セルカンビ3


附録『イル ノヴェッリエーレ』の要約(51~100)


米山  喜晟




第五十一話  Iesi の修道士がトスカーナに来て、ルッカの郊外 Borgo で fra Calandrino と名乗り、宿のお内儀 Narda と娘 Bontura に、「食事には雄鶏だけを出してくれ」などと注文し、自分が女性を遠ざけていることを強調して信用させる。翌日の Borgo の市では、「人殺しをした男女だけはほどこしをやめてくれ」といったので、人々我先にと施しをする。宿の娘は、顔のヴェール、お内儀の妹もバスタオルを差し出す。ところが fra Calandrino はその夜2人の売春婦を宿につれて来て、2人に技術を競争させて一晩中楽しんだ。その謝礼に、前日宿の娘や、お内儀の妹からもらった布類を与えてしまう。宿のお内儀、 fra Calandrino の正体を知り、彼を非難すると、 fra Calandrino 「もしあんたが私に施しをしたら2食分払ってもらう。もし施しをしなければ、私が払う」と賭けを挑む。日曜の説教で、「夫を裏切ったことのある御夫人だけは施しをし給うな」と述べたので、女たち我先にと施しをする。宿のお内儀も仕方なしに施しをする。 fra Calandrino 「あんたの負けだ」と言い、夕食をおごってもらう。その後お内儀は、説教の類を信用しなくなった。


第五十二話 ポルトガルの Sparaleone 王は無気力、怠情で、悪人を捕えない。グァスコーニュの貴婦人 doma Izabetta 伯爵夫人は巡礼に来て、悪人たちに暴行される。 doma Izabetta 、王の前に出て「復讐は望みませぬ。ただどうすれば陛下のように侮辱に平然と耐えられるのかを教えて下さい」と訴える。王はこのことばに目覚め、以後悪人を厳しく罰した。


第五十三話 カタロニアの海賊 messer Piero da Rabatta は残酷な盗賊で殺人者。まず mare di Lion で荒らし、ジェノヴァ人が復讐を計画していると聞き、アドリア海を荒らすが、ヴェネツィア人が復讐に乗出したので、 mare di Spagna に移る。そこで Santo Jacopo にまいるローマ人の船を捕える。戦利品がないのでこれを皆殺しにして憂さをはらす。彼らを2日間捕えておき、食べ物をほとんど与えず放置、それから裸にして身体をしばり、海にほおりこむ。最後のフランス人が「ああ主よ、少しの食べ物に対して飲み物が多すぎます」と祈ったので、 messer Piero このことぱが気に入り、彼を助け、小船でカスティリヤの近くまで送ってやった。


第五十四話 サルデーニャの Arborea Giudicato を Sismondo が治めていた時代、その家来に Gotifredi という若者あり、主君 Sismondo がほしがっている Castri の城を入手できると高言を吐く。その城は Passamonte のものだが、Passamonte は60才の高齢で、愚かな息子と16才の娘 Zuccarina がいた。 Sismondo は Gotifredi の高言を聞き、もし Castri 城が手に入ったら自分の娘を嫁にやって伯爵にしてやろうと約束。 Gotifredi は Sismondo の使節として、 Passamonte の城に乗り込む。 Passamonte は娘の  Zuccarina と相談する。 Zuccarina は Gotifredi の噂を耳にしてこれに恋し、美しく着飾って Gotifredi と会う。 Gotifredi は Sismondo からの申し出として、 Passamonte の娘 Zuccarina を、 Sismondo の息子 Dragonetto と結婚させたいと申し出る。 Zuccarina は交渉を自分にまかせてほしいと父に頼み、 Gotifredi と会い、その若さと美貌とに感激し、相手の希望に何でも従うと約束、 Gotifredi もその真情にほだされ城を奪いに来たことを打明ける。 Zuccarina は「自分を妻にしてくれるなら城と父の持物全てを棄てよう」と誓い、 Gotifredi から婚約指輪を得る。そして父に Sismondo の息子 Dragonetto と結婚するつもりだと嘘をつく。 Gotifredi は帰国して Sismondo に事情を話すが、 Zuccarina との約束のために Sismondo の娘を失うつもりはないと述べ、主君の息子 Dragonetto が Zuccarina を娶るようすすめる。 Gotifredi と Dragonetto とが軍勢を率いて城に近づくと、 Zuccarina が約束通り城門を開ける。侵入した軍勢が Passamonte を殺し、 Gotifredi も Zuccarina を海に連れて行って溺死させる。 Dragonetto は婚約者 Zuccarina が Gotifredi によって殺されたと聞き、 Zuccarina の頭の弱い兄を誘って待ち構え、戻って来た Gotifredi を捕えさせ、 Passamonte、 Zuccarina 、および婚約者( Zuccarina のこと)を殺された Dragonetto 自身への裏切を理由に、 Zuccarina の兄に Gotifredi を殺させた。


第五十五話 ダヴィデ王の時代で、息子ソロモンが8才のころのエルサレムに、カインの子孫でやはり Caino という富豪あり、そのとなりに貧しい Beniamin が住んでいた。Beniamin は小さい家に住み、入用ならその家を買ってくれと Caino に申し出るが主 Caino は欲しくないふりをしてその家をただで手に入れようと画策する。ある日 Caino は Beniamin に油100壷をあずけるが半分に本物の油、残りに水と油を半々ずつ入れる。 Caino しぱらくして Beniamin に油を商人に売るようにたのむ。商人革袋を持って買いに来て、水がまじっているのを発見。 Caino は Beniamin を非難。 Beniamin は指一本触れていないと主張。2人はダヴィデ王に訴える。予期しない事件に Beniamin は驚いて物言えず。ソロモンが王に自分にまかせてほしいと頼み、 Caino に何時油を壷に入れたかと問う。 Caino 「収穫の時」と答える。ソロモン、油の入ったのと、水の入ったのを較べて油かすを量らせる。油かすは水が入った方には半分しかない。だから最初から半分しか油がなかったことを知る。ソロモンは父王にそう報告、王は Caino が罪をみとめたので、その理由を間うと、「 Beniamin の小さな家がほしかったからです」との答えを得た。王は2軒あった Caino の邸宅の1つを Beniamin に与えて、 Caino を罰した。


第五十六話 ピサに Ranieri da San Casciano という若い金持の紳士あり、人に結婚をすすめられ、一所懸命処女を求め Jacopo delli Orlandi の娘 Brida という、父を失って母と子だけの娘を娶るが、初夜に彼女が尻を持ち上げたり動かしたりしたので処女ではなかったのではないか、と疑う。次の夜も同じ。そこで里帰りの日に、「2度とこの女を連れて来たら殺す」と宣言、花嫁はわけが分らぬ。仲人がわけを聞きにいくと、「尻を動かすから、売春婦以上だ」と罵る。母は娘の潔白を信じているのであわれみ、伯爵夫人 monna Barbacaia と相談。 monna Barbacaia 、ある日 Ranieri を招き、水に入ったことがなかったあひるの子が、自ら進んで水の中に入る所を見せ、それと同じく尻を動かすのは女の本性だと教えた。 Ranieri それを聞いて納得。 Brida と共に楽しむ。


第五十七話 ヴェネツィアに ser Piero Sovranso という大金持がいて、3人の娘を持っていた。先ず3人を結婚させて、6000ドゥカートずつの持参金を与える。 ser Piero 娘と婿たちに招待されつつ楽しく暮らしていたが、やがて仕事から引退、3人に各々1万ドゥカートを分配して1月毎に1人の家を回ることに決めるが2巡目に長女の所に戻ると歓迎されず、次女、三女も同じ。3巡目に長女宅へ行くと、長女ぶつぶついい、婿も店から戻らず、長女も昼食を取らず、 ser Piero 独りで食事。その夜は自宅で食事。翌朝次女宅へ行くと、そこでも追い出され、三女宅では夫婦で食事しているのに、食べ物がないと言われて帰宅。 ser Piero は昔金を貸した金持の貴族 ser Marco da Ca Balda の許へ行き5万ドゥカートを借り、3人の娘とその婿たちを招待、彼らにのぞけるようにして、自分の部屋の長持の中に5万ドゥカートをしまう所を娘たちに見せる。食事の時、「私を一番大事にしてくれた者に財産をやる」と約束、娘ら朝夕交代で父を食事に招く。遺産の分配に ser Marco らが立会う。1万8千ドゥカートを貧民に、6千を聖職者らに、2千を葬式の衣裳代等に贈る。婿たちが。遺言を実行した後に開けと記された長持を開くと、「他人のために我身を棄てる者はこの槌で打たれよ」と刻まれた槌が入っていた。


第五十八話 アヴィニョンの教皇庁に、 messer Tedici Sinibaldi という70才近い老裁判官がいたが、 madonna Gentile de'Guasconi に首ったけになり、1日に2度見に行かないと気が済まないほどで、町の評判になる。 madonna Gentile をまじえた女たち、彼を招き、どうして多くの若い人の間で人気の高い madonna Gentile にそんなに執心するのかと問う。彼は、「賢い人が彼女を好きになるのは当然だが、若い女はハウチワマメやニラを好んで食べる。ところがニラは葉っぱ( frondi )よりも球根の頭( Capo )の方がうまいのに彼女たちは葉っぱを好む。女たちの恋人の好みも同じだから、私だって好まれないとは限らない」と述べる。 madonna Gentile 他の女らと共に恥じて「生意気を許して下さい。あなたの愛は貴重です」と返答する。


第五十九話 シエナに Giorgio Aciai がいたが、その姉娘 Nicoloza は富裕な商人 Sandro と結婚する。Giorgio は幼い男児と2人の姉妹を残して死亡、 Sandro が2人を引き取る。妹 Ia Pippa は13才の時に教会で若い金持の商人 Cione に見初められ、その人と婚約する。Cione はその後商用で1年間旅に出た。姉が教会へ行く間妹を自宅に鍵をかけとじこめておく。Sandro 鍵を用いて帰宅、留守だと思った自宅に下着姿の義妹を発見、彼女にキスし、その処女を奪う。妹は義兄と度々楽しみ妊娠する。Sandro スキャンダルを心配、薬屋と相談すると、薬屋の叔父の医師 maestro Lessio が引受ける。医師のくれた粉末を燃やして煙を立てて顔をいぶすと黄色くなる。妹の顔を見て姉は驚き、医師 maestro Lessio を招く。医師 impregnatio molle (軟派性妊娠)という名前の病気だといい、適当な栄養を取らせ、7ケ月過ぎて出産の心配が生じると、姉に「不治で伝染性の病気だから、汝は近づくなかれ、女の方が伝染しやすいから危険だ」とおどし田舎へ転地させ、わけ知りの叔母に面倒を見させる。帰国した Cione も、病気の姿を見ると許嫁に近づかない。その内妹は子供を出産、貰い子に出す。やがて黄色い液を排出すると元の姿にもどる。Cione が再び結婚を望んだので、 maestro Lessio は陰部を引締める薬を処方し、妹娘は処女のふりをして Cione と結婚した。


第六十話 ナヴァッラ王 Astulfo は傲慢で人の忠告に耳を貸さず。教会で聖母をたたえる祈りの文句の意味を学者にたずね、「強き者をその座から降ろし、いやしき者を高める」という意味だと知り、この祈りを唱えることを禁止する。聖職者やむなく小声で唱えると、王は自分を侮辱する者は誰が殴っても罰しないという布告を出す。神はこれを許さず、天使を送る。ある五月の日、王は若い妻を得たので、これに子供を生ますための準備に温泉へ行く。王浴室に独りで入り、家来に見張りさせて何者も入れるなと命じる。ところが浴室に1人の巡礼が入って来る。王怒り、見張りを死刑に処すつもりで外へ出る。巡礼は先に浴室から出て、王の衣類を着る。家来ら彼を王と考えて王宮に連れ戻る。王は仕方なく巡礼の服を着て都に戻るが、途中で悪人たちがカルタをしているのに会い、横柄な口を利いて殴られる。王は憤慨して、全ての乞食を殺そうと決心。都に戻ると農夫が鍬で畑を耕している所を通り、王が口を利くと農夫ら怒る。王は全ての農夫を殺そうと思う。城の門番に話しかけると、門番ら王を殴る。王彼らを牢屋にほうりこもうと決心。宮殿に上ろうとして見張りに殴られ、家来の名を呼んでも誰も彼を王とはみとめない。王は窓から新しい王が王妃と一緒にいるのを見て、神に祈る。その時新しい王が、自分は天使だと正体を示した。そこで王は改心して、祈りのことばを許し、その後は善行に励んだ。


第六十一話 フィレンツェの貴族 Rossi 家の Michelosso は、 Medici 家出身の妻との間に、 Dianabella という娘を得た。彼女は14才で金持の貴族 Simone Buonde Imonti と結婚したが、散歩中に Giacchetto Rucellai という若者と知り合い、彼が気に入り、家のかげでキスを交わし、夫が留守の日曜の夜、宿屋であいびきレた。関係は何ケ月も続く。夫が人からその関係を聞き、怒って親戚に嘆く。彼ら Dianabella の父の Michelosso Rossi にそのことを告げる。 Michelosso Rossi 、兄の Guerrier de Rossi に相談。 Guerrier de Rossi 、名案を思いつき解決を引受ける。 Guerrier de Rossi は Rossi 家全員を招待、 Simone と Dianabella の夫婦も招く。 Guerrier de Rossi 演説し、「用心しないと戦さが起きる。弟 Michelosso の娘 Dianabella はよその男と快楽をむさぼったが、私のことばに従ってくれれば名誉が守れる」と言う。一同「何なりと言ってくれ」という。 Guerrier de Rossi 自分の妻に、「この売女( Puttana )、夫の名誉を汚しやがって」と衆人環視の中で叱りつける。続いて他の夫人たちに同じことばを用いて叱りつける。女達、恥ずかしそうに沈黙している。そこで Guerrier de Rossi は Dianabella に向い、「何故間男と関係したのか」と問う。 Dianabella 「健康に良いから」と返答。そこでら Guerrier de Rossi は夫の Simone に「 Dianabella のいうことももっともだ。彼女が健康なことは喜ぶべきだ。しかし今後は喉首を掻き切るぞとおどかして、別の薬を服用させよ」と助言し、夫も他の夫人たち全員が売女呼ばわりされたことで我慢した。


第六十二話 ダヴィデ王の時代に、マカベア人の女に Samuella という若い美人がいたが、 Merchizech という有徳の人と結婚して Adamo という子供を生んだ後に、 Abram という若者と浮気して Zaccaria という子供を生む。恋人が死に、夫の Merchizech も Adamo 15才の時に死んだ後 Samuella 自身も死ぬが、死の床で自分の浮気を告白し、「Abram の子は夫 Merchizech の財産を相続すべきではない」と遺言する。そこで Samuella の死後、2人の兄弟の相続問題が生じる。ダヴィデ王の審判に委ねられると、ソロモン(子供)が出席、自分に裁かせよといい、 Merchizech の墓を掘らせる。 Merchizech の遺体に向って2人の子供に弓を射らせ、心臓に近い所を射た方が息子だという。 Zaccaria 見事に心臓を射抜く。 Adamo 父の遺体を弓で射る位なら、遺産を弟の Zaccaria に与えるという。ソロモン、そのことばから Adamo を正統の子と判定。しかし Adamo は弟に援助することを約束した。


第六十三話 ダヴィデ王が治め、ソロモンが子供のころ、エルサレムに Divitia と Belluccia という2人の娼婦あり、 Divitia はある道楽者相手に、 Belluccia はある聖職者を相手に子を生む。彼女らはある日子供の父達を相手に酒宴を聞き、2人共酔いつぶれて寝こむ。Belluccia 目を覚ますと子供を押しつぶしており、あわてて Divitia の子を盗む。娼婦達はダヴィデ王の裁きを願う。ソロモンが剣で子供を二等分せよと命じる。Belluccia がそれに従おうとすると、Divitia はむしろ生きたまま相手に与えるという。そこで Divitia こそ真の母親だと判明する。


第六十四話 コンスタンチノープルの皇帝 Cesari Ardito の息子 Ottaviano 、何度か家出を企てた後14才の時についに家出して Borra と名乗り、ジェノヴァについて賭博にふける。卑しい身なりで3年以上をすごしたある日、賭博に勝ち、立派な鷹を1羽買う。ジェノヴァの貴族 Spinetta da Fiesco がこれを見て欲しがり、売れという。 Borra は贈り物にならするが売る気はないという。 Spinetta da Fiesco これを聞いて、 Borra の頬を打つ。頬から血が出た上、鷹も死ぬ。Borra 本当ならこんな目に会わぬのにと突然父を思い出し、船で故郷に戻る。友人に皇帝の spenditore (調達係)を勤める Tedici を呼んでもらう。Tedici 彼を皇太子 Ottaviano だと見分ける。服を着換えさせて皇帝の意向を伺う。皇帝喜び、 Ottaviano 皇帝の前に身を投げ出す。皇帝が死に、 Ottaviano は皇帝の後を継ぐ。新皇帝への使節として、ジェノヴァから例の Spinetta da Fiesco が来る。皇帝は彼に「誰かを侮辱した覚えはないか」と問い、 Spinetta da Fiesco 鷹を殺したことを思い出し、非礼を詫びる。皇帝そのおかげで帰国できたのだといって Spinetta da Fiesco を許す。以後ジェノヴァでは、皇帝かもしれないので、全ての人に messere をつけて呼んだ。


第六十五話 東南の地域にタタール人の大領主 il Gran Cane (カーン)がいたころ、 il Veglio della Montagna という領主がいて、山の入口に住み、平野の端に砦をきずく。人工的に蜜、乳(砂糖入り)、ぶどう酒を川を流して、黄金の宮殿をきずき、宮殿には14~15才の若者ばかりを集めて快楽にふけらせ、老人は中に入れず、司教に説教させ、 il Veglio のために死ぬ者は天国へ行けると信じさせる。丈夫な若者を麻薬で眠らせ、その宮殿に連れ込んで好きなだけの快楽にふけりながら暮させる。何日か後にもう一度薬で眠らせ城外へ運び出す。若者目を覚まして憂欝になる。そこへ il Veglio の使いが訪れて憂欝の理由を聞く。若者が天国を失ったことを訴えると、戻りたければ il Veglio の命に従えと教える。そして「汝の隣人を殺せ」と命じ、暗殺すべき相手を指定して殺させる。この手段で多くの町を支配、 il Gran Cane が来る前60日余りで近在の領主を全て暗殺していた。 il Gran Cane は馬でけちらして、 il Veglio を殺し、その楽園をも破壊してしまった。


第六十六話 ルッカの町に Bernardo Busderla という神父がいたが、実力ではなく友情によって聖ジュスト教会の支配を委ねられた。毎日ミサのぶどう酒を飲んでいた。隣人に、 Paulo Sermarchesi という少し足りない男がいたので、これを寺男として使うが、 Bernardo Busderla 神父はしばしば給金をごまかす。 Paulo Sermarchesi こらしめてやろうと、ミサのぶどう酒入れに、モルタルと酢を入れる。 Bernardo Busderla ミサの折に常のごとく、ぐっと飲み、味がおかしいので Paulo Sermarchesi に言うと、「それは全部飲まなきゃいかん」と言われて残りも全部飲まされ、ひどい目に会う。


第六十七話 (前話のつづき)聖ジュスト教会の Bernardo Busderla 神父の後任に Biagio 神父来る。大変傲慢で、前任者よりさらに貧欲。やはり寺男の代りに前話の Paulo Sermarchesi をやとう。ミサの時、 Biagio 神父は Paulo Sermarchesi に、「丁寧に(dilicato)やれ」と注意する。 Paulo Sermarchesi それはどういう意味かと思案した挙句、ミサ用のぶどう酒入れに油を入れておく。 Biagio 神父ミサの折に飲むと味が変なので「良くふいたか」と問い、明りをつけて確かめた。 Paulo Sermarchesi も「お前はミサもまともにできぬのか」とやり返し、2人で悪態をつき合い、 Biagio 神父油が入っていたことを悟る。「残りも飲め」と強いられて逃げ出し、再び同教会には足をふみ入れようとしなかった。


第六十八話 パリに商人 Gualtieri あり、その息子は Giannino という。Giannino が40才に達すると、父親から全財産を受け取った。 Giannino は、 Marietta という女と結婚して、 Pippo という息子を得た。その子が6才になったころ、息子夫妻はすでに財産を引き渡し、稼ぐことのなくなった老人をいじめており、天井裏の粗末なベッドに寝かせて、女中に食物を運ばせていた。しかも時々食事が抜けることあり。Gualtieri は女中に「息子は今パリにいるのか」と聞く。「はい」「あいつは全然わしの所へ来ない。3日に1度は馬を見に行くというのに。1度来てくれるように言ってくれ」、祖父は孫の前でこういう。女中は Giannino にそのことばを伝える。妻の Marietta は会うのに反対するが、さすがに Giannino は父と会う。 Gualtieri 「わしは寒くて死にそうだ、毛皮をおくれ」と言う。 Giannino 毛皮を買い、息子に、「おじいさんの所へ持って行け」と渡す。 Pippo はこれを半分に切り、一方を祖父に渡し、他方を金庫に収める。Giannino 父に毛皮の具合をたずね、小さすぎると聞いて不審に思い、息子の仕業を知る。その理由を問うと、 Pippo いわく、「お父さんが年を取った時、屋根裏に住んでもらい、寒いと言ったら与えるためです」。父親は自分が父にしたと同じ待遇を息子から与えられることを悟り、良き模範を示そうと決心して父を大切にし、父が死ぬまで、一緒に食事をした。


第六十九話 フィレンツェに Strossi 家出身の若い未亡人がいて、名前を madonna Orsarella と言った。夫を失った後、実家に戻り、弟 Matteosso Strossi とその妻 Anna と同居していた。Matteosso はソーセージを好み、肉屋で1パルモ(18センチ)以上のものを大量に買って吊り下げておき毎日1個ずつ食べた。 madonna Orsarella はソーセージを見て夫の道具を思い出し、代用に使う。弟はソーセージの減り方がはげしいのに疑問を抱き、数をかぞえる。24個で半月もたず、女中がまた買うようにと言ってくる。そこでソーセージを見張っていると、 madonna Orsarella が2個取り寝室に運ぶ。 Matteosso は madonna Orsarella が食べるのかと思うが、火がないので不審に思い中をのぞいて秘密を知る。夜食卓についた時、 Matteosso は姉を侮辱するために、女中に向って「姉さんが歯のない口で食べていたので、ソーセージが減ったのだよ」と言う。すると姉は「ソーセージのおかげで、お前の(家長としての)名誉は保たれているのよ。ソーセージをみとめるか、私を嫁にやっておくれ」と述べた。 Matteosso は彼女に夫を持たせたが、その後腹が立つのでソーセージを買うことをやめたという。


第七十話 ロベルト王がナポリに存命中のころ、ダンテはフィレンツェから追放されて、スカーラ家の領主たちやマントヴァの領主そして特にルッカの領主メッセル・カストルッチオ・カストラカーニなどの宮廷で世話になり、その名声がとどろいた。ロベルト王はその知恵と徳を知るため、ルッカ公に手紙を書き、ダンテをナポリに招く。ダンテはナポリヘ行くが見すぼらしい身なりをしていた。丁度食事の時間に到着したので食卓に招かれるが、末席につかされ、何の配慮も払われない。ダンテ、食事をすますとすぐ出発し、アンコーナからトスカーナに向う。王はダンテがどの人かとたずね。すでに出発したと知り、非礼があったと悟り、使いを送って後を追わせる。使いはアンコーナでダンテに追いつき、王の手紙を渡す。ダンテ、ナポリに引返し、今度は立派な服装で王の前に現われた。王はとなりの筆頭の席に座らせる。ダンテは肉を服装の胸部の布にこすりつけ、ぶどう酒も服にかける。王や貴族、驚いて、「ずい分だらしのない人だ」と評し、王そのわけを聞く。ダンテは、「今度のごちそうは、布(衣裳)に対して出されたものだから、布に与えているのです」と答えた。王はうなずき、召使に替りの服を持って来させて食事を取る。食後王は特にダンテとねんごろに語り合い、噂以上の賢人だとみとめて、宮廷にとどめた。


第七十一話 ナポリのロベルト王はダンテの忍耐力をためそうとして、道化師たちにことばだけでダンテを怒らせよと命じた。立派な服を着せられた道化師たちは王の前でダンテに質間。第一の道化師「この男がアルノ川を逆流させて、 Montemurlo で魚を獲れるようにできる程賢いとは思えない」、第二の道化師「黒い牝鶏が白い卵を生むのは何故か」、第三の道化師「尻の丸いロバが、四角い糞をするのは何故か」、第四の道化師「汝の名声は塔の上から投げた羽根のようだ。あるものは高く飛ぶが、他のものは低く落ちる。ところで一体惑星は何をするのか」、第五の道化師「どうすれば神と地獄に同時に仕えられるか」、第六の道化師「もし汝が賢い人なら、何故汝は名誉を得ないでそんなにみじめに生きているのか」などと口々に問う。ダンテ、最初返事をせず。王「何故答えないのか」と催促する。ダンテ「彼らは陛下に話していたので、返事をおまかせしましたが、そうせよとおっしやるなら答えましょう」と言い、「マリーナ川が逆流した時に、大きな魚がかかった(ロベルト王が捕虜になったことを皮肉る)。すべての君主は、たとえロベルト王のように偉大でも鷲の卵(皇帝の家来)だと自覚すべきだ。丸いものはどこも偏らぬ。不正な宮廷とは四角いものでその主人は君主ではなくてロバだ。(第四の道化師に)汝のごとき者が、惑星のような高い事物のことを聞いても分らぬし、汝と行いを共にしている者にも分るまい。頭をローマ(教皇)領におき、尻をナポリ領(淫蕩な習俗で知られる)におけば、同時に天国と地獄に行けよう。最後に、自分が汝らと同じ matti (狂人)を見つけていたら、もっと良い服を着ているだろう。何故なら狂人には道化師よりも正気( senno )の方がより貴重だから。」と述べる。王、ダンテがそれぞれの問いに見事に答えたのに感心し、自分が大勢の道化師を養っていることの愚かさを悟った。


第七十二話 ルッカの郊外の Bargecchia という村に、 Salvestro という床屋がいて、1度ひげをあたってもらえば、1年間はもつという評判を得ていた。ある7月の土曜日、騎士で Montemagno の小領主( cattano )の messer Bernardino という人物がひげをそってもらいに行く。 Salvestro は首に剃刀をあてながら messer Bernardino の Schiva の地所の倒壊した家の最も太い梁(はり)をほしい、という。 messer Bernardino が「ああ上げるよ」と答えると、床屋はさらに次々と続けて、小さな梁、きれいな岩石、台石、石材の類をほしがる。messer Bernardino いつもあっさりと承諾し、最後に「 Salvestro よ、私の持っている物は全部君の物だよ。行って持って行きな」とすすめる。ひげそりが済むと、床屋「料金は12デナーロだが、贈り物をくれるというから、8デナーロにしておこう」という。messer Bernardino 「そんなにサービスしてよく一家が養えるな。無理しなさんな」といいながら、9デナーロおいていく。翌日 Salvestro は村人たち、駄獣、妻その他を率いて、 messer Bernardino が約束した品を取りに行くが、 messer Bernardino の支配人は何も聞いていないと相手にせず。 Salvestro は支配人をつれて messer Bernardino のいる広場へ出かけ、彼と何人かの騎士がいるのに出会う。 messer Bernardino 「記憶にない」という。 Salvestro がそんな筈はないと粘ると、「何時約束した」と聞く。 Salvestro が「剃刀をあてている時」と答えると、 messer Bernardino いわく「今君が剃刀をあてていないので、あげる気はない」という。 Salvestro が「3デナーロ負けてやった」というと、 messer Bernardino 「今度いった時15デナーロ払ってやるよ」と約束し町再び行くことがなかったという。


第七十三話 プラートの城壁内に金持の職人(lavoratore) Lomoro がいたが、息子 Fruozino を甘やかしたため、 Fruozino は気前良くふるまい、取巻きが多い。息子、自分には友人が50人以上おり、選り好みしなければ100人以上だと父に自慢。父は、自分は50年以上かかってただ独りの友 compare Taddeo を得ただけだと語る。そして Fruozino に、豚を殺して袋に入れ、殺人をしたので Marina 川へ運ぶのを手伝ってくれと頼むように忠告。 Fruozino 父の言う通りに試みると、友人ら皆ことわる。次に父の友人 compare Taddeo に頼むとすぐ引受けてくれる。夜、 Fruozino の友人らが来て、 Fruozino がもう付き合わぬというと、ポデスタに密告するとおどかして、もてなしを強要。 Fruozino ますます彼らの正体を知り、父のみに従おうと決心した。


第七十四話 '48年のペストの時、若いルッカ人 Turello ピサヘ行き、ポンテ・ヴェッキオの近くで、 Gambacorti 家の借家を借りて鉄工の店を開く。やがてピサにもペストがはやり始め、 Turello は病気に備えて女中を雇おうと考え、ポンテ・ヴェッキオのロッジァで1人の女中に出会い、これを年俸40リラで雇う。10リラが相場なので、人々驚く。女中はその他の条件として、小麦のふすま、織物の麻の残り、宴会に用いた鶏の羽根と内臓をほしがる。 Turello は承諾。ただ女中が料理の後に残る灰を欲しがると彼は拒否した。家主の Francesco Gambacorti 、高い賃金と、他の望みを承諾しながら、灰のみ断った理由をたずねる。 Turello は「ペストがはやると1日に40ソルド(=2リラ)かかる。だから40リラ程度のお金は20日分でしかない。私はパンを買うので、ふすまは出ないし、織物の原料も買わない。たとえ彼女自身が自分でそれを買って織物をしても、私の用事さえしてくれれば別に構わぬ。宴会をする場合、すでに料理済みの鶏を買うから羽根や内臓は残らない。しかし火なしでは暮せず、女中は灰を得るために燃料を多く使うだろう。だから灰は与えないのだ」と答えた。人々は以後 Turello を馬鹿にしなくなった。


第七十五話 ナポリのロベルト王がプラートの領主を兼ねていたころのプラートで Guassalotti 家出身の madonna Cicogna は28才の生地の小売商 Arrigo の妻だが、ひどい中傷家で、非常に鼻が敏感で、客たちを酷評するが、名家の出身なので大目に見ていた。公証人に「インキ臭い」とか、薬屋に「からしのソース臭い」、織物屋に「油臭い」、貴族に「貧民の匂いがする」等々と悪口を言うので、一同怒り、若者たちは困惑。ある薬屋の若者が、「今度の日曜日に我々を侮辱したら復讐しよう」と提案、そこで侮辱を受け、他の女がとめても madonna Cicogna 得意になって侮辱し続けたので、罰することにきめる。azafetida という悪臭を放つ物質の入った袋を用意し、 madonna Cicogna の仕立屋に彼女の服にぬいつけさせ、座ると匂いがもれ、立つと空気が入るように仕かけておく。次の日曜日、若者は仲間と共に、この夫人が弟の結婚式の接待役をしている所に出かける。 madonna Cicogna 大いに悪臭を放ち、人々を困らせ、花嫁も卒倒しそうになる。薬屋あとで服を送らせてそれを手に入れ、代りに少量の練り薬を送ってやる。 madonna Cicogna その後他人の匂いを批評しなくなる。


第七十六話 Aresso の町に messer Alberico da Barbiano の軍隊が攻め込み略奪を働いた時、その軍隊は2000人以上の女に暴行を加えて、ある一画の婦人たちを捕虜にした。その中に Bostoli 家出身の Donato da Pietramala の妻で Appollonia という22才の美人あり。彼女は兵隊相手の快楽を楽しみ、快楽を貯えておこうと1日に50人以上も相手にした。やがて人質解放の協定が成立して身代金によって解放されると、夫に憂欝な顔を見せる。夫がそのわけを間うと、「私は不本意にあんな目に会った」という。夫「汝の罪ではないから元気を出せ」と慰める。そこで妻は神父に罪かどうかをたすねる。神父いわく「汝の罪ではないが。貯えた分だけは悔悛せよ、アヴェマリアを唱えよ」。そこで夫人は罪にもならず、世間からも指弾されずに欲求を充たせたことを神に感謝した。


第七十七話 パルマで Rossi 家が治めていたころ、 Palavigini 家の Mucchietto が Stoltarella という娘と結婚。盛大な結婚式の後、新郎新婦は2人きりで寝室に残されると、飲食を楽しむ。その時花嫁が「先に起きるか口を利いた方が皿を洗おう」と提案、花婿「今週一杯皿洗いをしよう」と受ける。2人は口を利かずに交わり、翌朝遅くまで寝ている。花婿の親族呼ぶが応答なし。午後になっても出て来ないので人々集まり心配する。梯子にのぼり窓を割って中に入る。皆あとに続いて入るが、2人は見ている。一同寝室で2人を見つける。母が話しかけても返事なし。親たち、病気だと思って泣き悲しむ。夕方まで2人口利かず。しかし Mucchietto すきを見て友人に「遺言を作るための質問をしてくれ」とささやく。友人、一同の前で、ガウンを誰にやるかなど次々に質問。 Mucchietto は首を上下左右にふって答える。その遺言が気に入らず、花嫁思わず異議をはさむ。夫は「お前が皿を洗え」と言った。


第七十八話 messer Iohanni dell' Agnello が支配していたころのサンミニアートに、 Vespa という職人の妻に Dolciata という26才の女がいたが、1入の乳飲み子を持ちながら、 Cassutoro という男と姦通する。夫が警備に出て留守の晩、 Cassutoro が窓からしのび入り、戸口をねずみのように引っ掻くと中へ入れてやっていた。何ケ月もたったある日、夫警備の予定を変更して帰宅。妻ぶつぶついう。 Cassutoro は夫が留守と思ってしのびこみ、ガリガリ引っ掻く。女、子供をひねって泣かせ、「乳をやっても泣かないから、卵を煮て来る」と起き出し、男を入れ、夫と同じふとんにもぐり込ませて交わる。間男の精液が寝ている夫の口の中にたれると、夫は卵と思ってこれを飲む。妻可笑しがり、夫にスープをやり、自分はお肉を食べているのだという。夫は気付かずに眠り続ける。


第七十九話 ルッカがピサから解放された時(1369年)から数ケ月後、作者が叔父と共に商品を仕入れにフィレンツェヘ行く。Lucca の絹の反物を運ぼうと考えて包みをかつぐ。ルッカに住むプラートの少年と3人で出発。槍、剣、ナイフなどで武装。カーニバル前の火曜日のことで、ルッカから1マイルの Casa delli Aranci を通る時、身なり悪く、槍とナイフを持った歩兵が出現、ピストイアヘ行きたいので同行させてほしい、12年間この地方にいないので様子が分らぬという。そこで仲間に加える。Colli delle Donne という場所にさしかかると道悪し。歩兵は気付かぬ内に我々を新しい道に導き、森に囲まれた草地に出る。作者裏切られたと気付き、槍を兵士の胸にあて。叔父と少年に彼の武器を取り上げさせ、「人が現われたらお前を殺す」といって、荷物をかつがせ草地から出、槍を突きつけながら.サンジミニアーノに向い、夕方そこにつく。友人喜んでとめてくれる。逃げぬように見張って、翌日もその兵士を伴い、道案内と共に出発。Parasacco の宿屋につくと、その主人がその男を見たことがあるといい、12年間おらぬというのは嘘とわかる。一行フィレンツェにつく。フィレンツェにいる間に、 Pescia の代官(Vicari)が山賊を処刑したという噂を聞く。帰路 Parasacco で処刑された7人の内に例の兵士がまじっているのを見る。すでに50人以上の犠牲者が出ていたという。


第八十話 ルッカが Valdinievole を支配していたころ、 Pescia の町にピサの名門 Orlandi 家出身で、地主 Rustico と結婚した monna Fiorita という婦人がいたが、夫がおとなしいのでつけ上り、誰かれなく侮辱する。ペッシアヘ、ルッカの Rosimperi 家の娘が嫁入りしたのでルッカ市民たちが同行、その中に冗談の名人で万能の達人の医学生 Federigo がまじっていた。ルッカの花嫁を見た monna Fiorita「ルッカ女は尻が4つに割れているそうな」とさっそくからかう。他の女たちが止めても「フィレンツェ人にでも自分の考えを述べた私が、ルッカ人ごときにどうして黙っていようか」という。医学生 Federigo これを聞き、仲間に自分にまかせておけという。医学生は修道士の畑でカイソウを採り、薬屋で石の粉(身体にくっっく)を買い、カイソウのしぼり汁と石粉をまぜ、花嫁にその薬を塗った便器を与えて(途中一部略)、 monnna Fiorita にその上へ掛けさせるよう、その後 monnna Fiorita が尻がかゆいといったら、カイソウをつぶした布で臀部をこすってやるように指示。夕食後ダンスをしていてトイレに行きたくなった monnna Fiorita を、花嫁は自室に案内して、用意した便器に座らせる。 monnna Fiorita 尻がかゆくなり、花嫁に見せる。花嫁カイソウの汁のしみこんだ布でこすったのでますますかゆくなる。翌朝 Federico が治療してやろうと申し出る。ただし、1)花嫁を妹だと考えて悪口を言わぬこと、2) Federico がベッシャにいる間は彼の愛人となることの2条件をつける。その後、塗り薬で治してやり、続いて彼女と寝る。 monnna Fiorita その後おとなしくなる。


第八十一話 ピストイアがルッカの支配下にあった頃(1306年)、ピストイアの布地商人 Castagna は、聖ジュリアーノを信仰していたが、ヴェローナヘ布地を仕入れに行く。高額の小切手( 1ettera )を持参して、下男と2人で馬で出発する。サンブーカで3人の山賊に会う。3人は同行しようと申し出、信心深そうなふりをして Castagna を信用させ、ボローニャの司教の居城の近くで、突然馬をとめ「動くな」と命令。下男のみ逃亡するが、 Castagna はパンツとシャツだけで雪の中にほおり出される。震えながら Castello de1 Vescovo につくが、城門がしまっている。城壁の外に突出部あり、屋根があって、少しわらがあるのでそこにねる。司教の妾 Divisia はその夜司教を迎えるため風呂を焚いて待っていたが、司教が急に旅に出たため、女中と入浴する。司教が秘密に出入りする入口のところで、男が聖ジュリアーノに祈っている声を聞き、戸を開き、裸の Castagna を発見、風呂に入れてやり、司教の代わりに Castagna を楽しませる。翌朝、沢山のお金と粗末な服を与えて送り出す。間もなく召使を発見、山賊もつかまり縛り首にされ、馬、生地、金など全部戻る。 Castagna ますます聖ジュリアーノを信仰した。


第八十二話 messer Bernabo Visconti がロンバルディーアを治めていた時代(1385年以前)、その家来で騎士の messer Stanghelino da Palu には、フィエスコ家出身の妻 monna Elena と7才を頭に2男2女あり。ところが妻は家来の若者愛し、数ケ月ぶりに帰宅した messer Stanghelino は妻が若者と床の中にいるのを発見し、男をナイフで殺す。妻は4ヶ月来の仲だと告白。夫は4人の子らを呼ばせ、妻が子供だけは助けてほしいと頼むのも構わず、「子供を見るたびに、目の前に汝の侮辱を感じる」という理由を述べて、4人共首をはねる。その血の乾かぬ内に妻をも殺し、1つの穴に5人を埋め、若者の死体は犬に食わせる。宮廷に戻った彼に、主君のベルナボが子供まで殺したわけを問う。 messer Stanghelino が前述の理由を述べると、 messer Bernabo 誉められはしないがもっともだと評した。


第八十三話 1350年の大赦祭で行われていたころ、ローマの近郊の城砦に Suffilello という盗賊あり。20人の仲間と共に通行人をおそい、金品を奪った後、人々を高い崖から突き落とす。同年五月に、 Artoi 伯と若い妻 Bianca が12人の仲間とそこを通る。 Suffilello らこれを襲う。 Suffilello は伯妃 Bianca を馬から突き落とし腕をつかみ、仲間に残りの敵を捕えて馬と武器を奪えと命じ、女を例の崖に連れて行く。伯は防ぎきれぬと判断して1マイルほど逃げると、幸い巡礼保護の警備隊に出会い、事情を話して再び山へ征討に向う。 Suffilello は伯妃を山頂に連れていき、次々と衣服を脱がせ、身につけていた300フランと共に立派な衣裳を手に取る。伯妃のねがいも聞かず、最後に薄いシュミーズをも脱げと命じた時、伯妃は「汝が汝自身を救えば、私も汝を救おう」という神のことばを思い出し、「シュミーズを脱ぐ間、自分を見ないで下さい」と頼んで Suffilello に崖の方を向かせて、背中を突いて彼を500ブラッチオ以上ある崖下へ転落させる。一方警備隊長と伯爵は山賊を襲い、残り全員を捕え、 Suffilello をさがす。山のてっぺんで下着姿の伯妃を発見、その話で崖下をさがすと、 Suffilello の死体と共に300フランが見つかった。その死体も縛り首にする。なお崖下には犠牲者の死体が50以上あった。伯妃はローマで殺人を免罪された。


第八十四話  fra Moriale が傭兵隊長としてイタリアヘ来ていた時期(1354年)、パヴィアの若者 Santo は fra Moriale の軍隊に入るが、罪深く危険の多い仕事なので、400フィオリーノためた時に、軍隊をやめて、槍とナイフを持ち、独りでナポリからサレルノを経てレッジオに向う途中、森の中で2人の山賊に出会う。Santo は応戦して1人の右腕を傷つけたが負けて、400フィオリーノと衣類を奪われ、木に縛りつけられる。そこへ別の山賊が来たので、「今400フィオリーノを盗まれた。なわを解いてくれたら、もうけの半分をあげよう」と提案。2人は血のあとをたどり、泉のそばで休んでいるさっきの盗賊を背後から襲い、2人を殺す。400フィオリーノの他に300フィオリーノと衣類と10フィオリーノの宝石あり。Santo は服を着てから、400フィオリーノは自分の資本だといい、300フィオリーノを2等分、衣類を相棒に与えて、自分は宝石を取る。相棒は不服だったが、 Santo が「もうけを半分ずつ山分けしようといった」と突っぱねたので。勢いに呑まれて納得した。


第八十五話 スペインでアルフォンソ王(三世)が治めていたころ、バルセロナに Ciandro という金持の商人がいたが、2人の息子の上が17才、下が15才の時に死亡。2人は5万フィオリーノ以上の金を相続した。しかし兄 Passavanti と弟 Veglio は道楽にふけり、短期間で使い果たした。兄弟は故郷を出て、セヴィリヤで商売をし、短い間に2万フィオリーノ以上かせぎ、 Passavanti は Veglio をバルセロナにやって売ったものを買い戻させる。Veglio は兄からの送金で再びバルセロナで浪費にふける。ところがイスパーニヤ王アルフォンソとグラナーダ王 Celetto の間に戦争が起ったため、 Passavanti の商売が行き詰まる。アルフォンソ王は和解のため15才の Marsia 姫を、60才を越えた異教徒のグラナーダ王と結婚させようと計画して娘と相談。娘がことわったので、父は怒る。 Marcia姫は、彼女を愛するいとこ messer Amon をけしかけて、ローマヘ行き、教皇からいとこ同志の結婚の許しを得ようというと、 messer Amon は了解、丁度 Tolletta (トレドか?)の司教が死去したので、 messer Amon のおいの Marsioだと名乗って司教に選ばれ、2人はローマに向けて出発。バルセロナでは金を使い果した弟 Veglio が自殺をはかるが女中にとめられ、当局によって投獄される。兄の Passavanti できるだけの金を集めて弟を救出に出発、途中で Marcia 姫の一行に会う。王女はすぐセヴィリヤ第一の美男子だった Passavanti を見分け(前に会ったことあり)、これを調達係にやとい、ローマまで同行してくれれば、 Veglio の救出に一肌ぬごうと約束。ある晩、宿が満員で、 Marcia と Passavanti とは同じ部屋に寝る。 Marcia は Passavanti を誘って乳房を触らせ、女だと白状し夫になってくれと頼み、指輪を与えた。ローマで王女はいとこの messer Amon および Passavanti を伴い教皇の前に出て、実は自分は女だと告白し、教皇の忠告で女装に戻り、 Passavanti を夫に選ぶ。その代り messer Amon は教皇が貸与した2000騎の長となり、帰国してグラナーダ王を打ち破る。 messer Amon は終身総司令官となる。弟の Veglio は教皇の手紙で釈放され、スペインで兄たちと楽しく生涯を送った。


第八十六話 ボローニャが教会の支配下にあった時代(1278~14世紀中ごろ)フィレンツェ人 Giannosso は去勢羊をボローニャで売って1000ドゥカートを手に入れる。両手を切られた男と、片足を切られ片目を失った男の2人連れが、銀行の前でこのことを知り、その金を狙って後をつけ、宿で Giannosso がフィレンツェ出身でそこへ戻ることを知り、途中で彼を待ち伏せる。 Giannosso が歌を歌いながら馬で来ると、足を切られた男が穴の中にいて、手のない男がこれを助けている。 Giannosso 馬から降り、手を差し出し両手をにぎった時、後ろから押して穴に落とし、片目の男がナイフで Giannosso を刺殺。こうして1000ドゥカートを奪う。馬についていた書類から Giannosso の身元は分るが犯人分らず。2人は半年以上宿屋でごちそうを食べて暮らす。宿の主人がパン屋と酒を飲んだ時、パン屋が100家族以上のパンを焼いていることを自慢すると、宿屋は負けずに「うちにはすでに100ドゥカート以上の新しい金を払ってくれる乞食がいる」と自慢。それを耳にした人々の1人が、ポデスタに訴えて、ポデスタの家来が調べる。2入は「小銭をもらって金貸に替えている」というが、「両替屋は」と問うとはっきり答えられない。所持品を調べると800ドゥカートと小銭あり、罪が発覚し残金は Giannosso の遺族に送られ、2人は犯罪現場で絞首刑となる。


第八十七話 フランス王国の Francia と Piccardia の間に大きな森があり、 Artois 伯妃の所領。その森の中央に伯妃宮殿を作り、狩の途中の休憩所とする。森の中には山賊多く貧しい巡礼などに化けて旅人を襲った。伯妃がパリに行くため、調達係と2人の仲間が先行する。仲間は山賊に呼び止められて殺され、調達係は山賊を切るが。鉄の帽子をかぶっていて切れず。引き返す。伯妃大いに怒り、領内で武器を取れる者全員6000人を集めて森を囲み、出て来た者100人以上を殺す。他に50人は野獣に殺され、残りの40人余が宮殿にとじこもる。伯妃これに火をつけて焼き殺し、さらに捕えた250人も殺す。その中に領内の大部分の貴族と、あらゆる身分の者がいたが、伯妃はこの処置で賞讃され、旅は安全になった。


第八十八話  Genova に泥棒の兄弟あり、 Bovitoro と Bellucco といい、夜中に店や家を荒らす。商人 Agustino の店( fondaco )何度も荒らされ、役所に訴えても効果なし。そこで窓の下に鳥もちの入ったかめを置く。しのびこんだ兄がこれに足を入れ、弟が手伝っても抜けず、兄「自分がつかまったら、お前も子供たちも汚名をかぶる。だから私の首を切れ」という。弟やむなく首をはねて戻る。一家泣く。 Agustino 翌日首なし死体を発見、役所に報告。ポデスタが家来に泣いている者を探させ、家来は Bovitoro 兄弟の一族を発見。「何故泣いているか」「 Bellucco が泣いているから」という問答の間に、 Bellucco 自ら手を切り血を流して「怪我をしたから泣いている」と言い逃れようとしたが、役所へ連行されて、兄の行方を問われる。「よそへ行った」「何時から」「昨日の朝の3時ごろ(現代の9時)から」と逃れるが、ポデスタは前日の夕方 Bovitore を見ていたので馬脚を現わす。問いつめられて首のありかを言い、弟も絞首刑となる。


第八十九話 侯爵 Alberto da Esti (ママ)(1293没)がフェルラーラを治めていたころ、 Rustico という男が Bontura という妻と宿屋を開く。場所はフェルラーラ郊外の sul Ponte alla Torre della Fossa という所で、侯爵に宿の権利を賃借りする。2人には14才の悪童あり、両親から悪事を学ぶ。大抵の客は殺害されて所持品を奪われた。だがある兵士はよろいの胴を巻いてやって来たので、主人が売る気はないかと預かった後、証書がついてないから、没収されたと偽って返してやらず。つまり強奪できない時は詐取した。フリウリの判事 messer Nisterna が用事で、妻、子、家来らを連れて泊りに来、現金1000ドゥカート、証明書、宝石などを入れたかばんを Rustico に預ける。 Rustico 相手を殺せぬと判断して宿に放火。 messer Nisterna ら命からがら逃げ出す。 Rustico かばんは焼けたといい、 messer Nisterna らが宿を焼いたと怒る。 messer Nisterna は Rustico の悪辣さを見抜き、「フェルラーラに知人がいるから、あとで損害を賠償してやろう」となだめて、家族と家来全員に見張りを命じて出発、フェルラーラの侯に会い、出来事とかばんの中味を述べ、灰の中にかばんがあるかどうか確めたい、もしその焼け屑がなければ、物盗り目当ての放火だという。 Rustico の悪評を聞いていた侯はポデスタに命じて調べさせる。家族と家来、裸のままで待っていた。灰をしらべると、判事のバンド、バックル、締め具などの焼け屑はあるが、カバンらしきものなし。ポデスタ、 Rustico 夫婦と息子を拷問にかけてカバンのありかを白状させた。3人は縛り首になり、財産は没収され、カバンは messer Nisterna の手に戻る。


第九十話 ダンドロ家の Draconetto がドージェだったころのヴェネツィアに、 Fiordo という外国人がいて、にせ金を作る。ある7月のこと立派な身なりで、金の線条や縁かざりなどを買いに行く。店主の母親 madonna Marchezetta が応待して、500ドゥカート分の金を売る。Fiordo は madonna Marchezetta を銀行へ連れて行き、緑の袋から500ドゥカート取り出して確めさせた後店に戻り、にせ金入りの別の緑の袋とすり替える。息子 Tano 戻ってだまされたことに気付く。母に「人に言うな」と口止めして、当局に報告。当局も口止めを命じた。1年後、 Fiordo はヴェネツィアににせ金の噂がたたないので、まだ気付かれていないと思い、再び madonna Marchezetta の店へ行く。 madonna Marchezetta 愛想良く応待し、息子に紹介する。息子すぐ当局に連絡し、当局は Fiordo を捕える。200ドゥカート以上のにせ金あり。 Fiordo ににせ金をぬいつけた服を着せて焼かせる。当局は madonna Marchezetta と Tano の母子に500ドゥカートを返却し、さらに50ドゥカートの利子をつけてやる。第二十二話と同じ内容の話)


第九十一話 ミラノを messer Bemabo が治めていた時代、その妻 monna Reina が宝物を塔に隠す。仲買人の Taisso がこれを知り、弟の Orso と共に忍びこみ、火を使って錠を開け8万フィオリーノ盗む。 Taisso は弟にヴェネツィアヘ行かせ、若い両替商 Cione の許で、ヴェネツィアで通用する小切手( lettora )やヴェネツィアの貨幣に何度か交換。 Cione は兄弟の金まわりの良さに驚き、盗んだ金と判断、 Taisso を脅かして出所を聞くが、 Taisso は話さず、ただ3分の1の利益を約束。しかしやがて Cione の金が切れて両替できず、 Cione は兄に相談。 Cione の兄は弟に資金を与えて取引を続けさせながら、 messer Bemabo に報告。 messer Bemabo は Taisso を捕えさせ、両替商 Cione を呼び戻す。 Taisso は messer Bemabo の妻に引き渡され、金の隠し場所を吐き、6万フィオリーノが戻る。 Taisso は絞首刑となり、 Orso は故郷にもどらず逃走、永久追放となる。


第九十二話 バーリの富商 Landone は船を買い、ニンニクとハシバミの実を仕入れてキプロスヘ行くが、キプロスでは同じ物を産する上に、他にも同じ荷を積んだ船が来ていたため損をして、資本の4分の1しか金が得られず。 Landone やむなく海賊となり、軽い船で仲間と稼ぎまくり資本の倍の金をつかむ。バーリヘ戻る途中嵐にあい、 Scio 島に避難した時ジェノヴァ人の大型船があらわれ、彼らにつかまり、下

着1枚にされ、自分の持船は沈められるが、ある夜シロッコ(東南風)が荒れてジェノヴァ船は沈む。 Landone 1人箱にしがみついて漂流、 Giffo (コルフ)島に流れつき、子連れの洗濯女に救けられ生命をとりもどす。女が一緒に流れ着いた箱を渡す。開くと宝石あり、 Landone 船に乗りバーリに戻り大財産を作る。女に礼をして、その娘の持参金を払ってやる。


第九十三話 教皇が Johanni 四世だったころアスコリに偽善者 Bonzera あり、聖アントニオ教団の修道士となる。ピサの郊外 Cuoza に来て農場支配人 Michele とその妻 Ricca に会う。 Ricca は美人で織物上手だが人を信じやすい。 Bonzera は Ricca の織った布を見て奪おうと思い、聖アントニオの奇跡を説いて Ricca を感激させ、食事を乞い、すきを見て釘の頭を火中に入れて熱し、 Michele に川の水を、 Ricca にニラを頼み、留守の間に熱した釘の頭を織物の端に入れる。食後ショウガを夫婦にすすめ、 Ricca の布を聖アントニオが欲しがっているという。夫は手間もかかり、元手が20リラもかかっているといってことわる。修道士「奇跡が起るぞ」とおどかすと、布の端から煙が出て燃えている。夫「聖アントニオの火か」とおどろき、妻あやまり布をわたす。 Bonzera ピサで布を海に投じて聖人にそなえると称して、ピサに着くと布を売ってもうけ再度まい戻る。働きに出た夫、鈴の音で修道士が戻ったのに気付く。修道士は Ricca に、「私は聖アントニオをあなたの身体の中に入れてやるため戻って来た」といい、女をあお向けに寝せて、下ばきをおろして交わる。女が拒もうとすると、「火がつくぞ」と脅かす。その現場に夫が戻り、修道士を殴りつけ、火の奇跡のトリックを白状をさせ、布を売った金を取り戻した上に、妻を侮辱した罰金4フィオリーノを取り上げる。家から追い出し、ピサで見たら殺すとおどかす。 Bonzera は何ケ月も病院に入った。


第九十四話 前話と同じ frate Bonzera はさらにルッカに足をのばすが、聖アントニオ教団の悪い評判が拡がっているために、ルッカ市内に入らず、ルッカ司教の領地の Diecimo という村に入る。そこに Cilastro という若者あり、毎年10~20頭の塩づけ豚を売って生計を立てる。その年4頭を塩づけにし、妻 Bovitora に3月まではさわるなと命じた。例の修道士 Bonzera はこの豚を奪おうと考え、夫の Cilastro が Garfagnana に旅している間に訪問し、機織りしている Bovitora に話しかける。「子供がいるか」「いない」「ほしいか」「ほしい」「夫は若いか」「若いけどだめ」「他の男としたか」「何度もしたけどだめ」「わしなら大丈夫」「それにわしは教皇を生む術も知っている」「その薬を教えて下さい」「でもお前の夫が息子を皇帝にしたがっていたらどうだろう」「とに角私に教えてよ」「その代り、わしに豚をくれるといった人の名前を教えよう」「それは誰なの」「 CiIastro 」「それなら私の夫よ」こうした問答の末に Bonzera は自分は Morso だと名乗り、女にまじないの紙をわたし、その代り豚を手に入れ、すぐその豚を宿屋に売って16フィオリーノもうけた。一方 Bovitora は喜びのあまり、まじないの話を夫にもらす。字の読める夫おどろいてまじないの紙を開くと、「お前は良いけつをしている、それを使わせろ、そうすれば汝ははらむ」と書いてある。豚を騙し取られたと知った夫は、 Borgo まで修道士を追いかけ、これを殺して金を取り上げると、3倍分の金が入る。夫は妻に人を信用するなと教えた。


第九十五話 ルッカがピサに支配されてい時代(1369年以前)、ルッカに Scarsino delli Scarsi というピサ人あり。その妻 madonna Ciandina は浮気者の美人だが、夫も若者と同性愛にふけり、妻の浮気を大目に見ていた。家は contrada di S. Masseo (=Matteo )にあり、詐欺を働く。4軒となりに Franceschetto Manni という男がいて、 madonna Ciandina にほれ、彼女に言いよる。彼女も相手が気に入り、自分の寝室へ入る経路を教える。 Franceschetto は3人がかりでも勝てぬほどの剣の達入だが教えられ通り寝室にしのび込み、夫が夜遊びにふけっている間に夫人と関係。夫人はその後窓にナプキンを出して合図、2日にあけず関係を持つ。夫 Scarsino ある夜小便に出て、 Franceschetto が窓からしのび込むのを見る。 Scarsino は Franceschetto が妻の所を去るのを待って寝室に行き妻から合図を聞き出した後、彼女に姉妹の所へ行かせる。留守の間に窓にしのび込む足場を工作し、悪い仲間を集めて合図のナプキンを出す。 Franceschetto 本物の合図と信じてしのび込もうとして、足場がくずれ店に落ち、 Scarsino の仲間に殺される。 Scarsino ら死体を公共トイレに棄てる。 Franceschetto の父も文句いえず。皆、 Scarsino をおそれて泣き寝入りした。


第九十六話 1363年のペスト以後。ピサとフィレンツェの間で戦争が起こる。ピサがイギリスの傭兵を求める。フィレンツェがピサやルッカの亡命者を求めたのでピサもフィレンツェの亡命者を傭い、さらにフィレンツェの不平分子を雇う。その1人 Folaga Perussi は巨漢で、マカロニを鍋一杯食べても満足せず、50人相手でも負けぬと豪語。もう1人の不平家 Tromba de' Salviati と組もうと考え、 Tromba de' Salviati と話し合い、2人は条件をつり上げようとしてフィレンツェ随一の勇士だと自慢。また家柄をも自慢し、両家をフィレンツエ市民が大事にせぬから怒っているのだという。ピサの友人と、 Folaga Perussi が50騎、 Tromba de' Salviati が25騎をつれてピサを助けに行く約束をする。 Folaga Perussi ピサに来るが、やはり大言壮語する。ピサから出陣の日の朝 Folaga Perussi は鍋一杯のマカロニを食べ、夕方パン10個と小羊4分の1を平らげる。 Folaga Perussi は食べすぎと恐怖のため、戦場で吐きたくなり、1人軍をはなれ、パンツを脱いで糞をしている最中に自分の熊手が尻に引っかかる。彼は、敵に襲われたと信じ込み、50人の味方と共に降参するといい、「卑怯な敵が後から襲って来たぞ。助けてくれ」と叫ぶ。人々かけつけて、パンツを脱いだ姿を発見し、あざ笑う。


第九十七話 前話の続きで、ピサ人は Tromba de' Salviati を迎えに来るが、 Folaga Perussi の例を見て Tromba de' Salviati をもあやしみ、市当局は Tromba de' Salviati の行動を観察しておくよう使者に命じた。 Tromba de' Salviati は一切の財産を売り払い、馬を買い、あらゆる道具をたずさえて、25騎と共に堂々と出発した。Poggio a Caiano で飲食をすます。ピストイアの近くで、道でうんこをしている人を見た時、 Tromba de' Salviati くるりとプラートの方に振返る。使者がわけを聞くと、「たとえ相手が100騎でもびくともしないから」と返答。少しいくと、道に大量のうんこの山がある。 Tromba de' Salviati 天をあおいだ。わけを聞かれて、「自分はあんまり強力なので、空を飛べそうな気がするのだ」と答える。ピストイアの近くでうんこを見て南を見、「(アフリカの)バルバリア人の土地でも征服できそうに思ったから」と答える。次のうんこの山ではマリーナ川の方を見て、「アレキサンダー大王のように、陸も海も征服できそうに思ったから」と述べる。やがてまたうんこの山を通りすぎ、石の届く所まで来ると、 Tromba 何を思ったか後戻りする。使者もついて戻ると、 Tromba de' Salviati 馬から降りてひざまづき、顔と目と手をうんこに近づけ、「さあ満足しろ」といいざま、うんこを顔中にぬりたくる。使者から理由を問われ「少しのうんこ位が我慢できないで、どうして勇士たちに耐えられようか」と述べた。使者は市当局にこれを報告。ピサ市民、 Tromba de' Salviati は Folaga の同類だと悟り、 Folaga が戻るまでピサに残れ、彼が来たら2人に金を払って隊長にしてやろうとだます。 Tromba de' Salviati は自費でピサに滞在するが、 Folaga Perussi は戻らず、 Tromba de' Salviati は持金を使い果たして乞食となった。


第九十八話 アテネ公支配下のフィレンツェ(1342~1343)から Asso de' Pulci が追放されたが、彼は独身で好色なので、独り Ancona へ行き、中年の女中 Giorgiana を雇い、この女と関係、他にも Ancona の女性たちと関係。アテネ公がフィレンツェから追放されると Giorgiana をつれて帰国したが、親戚の人々に嫁を取るようにすすめられて結婚、 Giorgiana を解雇、 Giorgiana はヴェネツィアに向う。何年か後 Asso de' Pulci は500フィオリーノ持ってヴェネツィアに向い、真珠、宝石等の買付けを交渉、商談まとまらず。アンコーナ出身の15才の娼婦これを知り、その金を狙う。 Asso de' Pulci たまたま昔の女中 Giorgiana に会う。 Giorgiana は Asso de' Pulci の宿を聞き、ヴェネツィアの娼婦を紹介してやると約束。アンコーナ出身の娼婦、同郷の Giorgiana から Asso de' Pulci のことを聞き、彼が昔 madonna Nicolosa de' Calcagni という貴族の未亡人と関係があったことや Giorgiana がヴェネツィア女を紹介する予定だということを聞く。娼婦は自分の下婢を使いにやり、 Asso de' Pulci を自宅へ迎える。 Asso de' Pulci はヴェネツィアの女だと信じてアンコーナの娼婦の許へ行くと、娼婦は Assina と名乗り、母は madonna Nicolosa で、父は Asso de' Pulci その人だと言う。 Asso de' Pulci 驚くが、やがて信じこみ、娼婦に夕食をもてなされてくつろぎ、上着や金をおいたまま運河に落ちる。はい出して、 Assina を呼ぶと、そんな娘はおらず、そこはいかがわしい所だと人々に教えられ、だまされたことを悟り、持金を失って帰国した。


第九十九話 フィレンツェに篤信で名高い尼僧院があり、8人の若い尼僧と1人の院長がいた。菜園係、給料が安すぎるので、差配人と話し合って郷里の Lamporecchio に戻る。同地に若くて丈夫な農夫 Moscacchio あり、前の菜園係から事情を聞き、まさかりをかつぎ、唖のふりをして尼僧院に迷い込み食事を乞い、まき割をして差配人に気に入られ、何日か後に院長がこれに気付いて菜園係に雇う。尼僧たちは彼にいたずらをしかけ、分らぬと思ってひどいことを口にする。ある日昼寝のふりをしている彼に2人の尼僧が近づき「男ほど良いものはない」ということばを彼でためしてみようと提案し、小屋へ連れて行って相手をし、2人はこんな良いものはないと話し合う。ある日他の1人がそれに気づき、他の2人に教える。その後残りの3人も仲間に加わる。最後に院長が素裸で木の下で寝ている彼の姿を見て欲望を抱き、寝室に招いて楽しむ。 Moscacchio このままで身体がもたぬと思い、ある夜院長の前で「1羽の雄鶏が10羽の雌鶏の相手をすることはできるが、10人の男でも1人の女を満足させることは無理だと分った」と述べた。院長相手が唖でないことを知って驚くが、 Moscacchio から尼僧全員と関係していると聞いて皆で分け合おうと決心。差配人が死ぬと彼を差配入として、お互いに共有し、院長が死ぬまでその関係は続き、多くの子供が生まれた。年老いた Moscacchio はお金を貯えて故郷に戻り、どこにいたかと聞かれると、キリストは角を生やしてくれる者(間男)にこういう報いをしてくれると答えた。


第百話 スポレートに Toccora という女がいたが、農夫 Orsuccio と結婚。 Orsuccio は貪欲で仕事の他に楽しみのない男、他方女房の Toccora は男好きで次々と浮気、夫が貯めたものを浪費して楽しむ。男たちの1人に Rughia という若者がいた。ある日、 Orsuccio は帰宅すると、戸口がしまっていて、すき間から妻と Rughia とが抱き合っている現場をのぞき見する。 Orsuccio が戸口を叩くと、妻と Rughia が相次いで裏口から逃げ出す。夫ようやく入口を開いて入り、槍をつかんで2人のあとを追う。若者の Rughia は Toccora を追抜いて逃げ去る。 Toccora は夫をうまくまるめこんでやろうと考えて立止る。「売春婦め」と叱ると、妻、「本当に誰かが私と一緒にいて、私の後から駆けて行くのを見たたのか」と問い返す。 Orsuccio が「若い男を見た」というと、女房血相を変えて「私のお母ちゃんが死んだ時も、お父ちゃんは同じようなものを見たわ。もう私の寿命はあと2週間と決まった。遺言を作るから公証人を呼んで来て」と頼み、同時に亭主に向って遺言の予定を聞かせる。値打のある財産はあらかた両親の供養のためなどに寄進してしまい、夫には il Gambo di frate Gabbo (ガッボ修道士の細脛?)という名の農地と、 la Tigna della Piacciuola (ちょっぴり良い気持のしらくも)と呼ばれるぶどう畑を、つまりその名前だけでも貧弱だと分る2つの遺産しか残さないつもりだという。また恋人の Rughia には、母親ゆずりの Trallecosce (太股狭間)と呼ばれる地所の農園を譲るつもりだとも言った。貪欲な夫は、そんな遺言を作られてはたまらぬと思い、「そんな必要はない。わしは何も見なかった」と取消す。妻は「あんたが本当のことを言うのなら、遺言など残さないで、遺産は全部あんたにあげるよ。だけどお母さんの冥福を祈るために、〈太股狭間村〉の農園だけは Rughia に贈ることにするよ」と条件を出し、その後は安心して Rughia と楽しみ。仕事はもっぱら夫にまかせた。


附録『イル・ノヴェッリエーレ』の要約(第百一話~第百五十五話)へ


目次へ






©  百万遍 2019