セルカンビ2


附録『イル ノヴェッリエーレ』の序文およびノヴェッラの要約(1~50)


米山  喜晟




序文


 神様は人間を自分に似せて作られたが、人々は不正を犯しやすく、そのために天罰を受けることがある。1374年に、そうした天罰としてペストが発生し、ルッカの男女と修道士や司祭らは、空気が澄むまでイタリア各地を旅行しようと計画した。2月の日曜日に聖マリア・デル・コルソ教会に彼らが集まると、Aluizi という人がリーダーを選ぼうと提案し、 Aluizi 自身が団長(preposto)に選ばれてしまう。人々はお金を出し合い、3000フィオリーノが集まる。一同は旅行中に不正を行わないこと、夫婦といえども男女の交わりを行わないことを誓う。団長は会計係(tesoriere)と、男性女性を別々に世話する世話係(spenditore)を任命し、朝夕のミサや礼拝の指導を聖職者たちに依頼し、また人々の中で能力ある人々に、歌、踊、楽器、剣技その他で食事時などに仲間を楽しませてくれるように命令した後、「ゆえなくして多くの侮辱に耐える者、また彼に対して罪もないのに多くの侮辱がなされた者」に、旅行中の作者(autore=物語の話し手)およびこの本の作者( fattore di questo libro )になってほしいと依頼し、作者の名前(Giovanni Sercambi)の各アルファベットを各行の語題に据えた2行のコーダ付きのソネットを発表した。一同この提案を了承する。『デカメロン』のネイフィレのバッラータで序は終る。


(以下では旅行の経過、宿の様子、歌われた詩の内容等は省略してノヴェッラのみを要約する。)



第一話 Tanai の大金持 Alvisir が死に、Arduigi、 Scanda Ibech、 Manasse の3人兄弟が各自4万(単位記入なし)のお金と、3万の宝石を相続、ただし宝石3個は遺言によって一ヶ所に隠され。手をつけることを禁じられる。息子ら働かずに放蕩して金を使うが、末息子の Manasse は真先に自分の金を使い果たして、黙って宝石1個を売り払う。やがて金に窮した兄ら、末弟と共に宝石の隠し場所へ行くと宝石は2個しかなく、3人はいずれも知らぬと主張。父の友人で Mangi の領主 Calì の判定をあおぐため旅に出る。その旅は40日以上かかるが、20日余り後、長兄が同じ砂漠を左目だけの雌らくだが通ったと言う。しばらく後、木の下で涼を取ると次兄が、そこに蜂蜜と酢を積んだ雌らくだが休んだと言う。歩き始めた時、末弟がそこに尾のない雌らくだがいたという。Mangi から1日の場所で3人はある御者にらくだをみなかったかと問われ、それぞれが、左目だけか、蜂密と酢を積んでいたか、尾がなかったかと問い、相手がそうだと答えると、見ないと言う。御者は3人が盗んだと疑い、領主 Calì の所へ連れて行く。長兄は、片方の側の草ばかり食べていたから左目だけだと思ったといい。次兄は、一方の側にはハエ、他方の側には羽虫が集まっていたから、蜂蜜と酢を積んでいると思ったといい、末弟は尾で尿に砂をかけていなかったから尾なしだと思ったといって、推理した根拠を明かす。Calì は説明に納得し、御者に帰らせて、旅の理由をたずね、三人が友人の息子だと知り、判定役を引き受ける。その夜彼は、三人を中が空洞になった柱が中央にある部屋に泊めて、自分が空洞に入る。長兄は Calì がもてなした肉は犬の乳で育ったものだといい、次兄は食卓のぶどう酒が、死体を埋めた畑のぶどうから作ったものだといい、末弟は、Calì が私生児だと言う。Calì は急いで確かめるとすべて事実だとわかり、彼の母も彼がラグーサ伯との間の子だったと白状する。翌日の晩餐の席で3人は推理の理由を問われ。長兄は満足感がなくも前にもそういう小羊を食べたからといい、次兄は頭に妨げが生じたからだといい、末弟は部屋の中で盗み聞きしているのが分ったからだと理由を説明。Calì は納得した後、宝石の犯人をあてるため3人に問う。「もし汝らが領主だとして、夫の所へ送られる処女を家来が汝らの前に連れて来たらどうするか。」長兄はそのまま護衛をつけて無事に送らせるといい、次兄はその娘を楽しんだ後、夫の許に送るといい、末弟は娘を意に沿わせた後、家来全員に与えて、彼らの間で養わせると答える。Calì その返答から、犯人は末弟だと指摘、末弟、罪を白状。Calì 何故否定せぬかと問うと、末弟、CaIi が私生児だと白状したためだと答えた。


第二話 ルッカ San Cristobano 通りの毛皮屋 Ganfo は商売以外のことは馬鹿。病気になり医者から Bagno a Corsena へ行けとすすめられ、女房 Teodora に金をもらって出発。温泉につくと少しの水を飲んだだけで、温泉に入る。Ganfo は大勢の人が入浴しているので、自分の身体を見失うのをおそれて、右肩にわらの十字架をつけて入るが、途中肩までつかると十字架がとなりのフィレンツェ人の肩にくっつく。Ganfo あわてて「君はぼくだ」と言うと相手がおこり、馬鹿だと見て「あっちへ行け、お前は死んだ」と怒鳴る。Ganfo てっきり自分は死んだと信じ込み、ルッカの自宅に戻り女房に「おれは死んだ」と言って寝台に倒れる。女房は夫が死んだと信じて人々を集めて葬式を行い、棺をはこぶ。その棺を見た一人の下女、「Ganfo の魂は呪われよ。私はあいつに修理してもらおうと毛皮をあずけておいたのに」と叫ぶ。Ganfo 「おれは生きてさえいれば、ちゃんと頼みを聞いてやるのだが」とつぷやく。それを聞いて幽霊がとりついたかとあわてて棺を開けると Ganfo が生きていた。人々が Ganfo を引っぱり出すと Ganfo は事情を話す。人々が彼を連れもどし元気づけると回復して、彼は又商売に精を出したという。


第三話 前話の毛皮屋 Ganfo の San Cristofano の店の屋根裏をフィレンツェの靴屋 Zanobi が借りる。 Zanobi は Ganfo をうんといやな目に合わせてその店から追い.出し、自分がそこで商売をしょうと考える。そこで天井に穴を聞けて、ペニスを入れて毛皮に小便をかける。Ganfo が Zanobi に上から水をこぼすなと抗議すると、 Zanobi 、ねずみの仕業だといい、Ganfo の商売のためにねずみが多いと逆ねじをくわせる。Ganfo ねこを飼うか、店を変えるかという。 Zanobi いよいよ小便をかける。Ganfo 商売には抜け目ない男で、不審を覚え、店をしめたふりをして中にこもる。 Zanobi 穴から小便、Ganfo その現場を見るが黙っている。Ganfo は Zanobi に「今夜ねこをはなして効果がなければ店を替える」と言い、魚屋で20リブラ(約10kg)以上の大きなカマス(魚)を買う。その身は妻に料理させ、頭のみ用意する。夜 Zanobi が大きなペニスを穴に入れた時、カマスの口ではさむ。 Zanobi ねこの仕業と思いなだめようとすると、Ganfo は「ニャーゴ」と啼く。 Zanobi 痛さの余り大声を上げたので近所の人々集まり、 Zanobi の悪事が露見、人々 Zanobi を助けようと Ganfo の店を開けさせようとしたので、 Ganfo ははなす。数日後に Zanobi 死ぬ。Ganfo ひそかにアヴェマリアを唱えて、 Zanobi の霊を慰めた。


第四話 ポルトガル王 Gostanso はテュニス王女 Galiana と結婚、大いに愛すが、王妃は王1人で満足せず、故郷の若者を女装させこれと楽しむ。王はある夜王妃が大とかげと寝ている夢を見ておどろき病気になる。病気を治すため学者は占星術師を集めるが効果なく、キリスト教、ユダヤ教の両世界に三人の使者を送り、病気を治せば王冠と王妃以外の何でも与えると宣言する。その使者がピストイアからフィレンツェに向う途中フィレンツェの貧しい騎士 messere Aluizi Salviati に会いフィレンツェヘの道を問う。 messere Aluizi 同行しようという。途中で3人の1人が、 messere Aluizi に「馬を代えてやろう」といったので、やせ馬に乗った messere Aluizi は気を悪くして答えず。しばらく後雪解け水が増水している所で、使者の1人「私があなたのような伯爵だったら、どんな水でも橋をかけるのだが」といいまた messere Aluizi を怒らす。やがてフィレンツェの門の近くで神父らが死者を運ぶ灯を見て、 messere Aluizi が説明すると使者の1人が「それは死者か生者か」と間い返したので、 messere Aluizi また怒って返事せず。使者を宿に送り届けた messere Aluizi 不機嫌に帰宅。一人娘で14才の処女 Calìdonia わけを聞き、父に自分の晴れ着を質に入れて使者を招くようせがみ、3人を翌日食事に招待した。食事の後、「父が返答しなかった事柄を娘の私が代って答えます。馬の交換の提案に対しては、お互に珍しい話をしましょうという提案(それによって辛さを忘れようということらしい)で答え、橋については、昔のように裕福だったら召使が邪魔は除いてくれた上、良いお酒を運んでくれたでしょうに、と答え、3番目の問いには、死ぬ準備のできた人なら生きている、その逆なら死んでいると答えたでしょう」と述べて使者たちを感心させる。そして使者の用件を問う。使者たちは相談の上いきさつを話すと、娘は「2つのことを約束して下さい」とたのむ。その1つは彼女が女ではなく医者だと伝えること、2つ目は王に彼女の要求をそのまま守らせることで、使者ら約束する。彼女は父に家財道具一切を売らせ、その金で馬と衣裳を買い、他に500フィオリーノ持って7月に故郷を出発し、8月に都に到着。医師が到来したと王に伝えさせる。王は喜び、家来を送って、王宮に迎える。王は宣言を守ることを約束する。医師は命と引き換えに、王自身と一族郎党を意のままにさせてほしいとたのみ、許しを得る。命令が実行されるかどうかためした後、王妃の素姓や状態をさぐり、彼女が王1人に満足していないことを悟り、ある女の顔に男のような動きがあるのをみとめる。9月中ごろ。全員の名前を知り、従わねば死刑にするといって全員を王のベッドの前に集める。先ず王に裸になるように命じる。次に男たち全員を裸にさせる。次に王妃を裸にし、足を開けて松明で女性であることを証明させ、女たち全員に同じことを命じる。その内に1人だけ足を開かぬ者があり、無理に開かすと股間に牧杖があらわれた。医師は王妃にその杖をにぎらせて王の前へ案内させる。そして「これが陛下のご覧になったとかげです」と報告。王は服も着せずに二人を焼き殺させ、その後間もなく王の病気は全快した。医師が使者たちに「帰国する時が来たので、王様に約束を果してもらいたい」と要求すると、王は名医の出発を悲しむが、大天使ミケーレの日に一同の前で約束を果すと答える。医師、父に化粧品を用意させ、美しく化粧して着飾った上に、医師のマントと帽子をかぶり王の前に出る。王が望みを言えというと、「messer Aluizi Salviati の娘 Calìdonia を正式の王妃にしていただきたい」と望み、同時に帽子とマントを脱ぐ。太陽のように輝く金髪の娘を見て王も満足、一同の見守る前で婚約し、結婚、娘の父を伯爵にしてやり、みんな長生きした。


第五話 ミラノに mona Ambrogia という産婆あり、その娘は Caterussa 美しく利発、母親その身を案じて連れ歩く。特に領主 messer Bernabo の奥方 madonna La Reina の所に出入りして madonna La Reina に可愛がられる。宮廷の騎士 messer Maffiolo は Caterussa にほれ、母親の留守に帰宅した Caterussa を自宅に誘拐して犯す。母、madonna La Reina に訴え、彼女から messer Bernabo の耳に入る。 messer Bernabo すぐ彼女を返さねば厳罰に処すると布告。 messer Maffiolo それに従わず、20日間十分楽しんで、 Caterussa に100フィオリーノを与えて母の許に帰らせる。「この金を持参金にすれば嫁入りできる」と娘にいう。母は大声で娘に「どこへ行っていた」と問う。娘「静かにしてよ。100フィオリーノくれたらこれでお嫁に行けるよ」というが、母叫びやめず。その声、 messer Bernabo 夫妻の耳に入る。 messer Bernabo 、2人を呼び犯人が messer Maffiolo だと知り、 messer Maffiolo に出頭させる。 messer Maffiolo が他のことを期待して出頭すると、 Caterussa の母娘がおり、弁解のため「満足させてやった」という。 messer Bernabo 、母娘に「満足か」と問う。2人「とんでもない」という。 messer Bernabo は messer Maffiolo に、きちんと片付ける気はないかと問う。 messer Maffiolo 「はい」と答え、母娘も同意。 messer Bernabo は messer Maffiolo の財産を5000フィオリーノと見積り、書記に messer Maffiolo は Caterussa と結婚するという書類と、 messer Maffiolo は Caterussa に6000フィオリーノの持参金を与えるという書類および、 Caterussa のために messer Maffiolo と結婚するという書類を作らせる。そして両者に「これで満足か」と問う。両者「はい」と答える。そこで messer Bernabo 「今度はわしが満足する番だ」と言い、 messer Maffiolo に「汝は我が領内で処女を犯し、布告に従わぬとは不届き千萬」と叱る。 messer Maffiolo 驚き、「獣欲のため、つい誤ちを犯しました」と弁解すれば、 messer Bernabo 「予も獣欲に従って、汝を処罰するぞ」と述べて messer Maffiolo を斬首し、 Caterussa を messer Maffiolo の持参金で高貴だが貧しい廷臣と結婚させた。こうして messer Bernabo は最高の裁きを行った。


第六話 善良な商人 Gasparri は30才の妻 madonna Onesta と13才の娘 Nanna を残して死ぬ。死ぬ時、2人同時に結婚すれば、2人に同額の持参金を与えるが、一方だけだと何も与えぬと遺言。母娘は養蚕業にはげみ立派に暮す。娘が絹一荷を運んで行く時、領主 Frignano伯 Lambrusco da Rodello の息子 Arduigi がこれにほれ、暴力で誘拐し犯したまま帰さない。人々がこれを見ていたので、母は親戚をつれて取り戻しに行く。伯、うまく親戚の者を退出させ、卑猥なことばと共に美貌の未亡人を床に投げ倒してこれを二度犯す。それから息子と Nanna とに出頭させる。息子は、 Nanna に穴を開けてやったので、その功績として絹一荷を取らせる。余は未亡人の壁龕(がん)を掘抜いたが、何も求めぬぞ」と述べて正義を擁護した(原文のママ)。女たちが帰宅すると、親戚の者たちは、毎日一所懸命に神の裁きが下るのを祈った。すると果たして、伯の親子と大勢の家来が狩に出た折、にわかに一天かき曇ったかと思うや、いずこからともなく一本の矢が飛来して伯に命中、次の矢が息子に命中、他の何人かも倒れた。こうして彼らは不慮の死をとげた。他方母娘は、子連れの独身男相手に母娘同時に結婚、仲良く楽しい日々を送ったという。


第七話 フィレンツェの若い美男子の騎士 messer Renaldo Bondalmonti は、処女、人妻、未亡人、尼僧らと大いに楽しむ。皆は彼が大家の出身なので我慢するが、親戚が小言を言い、彼に結婚せよとすすめる。 messer Renaldo Bondalmonti 、貧しいが正直な処女で m. Lanfranco Rucellai の娘 Ginevra を選び、人を介して求婚し、結婚した後、婚礼を上げる。婚礼の夜、 messer Renaldo Bondalmonti はかねて用意した甲胃を花嫁に着せ、抜身の剣と燭台を持たせた後、その姿のまま彼女と交わる。以後常に同じ武装した姿の Ginevra と交わる。やがて messer Renaldo Bondalmonti、 ペルージアのポデスタとなり半年間フィレンツェを留守にする。留守中に窓から色白の Ginevra を見たいやしい職人の Chimento が彼女に恋し、病いの床につく。事情を知った Chimento の母、教会で Ginevra に「汝のために人が死ぬから、汝の魂は地獄に落ちるぞよ」と脅かし、息子が夜中にしのび入ることを認めさせる。4ヶ月夫と離れていた Ginevra 久しぶりの男を迎えるために甲胃姿で抜身の剣と燭台を持ち、出入口を開けて Chimento を待つ。Chimento しのびこみ、甲胃姿の Ginevra を見てほうほうの態で逃げ戻る。様子を開いた Chimento の母、教会で Ginevra をおどかすと、 Ginevra 「私は待っていた。今夜来て下さい」と答える。再び Chimento はしのび込み、また武装した Ginevra におどろき、階段から落ちて逃げ戻る。 Chimento の老母は Ginevra に男がいると疑い、その邸にしのび込み、用事をしている Ginevra に会う。 Ginevra の方が「待っていたのに、馬鹿にされた」という。「あんたは甲胃姿の誰を邸内にかくまっているのか」と母が問うと、 Ginevra は自分だといい、その証拠に寝室からその姿で現われる。 Chimento の母は他の女はそんなことをしないものだと教え。絹の衣裳で息子を待つようにと頼む。その夜 Chimento は喜んでしのび入り Ginevra に接吻し、 Ginevra は始めて接吻を楽しみ、裸で交わる方が快楽が大きいことを悟る。やがて夫の messer Renaldo Bondalmonti が帰国、妻に「甲胃をつけよ」というと妻は拒否、夫が「どうしたのか」というと、ある若者がそれを望まなかったし、その方がずっと良いと分ったという。 messer Renaldo Bondalmonti 事情をさとる。 Ginevra が一切を夫に話すと、「もう甲胃はつけるな。すんだことはしゃあないのう。今後は他の女と同じようにやれ」と言った。そうして2人は裸で交わる。妻「甲胃をつけるより裸のままの方が良いって本当でしよう」と言うと夫は「その通りだ」と答えて2人はその後そうしたという。


第八話 ボローニャの大商人が絹織物を仕入れて手代 Ugolino Schiarini に売りに行かせる。Brugia で仲買人ら良いカモが来たと共謀し、 Zazara が信用させ、相棒に絹で包んだ犬の糞を麝(じゃ)香だと称して持って来させた。Zazara が品質を保証したので、 Ugolino は信用して1500フィオリーノ相当の絹織物を300フィオリーノの現金と1箱の絹で包んだ犬の糞と交換し、帰国の途中 Analdo(Hainaut) の伯爵の城にとめてもらう。夫の留守に伯爵夫人、 Ugolino との浮気を計画し、自分が一緒に寝たら何をくれるかともちかける。 Ugolino、 300フィオリーノと麝香の一部を約束し、2人は一夜を共にした。翌朝夫人は Ugolino を叩き起こして早々と出発させる。 Ugolino 、途中で一文なしになったことをなげいていると、昨夜寝た夫人の夫と出会う。夫の伯爵は若者からわけを聞いて1フランめぐむ。伯は城にもどり夫人に若者のことを話す(一部欠落)。夫人。麝香がほしくなり、300フィオリーノで麝香の一部を買って来てほしいと夫にねだる。夫は言う通りにして犬の糞の4分の1をもらってもどり夫人に、「そなたが昨夜売った品物は、今日そなたが買った麝香と同じ匂いがするのう」と述べる。夫人は悪事を悟られたと知り無言。他方 Ugolino は帰国、300フィオリーノと残りの犬の糞を差し出したが、さすがに主人は一目で品物を見抜き、 Ugolino に弁償させた。


第九話 ルッカの肉屋 Figliuccio は、Ognisanti の祭日(11月1日)のため10月のある日、鵞鳥(oche)の買付けにシエナに出かけ、Besso という詐欺師に鴨(oche selvatiche)を売りつけられて水に沈み、50リラを取られる。Besso を探しにシエナの市内に戻ると、monna Gese が泊めてやるというので信用し、用便のためにシャツとパンツだけで窓に登ると、monna Gese に突き落され、おどかされて逃げる。警吏を探していると泥棒に会い、その日葬式があった司教の墓をあばきに行くが、石棺のふたを上げて Figliuccio が中に入った途端、聖職者の一団が松明を持って入って来る。泥棒はふたをとじて逃亡。 Figliuccio は棺の中にとじこめられるが、やがてふたが開き、助祭の一人の足が入ってくる。 Figliuccio が足にしがみつくと一同は逃走し、助祭は気を失う。 Figliuccio は司教の宝石指輪、冠の類を持って逃げ出し、枯草干し場で夜を明かし、翌朝指輪を宝石商に売って衣類を買い、それを着てルッカに戻り、宝石類を売って家、土地、店を買い立派に暮らす。


第十話 ピサの聖ニコロ教会の近くに、毛皮商兼羊皮紙商 Renieri あり、その妻 madonna Nese は美貌でしかも貞節、信心深く毎日教会通いをする。同教会の3人の修道士 frate Zelone、 frate Anastagio、 frate Ghirardo は彼女に恋慕、ある日教会に参った夫人を卑猥なことばで誘惑、翌日も同じことをしたため、彼女教会行きをやめる。すると frate Anastagio と frate Ghirardo の2人わざわざ夫人の店をたずねて夫人に話しかける。夫がそれを見とがめ、夫人一切を話す。夫人は夫が Genova へ旅に出かけるからと3人を別々に招き、夫は人々に送られて旅出する。3人はそれぞれおくり物を用意して彼女を訪問、3人一緒に夕食を食べ、食後夫人は3人の着物を脱がせて入浴させ、自分もシュミーズ姿で洗ってやり、もし急に夫が戻って来たら皮なめし場へ入るように教える。そこへ夫が風向きの都合だと称して帰宅、3人がもぐりこんだ皮なめし場へ用意しておいた熱湯と石灰を流しこんで3人を殺す。よそ者の宿屋の門番に、店で死んだ修道士をアルノ川へ棄ててくればマントをやろうともちかける。門番が1人の死体を Ponte Nuovo からアルノ川に投げ込み戻って来ると、また死体があり、 Renieri が「戻って来たぜ」と言う。門番、棒で死体を叩きのめしてまたアルノ川に棄て、帰ってみると、再び死体があり、「また戻って来たぜ」と言われる。門番もう一度死体を運び、川に棄てて戻る途中、聖ドナート教会の管長 Andrea 神父が歩いているのを見て、また死体が戻る所だと勘違い、これを叩き殺してアルノ川に棄てる。 Renieri にこれを報告、 Renieri 、殺人があったと悟り、口止めし、その後沈黙を守って事件を隠しとおす。


第十一話 ルッカの San Paulino 通りに染物屋 Vanni あり。その妻 Margherita は若くて貞節、信心深く毎日 San Paulino 教会に通ううち、そこの Anfrione 神父が彼女に惚れ、卑猥なことばで誘う。Margherita 教会を変え San Piero Macaiuolo 教会に通うと prete Bonzera がこれを誘惑、第三の教会 Santa Maria Filicorbi でも Ronchetta 神父が同じことをする。Margherita 、夫に全てを話し、夫は妻に日曜の夜中に3人を招くように命じる。Margherita は3人に夕食をごちそうした後、身体を洗おうと提案、自分も裸になって身体を洗う。そこヘノックあり、Margherita は3人を黄、赤、青の染料入りの桶に入らせる。夫「何をしてる」、妻「今寝る所」、夫「じゃ寝ろ」という問答の後、妻は去り、夫は神父たちの入った桶のふたをしめてしまい、小僧たちにそこで一晩働かせる。翌朝友人と小僧に3人の教会の入口で番をさせ、6人の人夫に San Michele 広場まで桶を運ばせ、大勢の見物の前で桶をこわす。3人の神父染料にまみれた裸体で自分の教会へ逃げ戻り、 Vanni の友人らにつかまり、はやし立てられた。司教が近所の人の知らせで現場を見、3人を免職にして、ルッカから追放する。


第十二話 ペルージアの郊外に monna Legera という夫人あり、夫が死んだので大いに悲しみ、誰の慰めも効果なく、夜も墓前で泣き続ける。そのころ1人の盗賊が絞り首になり、ポデスタの命令でスポレートの騎士 ser Cola がこれを見張るが、喉がかわき、1マイル先に灯りをみとめ、飲み物をもらいに行き、 monna Legera が泣いているのを発見。 monna Legera 、全然耳を貸さぬが、「あなたの夫への愛にかけて」ということばでやっと ser Cola に気付き、パンとぷどう酒をくれた。 ser Cola 、相手が若くて美人なので食べながら話しかけると、意気投合し、2人は寝ようと約束。 ser Cola は絞首台に戻って死体があれば戻ってくると言って出かけると、死体が盗まれていた。ポデスタに殺されると思い、逃亡しようとして、 monna Legera に別れを告げに行くと、「死体の服は何色」と monna Legera がたずねる。「黒」「それじゃ名案があるわ、私の夫も黒服を着ていたから、それを吊っておけば」という。ひもも女が用意してくれたので、 ser Cola 大喜びで仕事にかかる。女自ら死体にひもをかけ、墓穴から引っぱり出し、また絞首台のはしごに登って亡夫の死体をぷら下げる。 ser Cola その時死体に前歯が2本欠けていたことを思い出すと、 monna Legera 「まかしとき(Lassa fare a me.)」と言って石を拾いはしごに登って夫の前歯を叩きくだいた。 ser Cola 、やっと安心し、2人は1晩中楽しんだ。その翌朝 ser Cola はその地を去ったが、それはスポレートに愛妻がおり monna Legera の気の変り様を見て、自分がすでに長く留守にしすぎていると感じたためであった。


第十三話 前の話の主人公がスポレートの故郷にもどり、妻 monna Mateida の貞節を疑い、病気のふりをして、 monna Mateida になついた雄鶏の羽根をむしり、かごに隠す。妻が戻ると羽根の抜けた鶏の姿の死神が来たから、早く告解師を呼んでくれと頼む。 monna Mateida ひどくめかして出発、 ser Cola それを見て怪しみ後をつける。 monna Mateida はノックもせずに Pisello 神父の家に入り、なれなれしく話しかけ、楽しもうと持ちかけるが、神父は前日3度もやったとことわる。2人の関係を知った ser Cola は、また死神が来たといい、告解のためやって来た神父に、 1)妻が神父にずい分ミサを挙げさせたこと、 2)妻がスープを作るのに、何度もこね棒を神父から借りたが、まだお返しできずにいること、 3)妻は自分を余りにも愛しているので自分より先に死にたがっていること、という3つの罪を告白。その間にかごの中の雄鶏を外へ出す。鶏が夫人に近づくと彼女は死神だと思い、「私じゃなくあいつを連れていけ」と言って逃げ回る。神父は死神の話を聞いていたので逃げ帰る。夫人は夫のそばへ逃げて来て、「私を死なせないで下さい。私の祈りで地獄から救い出してあげるから」と懇願、 ser Cola はそれに対して「そのお礼に死神を殺してやろう」と棒をつかんで雄鶏と夫人の双方をさんざん殴り、雄鶏を殺してしまう。夫人が何故自分を殴るかとたずねると、 ser Cola が「お前はすでに死神と一身同体になっていたからで、こうしておれはお前を救い出してやったのさ」が返答し、それ以上は何も言わなかったという。


第十四話 Pincaruolo はロバをつれて木を伐りに行き、ロバが死んだので皮をはぐと、その死体に烏がやって来る。その烏をひもでしばって旅に出る。農夫の家で泊めてもらい、農夫の妻がごちそうを隠すのを盗み見して、烏に鳴かせ、農夫にごちそうを発見させる。農夫に烏が予言者だと信じこませて、500フィオリーノと12頭の牛の代りに売る。ただし烏の頭に小便をかけると死ぬと教える。翌朝農夫の留守に神父が妻の許にやって来るが、烏の口をふさぐためその頭に小便をかけようと屋根の上に登ると、烏が神父の一物にかみつき、神父大声を上げたため農夫が帰宅して捕える。神父、300フィオリーノと1頭の馬と外とうとひき換えに烏を離してもらうが死ぬ。農夫金と馬を Pincaruolo に与え、牛を取りもどす。金と馬とを得た Pincaruolo はシャンパーニュのトロヤのあたりで足の早い Rondinello、耳の良い Sentimento、弓の名人 Dritto、息の強い Spassaの4人の家来をそれぞれ100フィオリーノでやとい、フィリッポ王の駆け足自慢の王女 Drugiana に命を賭けて挑戦、Rondinello が出場して断然リードするが眠ってしまう。Sentimento が様子をさぐり、Spassa の息で王女を逆戻りさせ、Dritto の矢で Rondinello を起こして競争に勝ち、 Pincaruolo は王女の婿となり、ミラノのTorre家の先祖となる。


第十五話 シエナの郊外の煉瓦焼き職人 Grillo は。シエナで公証人の仕事場を見て、自分も公証人となることにして、 ser Martino と名乗る。人々が相談に来て前金を払う。 Grillo は判事 messer Cassesepetri の許に行き前金の半分を渡して助言を得、裁判に勝ち、礼金も半分渡す。そこで評判が高まり注文ふえ、判事 messer Cassesepetri の協力で大成功する。その評判を聞いてヴィテルボから教皇庁の神学論争の判定を依頼される。1人でその場に出席して訳も分らずに、指を1本、2本、3本と出し、さらにパンを出したところ、神学者たちは適切な判定を得たと信じて感心する。最後に総督が手にコオロギ(grillo)をつかみ、それが何かと問い、あてなけれぱ殺す、という。 Grillo 窮地に陥り、「Grilloよ、Grilloよ、あの手にかかって汝は死んだ」と叫ぶ。そこで総督は彼を世界一の哲人とみとめ、大金と馬を与えるが、 Grillo は帰国すると農夫となり妻を娶って安楽に暮らす。


第十六話 コルトーナは良いぶどう酒の産地だが、若い大柄な美人のイザベッタは他人のぶどう園のぶどうを盗んでかせぐ。Tristano その女が自分のぶどうを盗むのを見て、「泥棒」と叫んでこれを襲い倒す。女抵抗せず身をまかすふりをして、最後の一瞬に相手を丘の上から蹴落とし、男に犯されそうになったとわめき散らしたため、男恥ずかしくて町に戻れずコルトーナの町から出奔した。


第十七話 フィレンツェの名家の娘 Checca delli Asini は未亡人となり、彼女同様名家出身の3人の未亡人らが住んでいる建物の三階に住む。Matteo Ruccelai が彼女に言い寄り、先ず畑で会うが人目がうるさくて失敗。Matteo の姉のいる修道院を同じ建物の未亡人らと訪問して、姉の手引きで忍びこんだ Matteo と密会するが、尻にわらをつけて戻ったため仲間に気付かれる。仲間怒って以後修道院行きを断わる。そこで Matteo は建物に忍びこむが、女たちに気付かれ、 Checca の部屋の窓にぶら下がり、九死に一生を得て助かったものの、危険は真平だとその後彼女との交際を断った。


第十八話 パリの泥棒 Cupin、一獲千金を夢見て、縛り首になった人々の着物を剥いでかせぐが、判事は前の死体が裸になっているのをあやしみ家来を派遣。Cupin、盗み終った直後に家来たちが来たので、自分も裸になり、ぶら下がってうまくごまかす。判事次回には、家来にもし盗まれていたら見張りを立てて自分に知らせよと命じ、自ら出かけ、家来に死体の足の裏を槍で突かせる。Cupinが足をひっこめたためつかまり、直ちに縛り首にされた。


第十九話 泥棒の Stoldo はろうそくを用いて夜中にかせぎ、銀の帯とボタンを身につけていた。ある小売女から獣脂のろうそくを買う時、当然払うべき6デナーロ以下しか払わずろうそくを持ち去ったため、女が「泥棒」と叫ぶ。夜警の騎士が彼を捕え、銀のボタンやバックルをつけているのをあやしみ長官に引渡し、長官きびしく彼を追求。Stoldo はついに白状し、泥棒の王として、冠をつけて縛り首にされた。


第二十話 ピサに泥棒 Zaccheo あり。小犬を飼い、錠前をあける道具を用いてかせぐ。小犬が先ず侵入して人の有無をさぐり、人がいると主人に合図。 Zaccheo は昼は石弓の店を出していた。ある夜、死刑執行人の部屋を荒らし石弓を盗む。執行人の家来、自分の石弓を盗まれたので石弓を買いに Zaccheo の店をたずね、自分の石弓を発見。家来の報告で主人は疑いを抱き、拷問した結果、 Zaccheo が白状。飼っていた小犬と一緒に縛り首にされた。


第二十一話 アスコリの人 Giuda はルッカ郊外の村でその土地第一の金持をしらべその畑にあらかじめ金めっきした石を隠しておく。高僧をよそおってその金持を訪れ、実物を探してやると称して、夜中に占星術を用いたふりをして月光の下で石を堀り出し、手数料400フィオリーノをせしめて逃走。翌朝石と知った金持、怒って気が狂い身投げする。次にシエナ郊外で今度はぶどう園に少量の金を埋め、硫黄を用いて金脈を発見してやると持主にもちかけ、炉を使って用意した金を採り出す。持主は Giuda に1000フィオリーノ支払うが、自分でやってみるとうまくいかず、ポデスタ(市長官)に訴えて Giuda を捕えてもらう。 Giuda は焼き殺される。


第二十二話 レカナート出身の Ghizello 、ルッカに現われ、ルッカで一番宝石のことが分る人を探し、Tomazino Cagnoli、 Pietro Pagani という2人の宝石商に会い、高価な指貫きを売ろうと持ちかける。値段折り合わないが、結局2人協同で750フィオリーノで買う話がまとまり、若い Pietro Pagani の方が買い取る瞬間に Ghizello はにせ物とすりかえ、変装して逃走。 Pietro Pagani はこの失敗で没落。

Ghizello はヴェネツィアヘ行きにせの金貨で店主の母親から純金等を購入する。息子はにせ金と気付き当局に訴えるが、その指令に従い何もなかったふりをする。 Ghizello、 1年以上後に同じ店を訪れて捕えられ、にせ金貨と共に焼き殺された。


第二十三話 フィレンツェの騎士 messer Bertoldo Aldimari は金持だがけちで、家族は餓えそうになり夜も灯りをつけず、召使の Rospo 月給わずか2分の1フィオリーノで働く。 messer Bertoldo Aldimari 老いて病気となるが、仲々医者にかからず、家族が無理に医者を呼んで手当させると虫が出る。 Rospo 夜中に薬を取りに出かけ、虫をろうそくと誤って持って行き、ろうそく売りの女に虫だと教えられ、腹を立ててその女と寝てしまう。薬が届かなくて messer Bertoldo Aldimari は死んだ。


第二十四話 フィレンツェ人 Valore はミラノに向う途中ルッカの宿で主人に井戸の水を取っておいてくれと頼む。あとで来たピサ人に「水はおれのものだ」と言ったため殴られるが、食事前の儀式だと信じて怒らない。翌朝出発後、途中水が沢山流れている所で人が顔をぶるんぶるんと洗っているのを見て羨しくなり、ルッカの宿まで戻って顔を洗い、主人に「よくやった」と誉めてもらう。

 ピストイアの人 Truglioは、ピストイアから6マイルの所へぶどうの収穫のために出かけ用事でピストイアに戻るが、あと1マイルの所で雨にあい、マントを取るために引き返してずぶ漏れになる。


第二十五話 ピサの貴夫人 madonna Bambacaia、 contessa di Montescudaio は、ある日3人の娘が牧場で行った論争の判定を依頼される。それは女にとって男根の材料は何であれば最高かという論争で、1人は鉄、もう1人は象牙、3人目は牡牛の腱であれば良いという。夫人は、鉄は冷たい、象牙は固い、3人の内では腱が最もましな解答だが、実際は豚の鼻だと最高だという判定を下した。


第二十六話 前話の伯爵夫人のもとに2人の女の夕食を賭けた論争が持ちこまれる。2人は男と女のどちらが喜びが大きいかを争い、三人は男はそのために金を払う(売春のことか)し、多くの危険をおかすので男の方が多く楽しむといい、他の1人は女はそのために両親の許を去って男の所にとつぎ、しかも金を与える(持参金)ので女の方が楽しみが大きいという。伯爵夫人、蜂蜜を買いにやらせ、それに指を入れてその指をなめさせ、口と指のどちらが甘いかという。口の方が甘いと答えると、同様に女の楽しみの方が大きいと判定する。


第二十七話 前話の伯爵夫人のもとに、若い男たちと女たちの論争が持ちこまれる。女たちは、満開のそら豆畑では女は男に対してノーと言えないものだと言い、男たちはそんな筈はあるまいという。伯爵夫人は、「私はいつでも満開のそら豆畑の中で生きている、つまり女というものはそれがどこであろうと、男に求められると断れないものだ」という判定を下す。


第二十八話 ジェノバの富裕な商人 messer Adorno の息子 Andriolo は怠け者で、大金持の未亡人 Cara に恋するが相手にされず、父に航海に出ると嘘をついて1000フィオリーノの資金を借り Cara の侍女と交渉する。もし Cara の足にくちづけできたら、1000フィオリーノを Cara に贈るので、その内25を侍女が取るように提案。 Cara はこれを断わり、侍女を身代りにして暗闇で口づけをさせ礼金を取る。 Andriolo は父から資金を借り、 Cara の太股に口づけできれば2000フィオリーノ払うといい、やはり侍女が身代りとなって礼を得る。そこで Cara は相手を見直し、 Andriolo が3000フィオリーノで本当に口づけを望んだ時には自身が許す。次に4000フィオリーノで一夜を共にしたいと Andriolo が申し出た時も承諾。父は息子が嘘をついていることを知りながら黙認して資金を出す。Cara との約束の日、親子で訪問する。すでに未亡人の方が熱を上げていて、 Andriolo はこれをじらす。すると Cara は持参金に15000フィオリーノと20000フィオリーノ相当の財産を与えようと約束し、この場に父 messer Adorno が現われて2人を婚約させてしまい、2人は結婚する。


第二十九話 ピストイアの Panciatichi 家の若者 Ricciardo 病気になり、Virgiliesi 家の未亡人 Antonia がその世話を頼まれる。 Antonia は転地療養のために Ricciardo を自分の領地へ連れて行く。 Ricciardo は Antonia に宝石をあずけ、旅の途中で求婚。 Antonia もその気になり、教会へ行って誓約し、2人は楽しむが、男は病気が治り欲望を満たすとピストイアに戻り、 Antonia との関係を自慢する。 Ricciardo の親戚の人々が Antonia の許に来てこの話を確かめ、 Ricciardo にもっと若い女と結婚させようとする。 Antonia これを聞き、司教を仲介にして約束を守らせようとするが、 Ricciardo は娼婦とは結婚せぬと言って彼女を棄てる。しかし若い女と結婚した Ricciardo は一文なしとなってピストイアを去る。若い妻は彼と同行せず、結局 Ricciardo は2度目の妻とも別れた。


第三十話 アレッツオ郊外の尼僧院長 madonna Bergina 尼僧たちを相手に欲望を充たす。17才の若者 Agnolo 、尼僧 sor Rosa にほれてある老婆から尼僧院長の行状を教えられる。そこで仲介の人を通して、14才の少女だというふれこみで尼僧院に入る。 Agnolo は院長に言われた通り張形を用いて彼女を満足させる。翌晩目指す Rosa と寝た時、張形を用いず、精液をまき散らす。Rosa は張形のきびの実がこぼれたと思って叫ぶ。院長灯をつけて真相を知り、自分も所望、他の尼僧たちも楽しむ。 Agnolo 15日間楽しみ何人かをはらませて去り、また時々訪間して楽しんだ。



第三十一話 ペルージァの銀行家兼商人 Pierosso は外国人傭兵相手の高利貸。妻の monna Soffia は時々夫を裏切って、売春で金をかせぐ。ドイツ人の隊長 messer Bernardo は monna Soffia にほれ仲介女を通して口説き、200フィオリーノ払うと申し出て、カーニバルの日曜の夜、夫が留守だから来るようにとの返事を得た。 messer Bernardo あまりの高値に困惑するが了解し、夫の Pierosso から200フィオリーノを借りる。 messer Bernardo 約束の夜、家来をつれて Soffia の許へ行き、家来の前で「あんたの夫から借りたものだ」と言って200フィオリーノを渡す。その後2人は大いに楽しむ。夫 Pierosso が戻ると、 messer Bernardo、 鯉とうなぎを持参して、例の家来と共に夫婦の許を訪ね、金を支払ったという。女はぶつぶつ言うが、messer Bernardo は亭主の方に恩を感じるという。女が「何故私に借りを感じないのか」というと、 messer Bernardo 、「私の故郷では夫に敬意を払うことにしているのだ。だから故郷の習慣を尊重するのだ」と述べて立去る。 Pierosso の妻はその後二度とだまされまいと用心した。


第三十二話 ジェノヴァ人 Salvestro del Fiasco は、有徳の未亡人 madonna Lionora Grimaldi に恋するが相手にされず、教会のミサに出席した彼女に抱きつきキスをして、人前で彼女と寝たといって侮辱する。madonna Lionora は答えず、最後に「きっと死んだ私と一緒だったのでしょう」と言う。 Salvestro 、相手に脈ありと勘違いしてその家に乗り込む。追いつめられた女、「少し待てば迎えにやる」と約束して帰らせた後で、侍女を通して相手の親族に抗議、 Salvestro にどんな事が起ってもかまわぬという了解を得た後、懇意の修道院から死んだばかりの若い女の死体を求めて、それを近所の女の家に横たえておく。その部屋へ madonna Lionora の侍女が明りをつけずに Salvestro を案内し、彼と同衾した後、男が眠ったのを確めて去る。目をさました Salvestro は死体を抱いて冷たいのに驚き、灯をともして死体を見出してショックを受け、その結果気を失い、ひどく発熱する。翌朝近所の女が Salvestro を見出して叫び声を出し、人々が集まる。 Salvestro の親族が来て事情を話して力づけるが、 Salvestro 恐怖のため神の審きだと信じ、罪を告白、息を引き取って女の死体と共に埋葬された。


第三十三話 フィレンツェの Buondelmonti 家の未亡人 monna Merdina は、信心に熱中していて frate Bellasta と仲良くなる。一方、 Lamberto Monaldi という若者は生地商人の徒弟で。親方の集金を持って店に戻る途中、メルカート・ヴェッキオで博打に手を出し、親方の金と自分の服を取られてしまい仕方なく frate Bellasta の教会にもぐりこみ、説教壇にひそむ。夜中に扉をノックして monna Merdina が frate Bellasta のためのごちそうを持って来る。 frate Bellasta 喜こんで彼女を迎え。教会の中でスルタンをバビロニヤに送り込む(隠語)。それを見た Lamberto がオルガンを鳴らしたので、男女は逃げ去り、 Lamberto はごちそうを食べ、女のマントと男のカッパを持って質屋へ行き、20フィオリーノを得て店へ戻る。翌朝 monna Merdina と frate Bellasta は再会し、互いに相手が持っていると信じた衣類が見当らぬので、長官に訴える。質屋で衣類が見つかり、 Lamberto が犯人とわかる。事情を察した Lamberto の父、大いに心配するが、長官の前に呼ばれた Lamberto は平気で monna Merdina と frate Bellasta とを呼ぱせる。 Lamberto、人々の前で、自分はスルタンをバビロニヤに送る所を伴奏したので贈り物にそれらの衣類をもらったのだという。 frate Bellasta は礼拝があると言って逃げ出し、 monna Merdina はマントは自分のものではないといい、結局 Lamberto は釈放され、2人は面目を失う。衣類を20フィオリーノで質請けした Lamberto の父はもうける。


第三十四話 ピサの Ghirardo di San Casciano という若者が Johanni Scarso の妻 monna Felice に恋して、 monna Felice のいとこが結婚する時、介添役の1人となり、Agliata 家の若者と共に monna Felice を迎えに行く。 monna Felice は若者を知らないので、 Ghirardo は彼が聾唖者だと紹介して、途中で monna Felice を口説き、密会の約束をする。結婚式のダンスの折に monna Felice は若者が聾唖者でないことを知らされ、 Ghirardo を呼んで嘘をとがめると、 Ghirardo は開き直り、あの若者を証人に立てて道中のことを言いふらすとおどかす。 monna Felice 、欲望のためもあって相手の意に添い幸福になった。


第三十五話 ルッカの郊外の村に Prete Pasquino という神父が教会で学校を開いていたが、7才の生徒の母 monna Moccina に恋して機会をうかがい、子供をいじめて脅かす。ある時 monna Moccina と2人きりになった機会に口説こうとしたが、女、怒り出し夫の Barsotto にそのことを告げる。女用心して Prete Pasquino の前に現われぬようにする。そこで Prete Pasquino は子供に.「もし殴られたくなかったら、お袋の下の毛を抜いて持って来い」と命じる。子供、言われた通りにしようとしてお袋の毛を抜こうとしてつかまり、事情を話す。夫婦は代りに雌豚の陰毛を紙に包んで持って行かせた。 Prete Pasquino はブロンドの毛を見て欣喜雀躍し、これに魔法をかけると、怪しや豚小屋から1頭の雌豚が飛び出して、教会へと突進し、 Prete Pasquino に跳びついた。 Prete Pasquino 、あわてて逃げ出すと、雌豚これを追い回す。父親この有様から事情を察し、窓にしがみついている Prete Pasquino の頭を剣で切りつけると、 Prete Pasquino 下に落ち足を折り、豚の下敷きとなって引き裂かれる。 Barsotto は村人と共に Prete Pasquino を救ってやるが、事情を打明けたので Prete Pasquino は村から追放され、哀れな豚は殺される。


第三十六話 ピサの郊外の Cuoza の村に prete Ruffaldo という神父がいた。その近くに信心深い母 Massaia を持った Testa という男があり、 Giglietta という娘と結婚。 prete Ruffaldo この女にほれて機会を狙う。Giglietta は夫の命令で信心深い姑と共に毎日教会へ参る。 prete Ruffaldo  は Giglietta に「神が狼から汝を守り給うように」と声をかけ3日間これを繰り返す。姑そのわけを prete Ruffaldo にたずねると、彼は Giglietta がまだ完全な洗礼を受けていないためだといい、望みなら追加の儀式を加えてやろうという。姑が息子と相談、儀式を受けることにする。 prete Ruffaldo は Giglietta と姑とにろうそくを持って夜中に教会に来させ、姑を入口の方に向ってひざまずかせておき、自分は Giglietta を聖隊席へ連れて行って犯す。 Giglietta が声を上げても姑は「我慢せよ」となだめる。 Giglietta は帰宅して夫と姑に prete Ruffaldo のしたことを話す。 Testa は親族と Giglietta。の親族を集めて prete Ruffaldo を襲い、これを殴り殺してしまう。


第三十七話 ミラノ人 Angiolino とフィレンツェ人 Nardo が会社を作り、教皇庁があったヴィテルボに会社員 DanielIo (Nardo の親戚)を派遣した。 DanielIo は盛大にミラノの本社から商品を取寄せて売りさばくが、贅沢をしてもうけた金を使い、全然本社に送金しない。本社は業をにやし、 Princivali という社員を派遣して帖簿をたしかめさせた。 DanielIo は土曜の夜に到着した Princivali を居酒屋でごちそうした後、外光の入らない部屋に閉じこめ、 Princivali が目を覚ますたびに「ヴィテルボの夜は長い、まだ夜だ」とだまして眠らせる。こうして丸8日間 Princivali を眠らせた後、外へ連れて出て、「今日は日曜だからもう一晩寝て明日帖簿を見よう」と提案。 Princivali は「もう一晩寝たら死んでしまう」と本社へ逃げ帰る。本社へ戻って6月6日という日付を知った時、 Princivali ははじめて8日間眠らされたことに気付く。本社は、 DanielIo の注文した1,000足の拍車の片方だけを送り、 DanielIo に仕返しをした。


第三十八話 ボローニャ郊外 Bruscola に Sparaleone 伯爵あり、砦を構えて悪事を働いていた。しかし朝夕にアヴェマリアを唱える。家来も悪漢ぞろい、領内に入った者に対して強盗や殺人を働かせる。悪魔は伯爵の魂を地獄へ運ぶために料理人となって住み込み、夜魂を運ぼうとすると、マリアが現われて、「アヴェマリアを唱えない日にせよ」と止める。やがて伯爵病気になる。神が天使を巡礼姿で領内に送る。家来これを捕えるが、「伯爵をイタリア一の金持にしてやろう」と言われて主人の許に案内する。伯爵、金持にせよと命じると、巡礼その前にコックを連れて来いといい、やって来たコックに正体を示せと命じる。コック、悪魔と変る。伯爵、悪魔を追い出すように巡礼に頼む。巡礼は悪魔に、伯爵とその家来が悪事を働いている森を焼いて地獄へ戻れと命じると、森は焼ける。驚く伯爵と家来の前で巡礼は天使に変り、ローマに行って罪を告白せよと命じる。伯爵が教皇の前で告白、教皇に罪を許されて、伯爵は幸福に死ぬことができた。


第三十九話 フランス王 Pepino の時代、フランスの貴族でプルゴーニュ伯の Tobbia と、ドイツの Ricciardo 伯は共に子供がなく、ローマで祈ると、男子が出生。前者が2才、後者が2才4ヶ月の時各々の父は子供を連れてローマヘお礼参りに向い、ルッカの宿で出会い、事情を語り合う。2人の幼児は瓜2つで仲良くなり、共にローマに行く。教皇、Tobbia の子を Amico、 Ricciardo 伯の子を Amelio と命名して、木の椀を贈る。その後両者は帰国、歳月が流れて、 Tobbia は Amico が30才の時に死ぬが、 Amelio を大事にせよと言い残す。Amico 反逆者によって城を追われ、 Amelio の許に逃れる。ところが Amelio も Toddia の死を聞いてブルゴーニュに向う途中だったので両者行き違いとなる。Amico 、パリに上る途中金持の宿屋の所に泊り、その娘と結婚、しかし1年後パリに向う。Amelio もパリに赴き、 Amico を探す。Amelio 、牧場で昼食中の騎士と決闘するが、勝負がつかず、やがて相手が Amico だと知り2入で王に仕えた。王は、 Amico を tezoriere 、 Amelio を scudiere d'oro という役につけるが、3年後に Amico は残して来た妻と会うため旅立つ。その際、「王女と嫉妬深い Arderigo に注意せよ」と言い置く。しかし Amelio 、王女と関係し、 Arderigo に心を許してその関係を語る。Arderigo は、王に Amelio と王女との関係を暴露する。2人は決闘することになるが、戻って来た Amico が代りに決闘を引き受け、 Amelio を自分の妻の許に送る。Amico の妻、 Amelio を夫だと信じて迎えるが、 Amelio ベッドに剣を置いて近よせず、他方決闘では、王妃が Amelio の身を案じる。Amico 、 Arderigo に、中傷を取り消せば召使になっても良いと提案するが、 Arderigo は「汝が王女の処女を奪った」と言いはる。王は勝てば王女を与えると約束、3時間の決闘の後、王女と無関係の Amico が勝利者となる。彼はすぐ家に戻り、 Amelio に結婚をすすめる。王は婿 Amelio に多くの領地と持参金を与えた。Amico は癩病にかかる。妻はこれを嫌い、殺害を計画。Amico は召使の手で Amelio の領地まで運んでもらうが、 Amelio の家来に追い払われる。仕方なくローマに向うが、ローマでも餓えそうになり、再び Amelio の領地を訪れる。 Amelio が宮殿の前にいる乞食にぶどう酒を与えさせたところ、乞食は Amelio の木の椀から、自分の木の椀に移す。家来からそれを聞き、 Amelio は乞食が Amico だと悟り、宮殿に招く。妻も同情し、1室で寝ていると、天使ガブリエロが Amico の前に現われ、 Amelio の2人の子を殺してその血で患部を洗えと命じる。Amico の口から無理にその話を聞き取った Amelio は愛児たちの首を切って、その血で Amico を洗うと病いは治り。また子供たちも生き返る。丁度その時、 Amico の妻は悪魔の手で締め殺される。その後2人の親友は仲良く生き、同じ時期に死んだという。


第四十話 ユダヤ人の大法律家 Adamo は久しくローマにいて、皇帝をはじめ大貴族たちが多数ローマに参るのを見て、「信仰を確信できればこれを受入れよう」と決心。聖ピエトロ教会をたずね、聖母マリアの絵を見てこれに詩(無名氏の lauda-ballata という形式の作品「マリアヘの問い」を借用)で質問するとマリアもこれに詩(これも借用詩)で返答。「その子はユダヤ人の待望する救世主なりや」「いかにして処女が子を生めるのか」などの問いに解答を得た Adamo は感謝してキリスト教に改宗した。


第四十一話 昔ローマに貴族 Ladislao あり、高貴の娘 Beatrice と結婚。長らく結婚生活を送った後、 Ladislao は元老院で口が臭いといわれ、妻に「10年来汝は一言も注意してくれなかった。もし注意してくれたら、匂い薬を使って恥をかかなかったのに」と言う。妻は、「男は皆そうだと思っていた」と答えた。夫は妻が男の息の匂いを知る程他の男を近づけていないことを知ったという。


第四十二話 古代ローマの貴族 Bruto の妻 Lucrezia は美しく貞潔。夫が市のため反逆者の討伐に出ている時、ローマの領主(王とは記されず) Tarquinio Superbo の息子 Larino、 その評判を聞き、美貌にほれ込み、夜中に Lucrezia の寝室に忍び込む。見はりの家来、相手が有力者の子なので何も言えず。Larino 力づくで意に従えようとするが夫人従わず、そこで先程の見張りを伴って入室、「汝とこの見張りを殺して、汝が密通していたことにする」と脅迫して意にそわせた。夫が戦に勝ったと聞くと Lucrezia 、すぐ夫を呼び戻し、喪服で彼を迎え、夫と自分の親戚を集める。Lucrezia 、夫を見て「娼婦の自分は高貴な夫に近よれぬ」と言う。夫「わけを言え」と問う。 Lucrezia は、 Larino の行為を語り、短刀で胸を刺して死ぬ。親戚たちすぐ武装して Tarquinio の宮殿を襲い、 Larino を殺し、その父をローマの領主の地位から追い払う。


第四十三話 古代ローマで火が燃え始め、井戸のように深くなり、次第に拡がる。占星術師は、武装した騎兵が1人自発的に飛びこまぬかぎり火は消えぬと予言。Seipione が武装して火に飛び込むと火は消えた。


第四十四話 ローマがアフリカの Aniballe によって包囲されていたころ、人々が「Aniballe を暗殺すべきだ」と相談する。暗殺を実行するため、 Formione は Aniballe が baroni と火を囲んでいる所にまぎれ込むが、 Aniballe がどれか分らず、最も偉そうな者を刺殺した。別人を殺したことを Aniballe から教えられた Formione は、「もし自分が失敗しても、1000人以上の人間が汝を暗殺しようと狙っているのだから、汝は逃れられまい。手が失敗したのだから、自分はこの手を罰する」といって火の中へ手を入れる。 Aniballe はローマ人の堅忍不抜に恐れをなして、軍隊を引き連れて立去った。


第四十五話 古代ローマにローマの宝を全て集めた Tarpea という宮殿あり、その鉄のドアを開けるとローマ中ひびきわたる。 Pompeo と Cezari の間で争いが生じ、 Pompeo は死に Cezari が君主となる。 Cezari まさかりで鍵を切り、 Tarpea を開く。貧しいローマ人 Metello は鍵を預っていたが、扉の開く音を聞き駆けつけて、剣を手に持ち「何者か」と問う。 Cezari 「止められると思うのか」、 Metello 「殺されても満足だ、歴史に残るのだから」、すると Cezari は「そんなもの残るものか」と言い、 Metello をその場から傷つけずに連れ去らせ、宝を取り自分のために使った。


第四十六話 古代のローマ人は女性の貞潔を望み、臼を作らせる。夫を裏切った後で、手をその上において嘘の誓いをすると自然に回り始めるものだった。若い女 Fiorina は、 Pierucco の妻だが、 Sodo という若者に恋して夫を裏切った。 Pierucco が妻を臼に連れて行こうとすると、 Fiorina は Sodo に狂人に化けて臼の前に出る自分にキスするように頼む。Sodo 言われた通りにすると、 Fiorina が臼の上に手を置き、「私は自分の肉体を夫と先程私を抱いてキスした狂人にしか近づけたことがない」と誓う。臼は動かず、 Fiorina の潔白が証明された。その後臼はその力を失った。


第四十七話 カエサル( G.Cezari )の時代のローマに Tulia という高貴の娘がおり、父は年を取る。 Tulia は Pompeo という貴族にとつぐがその Pompeo が死ぬ。 Tulia 、夫の遺体を積んだ馬車が、父の遺体の上を越えて行くべきだと考えて、父を殺して、その上を夫の葬儀の車に走らせた。(ここでセルカンビは、 Livius のセルウィウス・トゥッリウスに関する記述を一部読み誤ったものらしいとされている。)


第四十八話 ハドリアヌス帝がローマを支配したころ皇女 Isifile は淫奔で、皇帝に塔へとじこめられるが、時折抜け出てローマを歩く。大詩人で大魔術師の Virgilio 、5月のある日彼女を見そめ、求愛すると、彼女は上から引上げてやるからばらの花籠に乗って塔にのぼれという。 Virgilio が花籠に入ると。 Isifile 、塔の中ほどまで引き上げ、あとは宙吊りにして1晩と半日放置する。 Isifile 、皇帝に、 Virgilio が勝手に花寵に入ったと訴える。皇帝は Virgilio を投獄して死刑を宣告する。 Virgilio 処刑の寸前水の入った鉢を持って来させ、その中に顔をつけ、「 Virgilio に会いたければナポリヘ来い」と言い、悪霊に運ばれてナポリヘ去る。 Virgilio の復讐でローマでは火がつかなくなり、ローマ市民困る。Virgilio が皇帝に使いを送り、 Isifile の尻からしか火が取れないと教える。皇帝人民のため娘の尻を公開、人々に麻くずを尻につめそれに火をつけてやっと火を得た。 Isifile は恥をかく。


第四十九話 ローマで元老院が支配していたころ、元老院へ子供を連れていき、その意見を聞くことあり。 Simone はその子 Merlino を連れて会議に出る。重大な秘密を話し合い、もらした者の首を切るという誓約を交して帰宅したが、家では母 Cicogna が会議の内容を知りたがる。息子が「もらしたらお父さんが殺される」と断わると、母は許さず何度も息子を叩く。「殺す」とおどされた息子、「人に言うな」と口止めして、人口をふやすため男が妻を3人ずつ娶る決議がなされたと告げる。 Cicogna は女たちをけしかけ元老院に押しかける。 Cicogna ら女の代表が、「ローマの男たちは6分の1のローマ女を満足させることもできない。1人で3人の妻を娶るなどとはとんでもない。むしろ女に満足できるだけの人数の夫を持たせよ。その方がローマ市民の数はふえる」と陳情する。元老院おどろき、そんな話を何処で聞いたかと出所をたどると、 Merlino にたどりつく。召喚された Merlino 「母に叩かれて血が出たので口から出まかせを述べ、誰にも言わぬと約束させた」と答え、元老院もその説明に満足、女たちに「1人でも満足させられぬ以上、3人も娶らぬ」と返答、また今後呼ばれないものの出入りを禁じるが、 Merlino だけは出人りさせても大丈夫だとその出入りを許す。


第五十話 アレキサンダー大王はアリストテレスに師事。大王は madonna Orsina と結婚するが、王妃は多淫で、大王は1ケ月足らずで衰弱、アリストテレスが房事過多だと助言したので、大王はその忠告に従い体力を回復した。夫人は大王がかまわなくなったので、その訳を聞き、アリストテレスを怨み、若い侍女 Viola にアリストテレスを誘惑せよと命令する。アリストテレス、若い侍女の色香に迷う。 Viola はアリストテレスにキスだけを許し、翌日会おうと約束。王妃の命令で侍女は、自分の一族の女は、性交の前に相手の男に馬乗りになり、相手に10歩前進させる習慣があるとアリストテレスに告げる。王妃の使いに招かれた大王は、侍女の馬となって四つんばいで進んでいるアリストテレスを見て「アリストテレスよ、汝の知恵はどこにあるのか」と問う。アリストテレスは「私の知恵は Viola の尻の下にあります」と答えて逃走し、 Cosmal 王の領地に行く。 Cosmal 、彼を丁重にもてなす。アリストテレス、自分をかくまってくれれば Cosmal の名声を高めてやると約束。そしてアリストテレスは Cosmal に妻と家族(家来も含む)を絶対服従させれば名声が高まると教える。かくて Cosmal の名声高まる。

 他方王妃から事情を聞いた大王はアリストテレスが死んだと判断したが、アリストテレスの教えを守り節制したため、王妃は若者に女装させて身辺におきこれと浮気。大王、 Cosmal の高徳の噂を聞き、これを訪問。 Cosmal はアリストテレスの助言に従い、自分が一族郎党に絶対服従させていることを示すために、大王の前で服をぬがせる。大王、徳の秘密がアリストテレスの助言であると知り、再会を喜ぶ。大王が帰国して、宮廷中の人を裸にさせると、若者が女装していたことが露見し、大王は彼と王妃および侍女の Viola を殺す。アリストテレスは大王の許に復帰した。


附録『イル・ノヴェッリエーレ』の要約(第五十一話~第百話)へ


目次へ






©  百万遍 2019