける。 messer Gallo は起きて娘を見に行き裸の2人を発見黙って妻の所へ行き、「娘が ugello (小鳥の他に陰茎の意味あり)を捕えたから見においで」と招く。2人は男女をながめ、父は Giasone が婿として適当だと判断したので、目覚めた Giasone に、「お前は殺されても仕方がない所だが、 Giovanna を妻にせよ」と命じ、妻の指輪を貸して2人を結婚させ、後日親戚に披露。正式に結婚した2人は長く幸福に暮らす。


第百四十八話 アレッツオの郊外 Montevarchi の裕福な宿の主人 Fasino は世慣れぬ男で、フィレンツェから Agata de' Berlinghieri を娶った。盛大な結婚式の時、 Biliotto Palmerini という家柄の良い男がやって来て、 Agata に話しかけ、花嫁も気に入る。男は花嫁がフィレンツェほど楽しみが多くないかも知れないというので、「あんたの夫で足りない分は私が補ってやろう」と申し出る。新婚の床の翌日 Agata は Biliotto Palmerini に「昨夜の夫のごちそうはおいしかったが量が少なかった」という。 Biliotto Palmerini 「私が不足をたしてやる」と約束する。やがて夫がアレッツォに行った留守に、 Biliotto Palmerini は Agata と楽しみ、その後関係が続く。やがて5月となり、 Biliotto Palmerini と Agata は夫が来ない部屋の地面をベッドとして楽しみ、4度楽しんだあと、 Biliotto Palmerini が疲れたので、 Agata はフィレンツェで恋人が疲れた時にやっていた方法を思い出し、そのやり方を試みようと Biliotto Palmerini の上に乗る。その時夫の Fasino が階段を上って来て、その部屋をのぞき、妻が Biliotto Palmerini に馬乗りになっている所を目撃して、びっくり仰天、「お前は何をしているの、お前の下にいる方が誰だか分らないのか」とたずねて階下に駆け降りて武装した。男女もあわてて飛び起き、 Biliotto Palmerini は裏の階段から逃走する。家族や近所の人々、武装した Fasino を見てどうしたのかと間うと、「 Agata が Biliotto Palmerini を侮辱したので復讐を心配しているのだ、おれは Agata が彼をおさえつけて彼がどうして潰れないのか分らない位はげしく尻でゆさぶっている所を見てしまったのだ」と恐れおののいている。人々が Biliotto Palmerini に使いをやり事情を問うと、 Biliotto Palmerini 怒っているふりをして、「彼女が行った侮辱は償ってもらわねばならない」とおどかす。 Fasino はおそれて妻を説得し、「気の済むまで復讐してもらう他ない」と説き、妻も「仕方ありません、我慢します」と答える。 Biliotto Palmerini が来ると、女は気のすむまで彼の下になっているというので、夫はほっとして退席、妻と Biliotto Palmerini は2度楽しみ、3度目にさしかかった時、Fasino が上って来て、「あと3度やって下さい」と頼む。その間に Fasino はごちそうを用意し、和解を祝う。その後も2人は楽しみ、Agata は Biliotto Palmerini の子を生んで Belriso (美しい微笑)と名付ける。Fasino はその後も何も知らずに死んだ。


第百四十九話 フィレンツェの郊外 Staggia に Ancroia という女がいたが、聖マルティーノを深く信仰する Tomeo という男の妻だった。 Tomeo は多くの貧民を養う。妻は夫の善行を嫌い、他の男と関係する。夫が叱る。ところがある日 Ancroia が「自分は誤っていた」と殊勝なことを言い出して夫を喜ばす。しかし Ancroia は近所の神父 p. Frastaglia da Codiponte に目をつけていて、これと関係した後何度も食事に誘う。聖マルティーノの祭日の前日、夫が貧民のために用意した肉やパンやぶどう酒を盗んで、 Frastaglia 神父の所へ行き一夜を楽しむ。翌朝帰宅し、前夜貧民をもてなした夫にぶつぶついう。 Tomeo は農具を持ってぶどう園へ行く。そこで農夫( lavaratore )姿の男に会う。彼は「自分を雇え」といい、汝の妻の品行が改まるまで一緒に住んでやるという。Tomeo が男をつれて戻ると、妻は浮気がしにくくなるので不満がるが Tomeo はうまくなだめて男をおく。男4人前働く。雨の日 Tomeo が休んでも、男は仕事に出て普段の何倍も働いた。ある風の日男は「今日は自分には天気が悪い」と仕事を休む。妻は彼がいるのを知らず、ごちそうを用意して神父を迎えに出かける。神父は別の道から来ていつも使う穴から呼ぶと、男が女房の声を真似して、「今日はあの傭い人がいるけど、いつものように用事をすまそう」という。神父相手が Ancroia だと思い、穴から一物を出すと、男はナイフで一物を切る。神父痛みで死にそうになり、女にだまされたと思って自室のベッドに駆け戻る。男は神父の一物を鍋に入れる。女は神父に会えず戻ってくるが、また鍋を持って出かけると神父がベッド寝ていて、病気だという。女は慰めるため鍋のふたを取るとソーセージの代りに神父の一物が現れる。神父は女房が食べたくて自分の一物を切ったと確信、復讐のため、死ぬ前にキスをさせてくれと頼み、女進んで舌を神父の口に押し入れると、神父はその舌をかみ切り、「お前がおれのを切ったように、おれもお前の舌を切ってやった」と叫ぶ。女房弁解しようとしたが舌がなくてできない。例の男は Tomeo に一切の事情を語り「聖マルティーノは彼に仕えるものにこんな風に報いる」と述べて去る。神父は死に.、妻はかろうじて生きのびた。


第百五十話 ピサの若者 Curradino da San Savino は、近くに住む絹織物商 Ranieri の妻 madonna Antoniella に恋し、彼女が妊娠した時、その名付け親となって親しみ、間もなく意を伝えて夫入と愛し合う。やがてボローニャヘ行き、医学を学び、医者になって帰国。 Curradino はもう madonna Antoniella が忘れたと思い、窓の外で楽器や歌でさわぐ。 madonna Antoniella 少し忘れたふりをして彼をじらした後、夫の留守に病気だと称して Curradino を招き楽しく話し合い、3度も楽しむ。ある日 madonna Antoniella は Curradino が来たので女中を外出させ、子供と3人きりで楽しんでいると、女中があわてて戻って来て、旦那様が帰って来られたと報告。夫の Ranieri は戸口をたたいており2人はもう間に合わぬかとあわてるが、先ず妻が嬉しそうに夫の前に現われて、「神様のおかげで Curradino さんが医者になり、我々の子供の代父となり、今日来てくれた」という。夫が何故かと聞くと、「子供が病気になって死にそうになっていたところを診察して、乳母が来ると危いので来ないように戸を締めて治療して下さった」といい、女中には主の祈りを唱えに教会へ行かせたと説明。.女中はそれを裏付ける。その話の間に、ゆっくりと服装をととのえた Curradino が子供を抱いてあらわれる。夫は Curradino に感謝してごちそうする。その後も2人はうまく楽しみ、女中もその暇に若い恋入と楽しんだ。


第百五十一話 フィレンツェ郊外の Empoli にメディチ家の貴族の1人 messer Veri の宮殿と財産があったが、そこに Popone Soprano という水車屋がいた。 messer Veri は妻 madonna Vessosa deli Adimari を伴ってこの別荘へ行く。夫人は8月末の日曜に、エンポリの女たちと散歩に出かけ、帰りに居酒屋で休み、そこで売春婦から水車番の Popone はすごい巨根を持っていて8日間も楽しんだという話を聞く。奥方はそれを耳に入れて戻る。夕方夫に、小麦粉の質が悪いので水車へ調べに行くという。夫は別に悪くないというが、妻は出かけると言いはる。その夜夫人は興奮で眠られず、夫に訳を聞かれ、「暑いから水車の水で早く足を濡らしたい」と答える。翌朝、わけ知りの女中にタオルを持たせて水車へ行く。 Popone 暑いのでパンツなしで働いている。奥方は女中を外で待たせて中に入り、 Popone が1人なので相手の「杖( pasturale )」をつかむ。 Popone パンツをはく間がなかったと弁解。夫人は、「早くこの肉を私の中に入れよ」と命じ、2人はたちまち2度交わる。奥方は3度目を望む。夫は目をさまし、妻おらず、何かあると悟り、水車小屋へ急行する。女中あわてて連絡。水車屋「大きくなっているがどうしょう」とあわてると、夫人、「粉の中に入れて、粉を挽いているふりをしなさい」という。女は裏口から抜け出て、はだしで足を水にひたす。夫は女中が1人外にいるのを見て、内部の有様を想像、現場を捕えんと馬を走らす。水車小屋の中に入り、 Popone のシャツをめくり上げると、「杖」が粉だらけになっているので、「フライにするつもりか」とからかう。粉屋「私の同僚たちは、人様同様働いております」と答える。messer Veri は夫人が水に足をひたしているのを見て「そんなに暑いか」と問う。妻は夫に、「水車屋は人並のサービスはしているようだが、粉を無駄にしているようだ」といい、「良い粉は私たちだけに回すべきだ」ともいう。水車屋は、夫妻の説教を神妙に聞く。帰りに、夫は妻に「今日は水につかって満足のようだな」とひやかす。夫は夫人を疑い続け、妻を罠にかける。妻に水車屋は家事が上手かと問い、上手そうだというので、「お前が先に行って用意してくれ、戻って来なければ私が行ってゆっくりごちそうになる」と先に行かせる、妻また女中と水車小屋へ行く。そして床の上で3度、さらにベッドの上で2度交わる。反対の方から夫は近づく。女中気付いて連絡。主人が入ると今度は妻がほうきを持っており、水車屋はおらず、妻が「ごちそうをするため、魚を取りに行った」という。夫は妻が身体をふいたきれを発見する。妻「それは家を出る時から棄てようと思っていたもの」と丸めこむ。水車屋、魚を取ってくる。主人喜んだふりをして、エンポリヘ帰って食べようといい、夫人は安心、女中と歌を歌いながら別荘に戻る。食事中にフィレンツェから急用ができたとの連絡あり、馬で戻る。妻、水車番と毎日楽しむ。夫、別荘に戻ると妻おらず、巡礼姿に変装して杖を持って水車小屋に向う。女中だまされる。主人、水車小屋で妻が水車屋の下敷になっているのを発見、杖で2人を串刺しにする。何もいわずエンポリに戻る。2人は叫び、女中が入った時には絶命していた。エンポリでその知らせを受けた主人は、下手人を祝福し、2人を粗末に埋葬、下手人は分らず、夫人は罰を受けた。


第百五十二話 Ghellerle 伯は il conte Artu とも呼ばれ妻子なし、家来らに結婚をすすめられて、「私は自分で探す」と宣言。ある貧しい未亡人の娘 Gostantina を選び、その母に決して2人の邪魔しないことを約束させ、一同に紹介して結婚。衣裳を変えると牛飼いの娘には見えぬ。夫人が娘を生むと、伯は夫人の忍耐心をためすため、「お前の生れが卑しいので人々はお前に満足せぬ」という。そして家来に命じて娘を取りに行かせる。夫人は娘に祝福を与えて、「野獣のえさにはしないで下さい」と引き渡す。伯はパリの親戚にその子を養わす。しかし妻には子供を殺したことにしておく。夫人は次に男子を生むが、伯はやはり取り上げて殺したことにしてパリに送る。伯は夫人の身分が卑しいので夫人と離縁して別の花嫁をとらねばならないかも知れぬといい、教皇に離婚の許可を求める。その許可が来たので妻に「母の所へ戻れ」という。妃は裸で戻るというが、伯の命令通りシュミーズを着てはだしで母の許に戻る。伯、結婚式の準備のため妻を呼び出して、仕度の世話をさせ、パリから12才になった娘と8才の息子を呼び戻す。伯はその娘を新しい花嫁だといって夫人に示して、その意見を聞く。「結構でしよう。でもこの方は私とは違いますから、前の妻に加えたような苦しみを与えないように」と頼む。伯そのことばに動かされ、「この2人はお前の子供だよ」と真相を告げる。夫人は喜びの余り泣く。女たちも喜び、早速夫人に着換えさせる。一同は2人の賢こさに感心して祝う。伯は妻の母親にも楽をさせ、成長した娘を良い相手に嫁がせ、老年まで楽しく暮らした。


第百五十三話 フィレンツェに messer Nicolo Bisdomini という人がいたが、その妻 madonna Piacevole は夫を尻にしき、男たちと楽しむ。夫は温泉へ行き、床屋 Nanni と会い、その男根の巨大さに感心、帰宅した後独りで思い出し笑いをする。妻その訳をたずねる。夫仲々いわないが、「言わないと食べさせない」といわれてやっと話す。妻いやらしそうな顔をする。床の中で妻はその話題をむし返し、「あんたは誰のだってそう思うでしょう」と言うと、「馬鹿、おれだってフィレンツェ人の中では大きい方だが、あいつのは特別だ」という。間もなく madonna Piacevole 夫人は歯が痛いといい、頭に布を巻いて泣きわめき、床屋(外科医、歯医者を兼ねる)に道具を持って来てもらい、夫に酢を取りにいかせたすきに、床屋のパンツをつかみ、「あんたはすごいものを持っているそうだから、やってよ」と頼む。 Nanni はすぐ同意して、夫に薬屋へ latte da denti (歯のミルク)という薬を買いにやらせる。家に残されたのは4才の子供のみ。2人は夫の留守に2度楽しむ。子供が、戻って来た父に「おじさんがお母さんのお尻から1ブラッチオもある歯を2本も抜いたので治ったよ」と報告。夫不審がり、「今何と言った」と聞くが、床屋は自分には道具がいるとか何とか言ってごまかし、逃げ去る。妻は夫がまだごちゃごちゃ言っているので、「尻に歯が生えるものですか、あほらし」と取り合わず、だが何日か後 messer Nicolo が家を留守にして戻って来ると、床屋が来ていて、子供は外にいる。やがて床屋が3度やって出て来るのに出会う。子供に様子を聞くと「入れてもらえなかった」という。妻は「私は貴族と結婚したつもりだのに、馬鹿と結婚していたのだわ、尻に歯が生えるだなんて」とぐちる。 messer Nicolo ある日床屋が店にいないので、さてはと思い、階段をこっそり上って現場を押える。床屋は立とうとするが、もう少しで昇天する間際の夫人は男をしっかりとつかまえて、「夫よ、これなしでは私は生きていけない」といった。そこで夫はすぐに遊廓に急行し、娼婦の1人を領地の別荘へ連れて行って同棲しはじめる。その訳を聞かれて、 messer Nicolo は皆に妻と Nanni の関係をしゃべる。 madonna Piacevole は仲間はずれにされる。床屋の店へ押しかけて楽しむが、 madonna Piacevole の一族が、家の恥とばかり床屋をつかまえて散々なぐり、 madonna Piacevole とも他の女とも関係できなくしてしまう。messer Nicolo も生涯他の女を娶らず恥辱にまみれて死ぬ。


第百五十四話 フィレンツェの町で Ardingo Ricci という若者が(以下欠落)


第百五十五話 Luni の町は良港に恵まれたすばらしい所だったが、後に徹底的な破壊を受けた。以下はその理由。 Vismarch (デンマーク)王 Alier と Astech は兄弟で、 Astech には Tamaris という妃がいた。ある日ガレー船で Astech 王と王妃と家来たちは船出して、 Luni につき、 Astech 王はこの土地が気に入り、6月にある宿屋にとまる。その主人 Martino Bonvete (巨根の意)は Tamaris が気に入る。 Tamaris はたまたまあることば(その部分欠落)を聞き、 Martino Bonvete が巨根の持主だと知る。そこで早速 Martino Bonvete を呼び、 Martino Bonvete という名の由来をたずね、 Martino Bonvete 説明のため男根をパンツから出して王妃に握らす。王妃は興奮するが、婦人たちが来たのでそれ以上できず手放す。以後常に Martino Bonvete の男根のことを思いつめて遂に病気になる。飲食もやめて衰弱。王は空気が悪いせいだと考え、船出しようとする。王妃「今日はやめて下さい」と止め、 Martino Bonvete を呼び、死んだように見える薬を用意させる。そして死んだふりをして埋めてもらい、後で掘り出すという計画を立てる。 Martino Bonvete は薬を用意して王妃に手渡す(以下の部分欠落)



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